Case01~10(誤りやすい事例シリーズ)

大手監査法人にて会計監査業務に従事した後、
円満相続税理士法人に入社。
円満な相続の実現をサポートするため、
金融機関等でセミナー講師も担当している。
目次
はじめに
こんにちは、東京円満相続税理士法人の荒川です。
今回は、誤りやすい事例シリーズとして、資産課税実務における誤りやすい事例(Case01~10)を解説します。
Case01 遺言無効訴訟が提起されている場合
(誤った取り扱い)
被相続人は長男に全てを相続させる旨の公正証書遺言をしていたが、長男は法定申告期限までに他の相続人から当該遺言について無効確認の訴訟が提起されたことから、まだ分割が確定していないとして3年以内の分割見込書を添付して相法55 条の規定により法定相続分で課税価格を計算して申告した。
(正しい取り扱い)
未分割であるとして申告することはできない。長男は形式的には有効な遺言により相続財産を取得していることから、相法55 条に規定する「分割されていないとき」に該当しない。
なお、長男は、当該遺言について無効確認の判決が確定したことを知った日の翌日から4月以内に限り、更正の請求をすることができる。また、他の相続人は、当該判決が確定したことにより、相続財産が相続人全員の共有となるため、新たに納付すべき相続税額があることとなった場合や既に申告等により確定した相続税額に不足が生じた場合には、期限後申告書又は修正申告書を提出することができる。その後、分割が確定すれば、更正の請求も可能となる。
Case02 遺留分侵害額の支払の請求がされている場合
(誤った取り扱い)
本年4月に死亡した被相続人は、長男に全てを相続させる旨の公正証書遺言をしていたが、長男は法定申告期限までに配偶者から遺留分侵害額の支払の請求を受けていたことから、配偶者の遺留分に相当する金額を控除して申告した。
(正しい取り扱い)
法定申告期限までに遺留分侵害額の請求に基づき支払うべき金銭の額が確定していない場合は、遺言に基づいて期限内申告書を提出しなければならない。
なお、長男は、遺留分侵害額の請求に基づき支払うべき金銭の額が確定したことを知った日の翌日から4月以内に限り、更正の請求をすることができる。また、配偶者は、当該遺留分侵害額の請求に基づき支払うべき金銭の額が確定したことにより、新たに申告する必要が生じた場合や既に申告等により確定した相続税額に不足が生じた場合には、期限後申告書又は修正申告書を提出することができる。
Case03 特別縁故者が相続財産の分与を受けた場合の申告期限等
(誤った取り扱い)
被相続人甲は平成26年に死亡したが、相続人がいなかったことから、特別縁故者である乙が、本年5月に相続財産の一部の分与を受けた。相続税の申告に当たっては、本年の相続税法を適用し、基礎控除を3,000万円として、財産の分与があった日から10月以内に申告した。
(正しい取り扱い)
特別縁故者が相続財産の分与を受けた場合の相続税法の適用は、被相続人の死亡時の相続税法が適用されることから、平成26年当時の基礎控除5,000万円(5,000万円+1,000万円×0人)となる。なお、申告期限は財産の分与があったことを知った日の翌日から10月以内となる。
Case04 特別縁故者が相続財産の分与を受けた場合の課税価格
(誤った取り扱い)
被相続人甲は令和元年に死亡したが、相続人がいなかったことから、特別縁故者である乙が、本年6月に相続財産の一部であるA土地の分与を受けた。A土地の令和元年の相続税評価額は 6,000 万円、本年の相続税評価額は7,000 万円であるが、6,000 万円で申告した。
(正しい取り扱い)
特別縁故者が相続財産の分与を受けた場合には、その与えられた時における財産の時価により相続税が課税されることとなるから、7,000 万円で申告しなければならない。
Case05 相続開始の同年中に被相続人から贈与を受けた相続人が相続又は遺贈により財産を取得しない場合
(誤った取り扱い)
甲は、本年6月に死亡した父から相続財産を取得しなかったが、同年5月に父から財産の贈与を受けていたことから、当該贈与により取得した財産の価額を相続税の課税価格とみなして相続税の申告を行った。
(正しい取り扱い)
相続又は遺贈により財産を取得した者が、相続開始前7年以内に当該相続に係る被相続人から贈与を受けていた場合、その贈与により取得した財産の価額を加算した価額(その財産のうち相続開始前3年以内に贈与により取得した財産以外の財産については、その財産の価額の合計額から 100 万円を控除した残額)が相続税の課税価格とみなされ、その者が相続開始の年に贈与を受けていた場合、贈与税の申告は不要となる。
