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海外居住者への相続・贈与 気になる申告・手続き方法を徹底解説!

こんにちは!税理士の枡塚です。

 

近年、海外に居住する方が増加しています。

外務省公表の海外在留邦人数調査統計によると、海外に居住する日本人は、平成30年10月1日時点で約139万人。前年より4万人弱増加し、統計を開始した昭和43年以降最多となっています。

海外に居住する理由は様々ですが、国境を越えた相続・贈与も非常に身近なものになってきています。

 

そこで、最もよくあるパターン亡くなった人・財産をあげる人は日本に、財産を相続する人・財産をもらう人は海外にお住まいになっているケースに焦点を当てて、お話をしていきたいと思います。

 

適用される法律は?

まず、亡くなった方や財産を相続する人の国籍、住所が海外にある場合や財産が海外にある場合には、どこの国の法律を使って、相続手続きを行うかについて、お話をしたいと思います!

日本では、「亡くなった方の本国法」を使って、相続手続きをしてくださいとルール付けをしています。また、本国法を判定する方法については、下記の図のように判定するようにルール付けがされています。

つまり、日本国籍しか持っていない方が亡くなった場合には、どこで亡くなった場合でも、国籍地である日本の法律に則って、相続手続きをしてくださいということです。

しかし、このどこの国の法律を使って相続手続きを行うかという判定について、国際的な統一ルールはありません。そのため、日本のルールと他の国のルールとの間に、対立や矛盾が生じることもあります。

世界の相続税・贈与税の考え方

次に、世界の相続税・贈与税がどのような考え方に基づいているのか、お話をしたいと思います!

 

世界の相続税制度は大きく遺産税方式と遺産取得税方式の2つに分かれています。

 

遺産税方式

遺産取得税方式

各国の取扱いは下記の通りです。

各国の取扱い

日本では、原則、遺産取得税方式を採用しているため、納税義務者は財産を相続する人(相続人)です。原則と記載したのは、日本の相続税は亡くなった方の遺産を基準に相続税を計算し、実際に財産を相続した人が相続した財産に応じて相続税を負担します。そのため、正確には、遺産取得税方式と遺産税方式の折衷といえるからです。

 

相続税の計算方法については、このブログで分かりやすく解説しています!↓

日本の相続税・贈与税の納税義務者と課税財産の範囲

日本では、財産を相続した人(相続人)が相続税を負担するという相続税制度を採用していることがわかりました。それでは、どのような方が、財産をもらった場合に税金の支払いをする必要があるのでしょうか?

日本の相続税は、簡単に言えば、亡くなった人、財産を相続する人(相続人)のどちらかが日本に住んでいる場合には、日本国内にある財産はもちろん、海外にある財産にも課税されます。いわゆる全世界課税といわれるものです。つまり、亡くなった人、財産を相続する人(相続人)のいずれかが日本に住んでいる場合には、日本国内にある財産についてはもちろん、アメリカにある不動産にだって、インドにある預金にだって、日本で相続税を支払う義務があるのです!

詳しい判定方法は以下の表の通りです!

贈与税についても、同様です。あげた人、もらった人のどちらかが日本に住んでいる場合には、日本国内にある財産はもちろん、海外にある財産にも贈与税がかかることになります。

 

平成29年度の税制改正の内容をしっかりと折り込み、納税義務者についてより詳しい内容をわかりやすく解説していますので、是非ご確認ください♪↓

海外居住の日本人が相続を受けた場合

それでは、実際の手続きや計算上の留意点などを確認していきます!

相続手続きの留意点

(1)国外転出時課税制度の適用判定

お亡くなりになった方が一定の株式等を1億円以上保有していて、その株式等を相続する人(相続人)が海外に居住している場合には、その株式等を売却したものとして、値上がり益に所得税が課税される制度です。

 

この制度の詳細については、また別の記事で解説をしたいと思います♪

 

上記のような要件に該当した場合には、お亡くなりになられた方の準確定申告(申告期限:お亡くなりになられた日から4ヶ月以内)において、値上がり益を申告する必要があります。値上がり益の把握は、株式等の購入時の価額がなかなかわからなかったり、一筋縄ではいかないところがありますので、早めに取り掛かることが必要です!

また、準確定申告の申告期限において、どなたがを相続するか決まっていない場合には、海外に住んでいる相続人が法定相続分にしたがって一定の株式等を取得したものと仮定して、一旦、準確定申告をする必要がありますので、注意が必要です!

