相続時精算課税制度って、一体どんな制度なんですか?

こんにちは、円満相続税理士法人の橘です。

相続時精算課税制度は、一言でいうと、『贈与する時は2500万まで非課税にしますが、相続の時に、贈与した財産も足し戻して相続税を課税します』という制度です。

すみません、意味がわかりません…

大丈夫!私も最初はまったく意味がわかりませんでした。

この記事では、日本一売れた相続本の作者である私が、相続時精算課税制度を日本一わかりやすく解説していきます。

最後までお読みいただければ、この制度を理解し、お得に活用できる節税術もマスターできますよ♪

相続時精算課税制度とは?

この制度は、「生前贈与をする時は2500万円まで贈与税を非課税にしますが、贈与した人が亡くなった時には、その人の遺産だけでなく、過去に生前贈与した財産も一緒に、相続税を課税しますよ」という制度です。

事例を使って解説

例えば、1億円の財産を持っている甲さんがいたとします。

この甲さんは、相続時精算課税制度を使って、娘に2500万を贈与しました。

この時、2500万まで非課税となるため、贈与税は1円もかかりません。

贈与をした後、甲さんの手元には、いくらの財産が残りましたでしょうか?

1億円から2500万を引いた7500万ですよね。

相続時精算課税

その後、時は流れ、甲さんはお亡くなりになりました。

この時に、残っていた財産は7500万です。

この7500万に相続税がかかるのかしら

と思いきや…

ここで出てくるのが、相続時精算課税制度です!

相続時精算課税制度を使って生前贈与した財産は、2500万まで贈与税が非課税になります。

しかし、その贈与した人が亡くなってしまった時には、手元の財産だけではなく、この相続時精算課税制度を使って贈与した財産も含めて相続税を計算しなければいけません

つまり、甲さんの場合は、手元の財産7500万と、相続時精算課税制度で贈与した財産2500万を足した、1億円に対して相続税が課税されることになります。

相続時精算課税

「2500万まで非課税」と書かれているのでお得そうに見えますが、結局、最終的には相続税が課税されます。

ここで、この制度の名前をもう一度よく読んでみましょう。

相続時精算課税制度

この制度の由来は【贈与の時は贈与税を非課税にしますが、相続には、非課税にした分を精算して課税する制度】という意味からきています。

つまり、最終的には相続税が課税されますので、節税になるわけではなく、税金の先送りができる制度なのです。

注意点(デメリット)

自動継続・取消不可

相続時精算課税制度の一番恐いポイントは、一度この制度を選択すると、永久にこの制度が継続される点にあります。

ここも難しいポイントですので、事例を使って解説します。

例えば、先ほどの1億円もっている甲さん。

平成25年に相続時精算課税制度を使って1000万円を贈与したとします。

2500万の非課税枠に収まりますので、当然この時、贈与税は課税されません。

その後、甲さんは平成26年に、再び1000万円を贈与しました。

この場合、どのような取り扱いがあると思いますでしょうか?

答えは、この1000万円も贈与税が非課税とされるのです。

考え方としては、平成25年に贈与をした1000万と、平成26年に贈与した1000万を合計した2000万という金額は、相続時精算課税制度の非課税枠2500万に収まりますので、贈与税は非課税とされるわけです。

