Case21~30(誤りやすい事例シリーズ)

大手監査法人にて会計監査業務に従事した後、
円満相続税理士法人に入社。
円満な相続の実現をサポートするため、
金融機関等でセミナー講師も担当している。
目次
はじめに
こんにちは、東京円満相続税理士法人の荒川です。
今回は、誤りやすい事例シリーズとして、資産課税実務における誤りやすい事例(Case21~30)を解説します。
Case21 遺留分侵害額請求の訴訟が提起されている場合の特例の適用(令和元年7月1日以後に開始した相続)
(誤った取り扱い)
3月に死亡した父は、相続財産を全て長男に相続させる旨の公正証書遺言を作成していたが、他の相続人から、遺留分侵害額請求の訴訟が提起された。そのため、小規模宅地等の特例の適用対象宅地等の選択についての同意が得られないとして、同特例を適用せず期限内申告書を提出した。
(正しい取り扱い)
他の相続人から遺留分侵害額請求の訴訟が提起されていたとしても、長男は、遺言により不動産も含め相続財産の全てを取得しているのであり、小規模宅地等の特例の適用対象宅地等の選択について他の相続人の同意を要しないから、同特例を適用して申告することができる。なお、相続税の申告期限後に、長男が他の相続人に対し遺留分侵害額に相当する金銭を支払うこととなり、長男がこれに代えて小規模宅地等の特例の適用を受けた宅地(以下「特例宅地」という。)の所有権を他の相続人に移転させたとしても、当該所有権の移転は、遺留分侵害額に相当する金銭を支払うための譲渡(代物弁済)と考えられ、長男が遺贈により特例宅地を取得した事実に異動は生じないことから、長男が小規模宅地等の特例の適用を受けることができなくなるということはない。また、長男から特例宅地の所有権の移転を受けた他の相続人については、上記のとおり、相続又は遺贈により取得したものとはいえないため、特例の適用を受けることはできない。よって、長男は、原則として、遺留分侵害額に相当する価額により特例宅地を譲渡したとして、所得税が課税される。
Case22 更正の請求による特例の適用
(誤った取り扱い)
法定申告期限内に、不動産(土地、建物)については分割協議が成立したが、預金等については成立しなかったため、小規模宅地等の特例対象宅地等の選択について、他の相続人の同意が得られなかった。 その後、全部の財産の分割協議が成立し、特例対象宅地等の選択についての同意が得られたので、更正の請求をした。
(正しい取り扱い)
法定申告期限内に分割されている特例対象宅地等については、法令上、更正の請求により小規模宅地等の特例を認める旨の規定がないことから、同特例を適用することはできない。 ただし、法定申告期限内に分割されている特例対象宅地等について、特例対象山林が未分割であることにより、同特例の適用を受けていない場合には、原則として、法定申告期限から3年以内に分割されたときは、更正の請求により同特例を適用することができる。なお、特例対象宅地等が未分割であった場合には、原則として、法定申告期限から3年以内に分割されたときは、更正の請求により同特例を適用することができる。
Case23 選択特例対象宅地等の変更の可否
(誤った取り扱い)
甲は、A宅地を選択特例対象宅地等として相続税の申告を行った。その後、申告内容を見直したところ、申告漏れ財産があることが判明するとともに、B宅地を選択特例対象宅地等とした方が有利であることが分かったため、 修正申告の際に、A宅地に替えてB宅地を小規模宅地等の特例の対象とした。
(正しい取り扱い)
当初申告において、A宅地について適法に小規模宅地等の特例を適用した場合には、B宅地を特例の対象として選択替えをすることはできない。なお、同特例は、修正申告書にこの特例の適用を受けようとする旨を記載し、所定の書類の添付がある場合にも適用するとされているが、これは、未分割であった等、当初申告において同特例の適用を受けていなかった場合又は法令に定める要件を欠く誤った選択をしていたこととなった場合に関する規定であり、修正申告における特例対象宅地等の選択替えを認めるものではない。
Case24 「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」が提出されていない場合の特例の適用
(誤った取り扱い)
甲は、当初申告において、相続財産が未分割であるとして申告していたが、法定申告期限から5年経過後に、相続財産が分割されたことにより小規模宅地等の特例を適用する旨の更正の請求書を提出した。なお、甲は、「申告期限後3年以内の分割見込書」は提出しているが、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」は提出していない。
(正しい取り扱い)
甲は、相続税の法定申告期限から3年を経過する日の翌日から2月を経過する日までに左記申請書を提出せず、税務署長の承認を得ていないので、小規模宅地等の特例を適用することはできない。
Case25 「限度面積要件」の計算方法
(誤った取り扱い)