 

 

 

(2)納税管理人の届出

海外に住んでいる相続人が、日本において相続税申告をする必要がある場合には、納税管理人の選任手続きをし、届出書を税務署へ提出する必要があります。

納税管理人?選任?届出?と言われると難しく感じてしまいますが、納税管理人とは、海外に住んでいる納税者に代わって、申告書を提出したり、代わりに納税手続きをしたり、税務署からの連絡を代わりに受けたりする、いわゆる海外に住んでいる納税者と税務署との仲介役のような人のことをいいます。税理士である必要はありません、日本に住んでいるご家族やご友人に依頼することもできます。依頼をする方が決まったら、この人を仲介役として決めましたと税務署へ届け出ておくだけです。

留意点としては、納税管理人の届出は、税の種類ごとに必要になることです。海外に居住するときに、所得税について届出をしているから今回は必要ないよね?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、新たに届出をする必要がありますので、ご注意ください!

 

(3)印鑑証明書の代わりにサイン証明、住民票の代わりに在留証明を入手

相続税の申告書を提出する際、遺言書がない場合には、遺産分割協議書のコピーに印鑑証明書を添付する必要があります。ただし、海外には印鑑文化がありませんので、海外に住んでいる方は印鑑証明書を添付することができません。そこで、印鑑証明書の代わりにサイン証明を添付します。

サイン証明は、居住している在外公館にて発行を受けることが可能です。

なお、サイン証明には、2種類の方法がありますが、不動産の相続登記申請を行う場合、原則として①のサイン証明を使用しますので、発行方法にご注意ください!

①遺産分割協議書を持参し、サイン証明を綴り合せて割印し、一体書類としたものに奥書認証(領事の面前で書面及び拇印を押印する方法)するもの

②申請者の署名を単独で証明するもの(サイン証明のみを単独で発行)

 

また、下記の相続税計算の留意点でお話する居住していた土地に係る小規模宅地等の特例の適用を受けるための添付資料として住民票に代わる在留証明の入手が必要です。在留証明もサイン証明と同様、居住している在外公館にて発行を受けることができます。

 

(4)納付方法

日本の相続税は申告期限までに、現金で一括納付することが原則です。

しかし、現金で一括納付をすることが難しい場合には、分割払いすることができます。この方法を延納といいます。

さらに、分割払いをしても、現金で納付することが難しい場合には、国内にある相続した財産そのもので納付することができます。この方法を物納といいます。

現金で一括納付できることが一番望ましいですが、難しい場合には、海外に住んでいても延納や物納の申請をすることが可能です。しかし、この延納や物納の申請…要件がたくさんあり、たーくさんの書類を提出します。日本に住んでいても難航する場合が多いので、海外に住んでいての手続きは慎重にスピード感をもって行う必要があります!

 

相続税計算の留意点 気になる特例の適用は?!

(1)障害者控除

障害者控除とは、85歳未満の障害者が相続人となる場合に一定の金額を相続税から控除できる制度です。ただし、財産を取得した時点で、日本に居住している方だけが対象となりますので、海外にお住まいのお子様が障害者の場合であっても、障害者控除の適用を受けることができません。

 

(2)小規模宅地等の特例

小規模宅地の特例とは?

簡単に小規模宅地等の特例について、ご説明します。日本の相続税には、お亡くなりになった方が貸付事業をしていた土地や居住していた土地について、一定の要件を満たす親族が相続をした場合に、限度面積までその土地の相続税評価額を50%引きもしくは80%引きできる特例があります。

 

海外に住んでいる相続人が被相続人が貸付事業をしていた土地を相続した場合、特例の適用はあるの?

結論からいうと、適用できます!ポイントは、海外に住んでいる相続人が事業を継続できるかどうかです。この特例の適用を受けるためには、お亡くなりになられた日から10か月間、その土地を所有し、貸付事業を継続している必要があります。

 

海外に住んでいる相続人が被相続人が居住していた土地を相続した場合、特例の適用はあるの?

①海外に居住している配偶者が相続する場合

配偶者は相続するだけで無条件にこの特例の適用があります!日本国内に住んでいても、海外に住んでいても関係ありません。

 

②海外に居住している別居親族が相続する場合

このケースが一番多いケースでしょう。一人暮らしの母が亡くなり、海外勤務のために海外に居住している長男が相続した場合を想定してみてください。この場合、下記の要件をすべて満たしている場合には、適用することができます!

・お亡くなりになった方には、配偶者や同居していた法定相続人がいないこと

・相続する方が、日本国籍を有していること

・お亡くなりになる前3年以内に、自己または自己の配偶者、3親等内の親族、特別の関係がある法人の持ち家に住んだことがないこと

・お亡くなりになった時点で居住している家屋を過去に所有したことがないこと

海外居住の日本人が贈与を受けた場合

お子様やお孫様は海外に住んでいるけれど、しっかりと相続税対策をしたい!という方もいらっしゃいますよね?気になる贈与税についても、しっかり解説をしていきます!