しかしながら、相続又は遺贈により財産を取得していない者には、これらの規定は適用されない。したがって、甲は、相続税の申告は不要であり、贈与については本年分の贈与税の申告の対象となる。ただし、甲が相続時精算課税適用者であった場合又は当該贈与について相続時精算課税を適用する場合には、贈与税の申告は不要であり、相続税の課税対象となる。
Case06 未支給の国民年金を相続人が受給した場合
(誤った取り扱い)
甲は、本年5月10日に死亡したが、同年6月15日に、4月分と5月分の国民年金の額に相当する金額が甲の預金口座に振り込まれた。
この金額については、甲が支給を受けるべきものであったことから、未収金として相続財産に計上した。
(正しい取り扱い)
未支給年金請求権は、死亡した受給権者甲に係る遺族が、未支給の年金を自己の固有の権利として取得するものであり、相法3条に規定するみなし相続財産にも該当しないため、甲の相続税の課税対象とはならない。
なお、遺族が支給を受けた当該未支給の年金はその遺族の一時所得に該当する。
Case07 国外財産のみを取得した非居住者がいる場合の課税財産
(誤った取り扱い)
米国に居住していた甲(日本国籍なし)が本年4月に死亡し、日本に居住する相続人乙(一時居住者でない)は、甲の米国内の財産を相続により取得した。乙は、米国に居住する相続人丙(日本国籍なし)も甲の米国内の財産を相続により取得していたことから、相続税の申告に当たって丙が取得した財産を含めて相続税の総額を計算した。なお、相続人はこの2人のみであった。
(正しい取り扱い)
乙は相続税の納税義務者となるが、丙は日本国内の財産を相続しない限り納税義務者に該当しないことから、相続税の課税財産は、乙が相続により取得した財産のみとなり、当該財産の価額のみをもって相続税の総額の計算をすることとなる。なお、基礎控除は、相続人が2名であるため4,200万円となる。
Case08 不動産の共有持分を共有者の死亡により他の共有者が取得した場合
(誤った取り扱い)
甲は、知人である乙と共有する不動産を有していたが、乙が死亡し、乙には相続人がいなかったため、当該不動産の乙の共有持分を取得した。甲は、相続人として共有持分を取得したものではないことから、相続税ではなく、一時所得の課税対象になるとして所得税の申告をした。
(正しい取り扱い)
共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がいないときは、その持分は、他の共有者に帰属することとなるが、この場合、その者に係る持分は、他の共有者がその持分に応じ贈与又は遺贈により取得したものと取り扱われる。したがって、甲が取得した乙の持分は、遺贈により取得したものとして、相続税の課税対象となる。
Case09 相続開始後に支払を受けた被相続人の入院給付金
(誤った取り扱い)
被相続人甲は、被保険者を甲、死亡保険金及び入院給付金の受取人を配偶者乙とする生命保険契約を締結し、保険料を支払っていた。
そして、乙は、甲の死亡後に、死亡保険金だけでなく、甲に係る入院給付金も受け取ったため、この入院給付金も相続財産とした。
(正しい取り扱い)
被相続人を受取人とする入院給付金は、被相続人の死亡後に支払われたものであっても、相法3条1項1号の保険金には含まれず、被相続人の本来の相続財産となるが、事例の場合は、乙が契約上の受取人として受け取るものであることから、本来の相続財産にも該当せず、相続財産とはならない。なお、当該入院給付金については、贈与税や所得税も課されない。
Case10 生命保険に係るリビング·ニーズ特約に基づく生前給付金
(誤った取り扱い)
被相続人は、リビング·ニーズ特約に基づく生前給付金(受取人:被相続人)の支払の直後に亡くなったが、当該生前給付金は、指定代理人である配偶者が受け取っており、非課税であることから相続財産に計上しなかった。
(正しい取り扱い)
生前給付金は、配偶者が指定代理人として受け取ったとしても、被相続人が受け取るべきものであるから、相続開始時において、当該生前給付金が現金、預貯金その他の財産として存在している場合には、それを相続財産として計上しなければならない。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は、誤りやすい事例シリーズとして、資産課税実務における誤りやすい事例(Case01~10)を解説しました。
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最後までお読みいただきありがとうございました!
※わかりやすい理解のため、内容を簡素化している箇所もあり、税務判断は税理士にご相談ください。なお、当ブログの内容に関するご質問にはお答えしておりませんので予めご了承下さい。