本年3月に父が死亡した。次の土地について小規模宅地の特例を適用する予定である。 ①甲宅地(「特定居住用宅地等」に該当):297 ㎡ ②乙宅地(「貸付事業用宅地等」に該当):180㎡ 小規模宅地の特例において、甲宅地 297 ㎡、乙宅地180㎡の全てに適用して、相続税の計算を行った。
(正しい取り扱い)
小規模宅地の特例の限度面積は、特定事業用宅地等及び特定同族会社事業用宅地等(「特定事業用等宅地等」という。)については 400 ㎡まで、「特定居住用宅地等」については 330㎡まで、「貸付事業用宅地等」について は200㎡までである。特例の対象として選択する宅地等の全てが「特定事業用宅地等」及び「特定居住用宅地等」である場合には、それぞれの適用対象面積まで適用できるが、「貸付事業用宅地等」を特例の対象として選択する場合の限度面積は、次のとおり調整計算が必要となる。
【計算式】 A×200/400+B×200/330+C≦200㎡ A:「特定事業用等宅地等」の適用面積 B:「特定居住用宅地等」の適用面積 C:「貸付事業用宅地等」の適用面積 したがって、[297 ㎡×200/330+180㎡=360m㎡]となり、200 ㎡を超えてしまうため、甲宅地と乙宅地の全ての面積について適用することはできない。
Case26 農業用倉庫の敷地についての特例の適用
(誤った取り扱い)
農業用倉庫(農機具及び農作物を保管するもの)の敷地について、特定事業用宅地等に該当しないとした。
(正しい取り扱い)
小規模宅地等の特例の対象となる宅地等の上にある建物又は構築物から除かれているものは、温室その他の建物で、その敷地が耕作の用に供されるもの及び暗きょその他の構築物で、その敷地が耕作の用又は耕作若しくは 養畜のための採草若しくは家畜の放牧の用に供されているものだけであるから、農機具等の保管を行うものである農業用倉庫の敷地は、同特例の対象となる。
Case27 未舗装の青空駐車場についての特例の適用
(誤った取り扱い)
甲は、屋根もなく、舗装などもされていないいわゆる青空駐車場を相続により取得した。この駐車場については、被相続人が長年駐車場収入を得ていたことから、貸付事業用宅地等に該当するとした。
(正しい取り扱い)
小規模宅地等の特例の対象となる宅地等は、建物又は一定の構築物の敷地の用に供されているものに限られており、建物又は構築物の敷地となっていない場合は、同特例の適用はない。
Case28 事業規模とされるアパートの敷地についての特例の適用
(誤った取り扱い)
甲は、相続により賃貸アパートを取得したが、当該アパートは貸与できる独立した室数が20室あり、所基通26-9に定める「事業的規模」に該当することから、当該アパートの敷地について「特定事業用宅地等」に当たるものとして400 ㎡ まで80%減額の対象とした。
(正しい取り扱い)
「特定事業用宅地等」における事業からは、不動産貸付業、駐車場業、自転車駐輪場業及び準事業が除かれており、建物の貸付けが「事業的規模」で行われていたとしても、「特定事業用宅地等」には該当せず、「貸付事業 用宅地等(200 ㎡ まで50%減額)」に該当する。
Case29 居住用以外の部分がある場合の特定居住用宅地等の範囲
(誤った取り扱い)
配偶者乙が、相続により取得した一棟の建物のうちに、居住用部分(被相続人甲及び乙の居住用)、貸付部分及び空室部分があったが、相続税の申告に当たっては、その敷地の全部が特定居住用宅地等に該当するとした。
(正しい取り扱い)
一棟の建物のうちに、被相続人等の居住用部分と他の用途に供されている部分がある場合には、その一棟の建物の敷地については用途ごとに床面積の割合であん分して小規模宅地等の特例を適用することとされているから、乙が取得した居住用部分については特定居住用宅地等に該当するものの、それ以外の部分については該当しない(貸付部分については、貸付事業用宅地等に該当する場合がある。)。
Case30 配偶者が居住を継続していない場合の特例の適用
(誤った取り扱い)
配偶者が取得した被相続人の居住の用に供されていた宅地等について、申告期限までに保有・継続がされなかったので、小規模宅地等の特例の適用を受けることができないとした。
(正しい取り扱い)
被相続人の居住の用に供されていた宅地等を配偶者が取得した場合の小規模宅地等の特例の適用要件には、保有・継続要件がないことから、同特例の適用を受けることができる。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は、誤りやすい事例シリーズとして、資産課税実務における誤りやすい事例(Case21~30)を解説しました。
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最後までお読みいただきありがとうございました!
※わかりやすい理解のため、内容を簡素化している箇所もあり、税務判断は税理士にご相談ください。なお、当ブログの内容に関するご質問にはお答えしておりませんので予めご了承下さい。