贈与手続きの留意点

(1)納税管理人の届出

相続手続きでもお話をしたように、贈与についても、同様!日本に住んでいるご家族やご友人に依頼をして、納税管理人を定める必要があります。届出をする税務署は、財産をあげた方の住所地とするケースが多いようです。

 

贈与税計算の留意点 気になる特例の適用は?!

(1)有価証券の贈与をする場合は要注意

相続税計算の留意点(1)で国外転出時課税制度について、お話をしました。

そうです、一定の株式等を海外に住んでいる方へあげる場合にも関係があります。一定の株式等を1億円以上所有している方が、海外に住む方にその株式等を贈与した場合には、贈与税がかかるだけでなく、あげた方がその株式等を売却したものとみなされ、売却益に所得税がかかります!

(2)相続時精算課税制度

日本の贈与税は、暦年課税制度と相続時精算課税制度という2つの計算方式のいずれかを選択することになっています。

「え、そうなの?贈与って110万円までは贈与税がかからないとは聞いたことがあるけど」という方。それを暦年課税制度といいます。

それとは別に、実はもう一つ制度があったのです。それが、相続時精算課税制度です。ご存知でない方もいると思いますが、利用している方が少ないので、ご存知なくて当然かもしれません。

相続時精算課税制度って何?どういった場合に利用するのがいいの?という方は、こちらのブログをご覧ください。将来、相続税がかからない方や、かかっても少額だろうという方に有効な贈与の手段です。海外に居住している方も利用可能な制度です。

(3)住宅取得等資金贈与の特例

まずは、住宅取得等資金贈与の特例について、簡単に解説をします!お子様やお孫様が住宅を購入するときに、父母又は祖父母から資金の提供を受けた場合、一定の金額までは贈与税がかからない特例です。この特例は、お子様やお孫様が購入する住宅が日本国内にある場合にだけ適用することができます!そのため、海外で住宅を購入するために資金を提供しても、残念ながら、この特例の適用はできません。高齢者層から若年層への資産移転を促し、消費を促進して、経済効果を得るために創設された特例なので、海外ではなく、日本の消費を促進してくださいね…ということなのかもしれません。

 

(4)教育資金の一括贈与の特例

父母や祖父母から、30歳未満のお子様やお孫様の教育資金に充てるための資金を一括で贈与した場合、1,500万円まで贈与税がかからないという特例です。可愛いお子様やお孫様の教育をサポートしたい!というニーズは高く、また、相続対策にもなるので、利用件数が年々増加している特例です。

この特例は、海外に住むお子様やお孫様が贈与を受けた場合でも、適用を受けることができます。30歳未満であれば、外国籍であっても適用可能です。また、海外の教育機関にお支払いになる資金でもかまいません。ただし、日本国内の金融機関にお子様、お孫様名義の教育資金口座を開設することが要件です!

 

(5)結婚・子育て資金の一括贈与の特例

父母や祖父母から、20歳以上50歳未満のお子様やお孫様の結婚や子育てをサポートする資金として、一括で贈与をした場合には、1,000万円まで贈与税がかからないという特例です。

この特例は、教育資金の一括贈与と同様、海外に住むお子様やお孫様が贈与を受けた場合でも、適用を受けることができる特例です。20歳以上50歳未満であれば、外国籍であっても適用可能です。海外で挙式や披露宴を行う際の費用も対象ですが、海外の病院で受けた妊娠に関する治療や出産費用は日本の医療法に基づくものでないため、対象外です。また、子育て資金のうち、海外の幼稚園などに払う費用は、日本の学校教育法や児童福祉法に基づく施設ではないので、対象外です。こちらは、海外に住むお子様やお孫様にとっては制限が多く、使い勝手が悪い制度かもしれません。また、教育資金の一括贈与と同様、日本国内の金融機関にお子様、お孫様名義の結婚・子育て資金口座を開設する必要があります!

まとめ

「海外に住むお子様やお孫様に相続・贈与をさせたい」という思いを実現するために、手続きの方法や計算上の留意点について触れてきましたが、いかがでしたか?

今回は、日本の相続税・贈与税の取扱いについて記載をしました。相続をした方・財産をもらった方が居住する国によっては、その国で税金がかかってしまうこともあります。私たち、円満相続税理士法人では、現地の専門家と連携をはかりながら、日本の相続税・贈与税の申告作業を進めていきます!

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