相続時精算課税制度における2500万の非課税枠の考え方は、1度きりに使えるのではなく、一生の累計額で使える金額なのです。

確かに贈与税は非課税となりますが、甲さんが亡くなった時は、平成25年に贈与した1000万も、平成26年に贈与した1000万にも相続税が課税されることになります。

相続時精算課税制度は自動継続取消不可

110万の非課税枠が使えなくなる

去年は相続時精算課税制度を使って贈与したけど、今年は普通に110万までの非課税枠を使って贈与しようかな~

残念ですが、一度、相続時精算課税制度を使うと、二度と110万の非課税枠は使えなくなります。この制度は自動継続・取消不可なのです

実務上、よく起きる失敗として、相続時精算課税制度を使って贈与をした翌年以降に、通常の年間110万円の非課税枠を使って贈与をしてしまうケース。

例えば平成25年に相続時精算課税制度を使って1000万贈与をした後に、平成26年に110万円、平成27年に110万、平成28年に110万の贈与をしたとします。

この場合、この人が亡くなった時には、手元の財産に1330万の財産を加えて相続税を計算しなければいけないこととなります。

平成26年以降に贈与した110万も相続時精算課税制度の対象になってしまうのです。

このように、一度、相続時精算課税制度を使った場合には、二度と110万の非課税枠を使えなくなるのです。

通常の生前贈与は110万までしか非課税になりませんが、その人の財産を減らすことができるので、将来の相続税を減らす効果があります。

一方で相続時精算課税制度は、贈与税は2500万まで非課税ですが、結局、全て手元の財産に足し戻して相続税を計算するので、将来の相続税を減らす効果は一切ないのです。

このことから、税金の負担を少なくしたいのであれば、相続時精算課税制度を使ってしまうと、二度と110万の非課税枠が使えなくなるので、使わない方が賢明といえます。

相続時精算課税の注意点

相続時精算課税制度を使わなければ、110万ずつコツコツ節税ができたのね。使わなければよかったわ

2500万を超えると20%の贈与税

例えば、先ほどの甲さんが、平成25年に1500万、平成26年にも1500万贈与したとします。

非課税となる2500万を超えると、どうなるのでしょうか?

この場合には、2500万を超えた500万円に対して一律20%の贈与税が課税されます。つまり100万円の贈与税を払わなければいけないのです。

この贈与税100万円については、相続が起きた時に、相続税から控除されます。

このように、一度、相続時精算課税制度を使った場合には、その後、贈与を受ける都度、必ず贈与税の申告書を税務署へ提出しなければいけないのです。結構大変ですよね。

相続時精算課税制度2500万を超えた場合

相続時精算課税制度が有利になる場合

もともと相続税が0円である場合

例えば、3500万円の財産を持っている乙さんがいました。

この乙さんのお子さんが自宅を購入することになったので、頭金として1000万を贈与してあげたいと考えました。

しかし、1000万を通常の形で贈与した場合には、177万も贈与税がかかってしまいます…

そんなときこそ、相続時精算課税です!

この乙さんが相続時精算課税制度を使えば、1000万円を非課税で贈与してあげることができます。

贈与をした後の乙さんの財産額は3500万から1000万を引いた2500万です。

相続時精算課税制度が有利になる場合

将来、この乙さんが亡くなってしまった時には、手元の財産2500万に、贈与をした1000万を加算した3500万で相続税を計算することとなりますが、3500万は相続税の基礎控除の金額を下回るため、相続税は一切発生しないのです。

≫基礎控除とは何ぞや?

相続時精算課税制度が有利になる場合

このように、将来的に相続税のかかる心配はないけど、110万以上の贈与をしなければいけない事情のある人にとっては、相続時精算課税制度が有利に働きます。

また、将来的に少しだけ相続税がかかりそうな人も、贈与金額にもよりますが、相続時精算課税制度が有利になる場合もあります。

その他にも、あえて相続時精算課税制度を使った方が良いシチュエーションをまとめましたので、ご興味ある方は、是非、ご覧くださいませ↓

まとめ

相続時精算課税制度は、贈与をする時には非課税ですが、相続が起きたに、非課税にした分を精算して課税する制度です。

この制度は節税をしたい人のための制度ではなく、将来的に相続税の心配のない人や、少しだけ相続税の負担が出る人が、110万を超える生前贈与しなければいけない事情があるときのための制度です。

将来的に、財産額が基礎控除を下回る見込みの方は、相続時精算課税制度は効果を発揮します。

しかし、そうではない人は、この制度を使うと節税にはなりませんので、

節税にならなくてもいいから早く贈与したい!

という人以外は使わない方がいいです。

この仕事をしていると、『相続対策と薬は、よく似ている』と感じます。

いくら良い薬であっても、骨折している人に風邪薬を飲ませても骨は治りません。

逆に副作用で身体を悪くするかもしれません。

それと同じように、相続時精算課税も、将来的に相続税のかからない人が使えば効果抜群ですが、将来的に相続税がかかる人に使った場合には、むしろ逆効果になることがあります。

また、贈与税を支払うことを極度に嫌がる方も多いですが、実は、贈与税は積極的に払った方が最終的には得をすることもあります。

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最後までお読みいただき、ありがとうございました(^^)/

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