事業承継の失敗事例

株価を引き下げられるだけ引き下げてから、承継しよう!

こんにちは、円満相続税理士法人の中岡です!

事業承継の失敗事例シリーズの第10弾です。

今回は、株価引き下げ対策について、取り上げます。

株価の引き下げは、事業承継を考える上で、重要な要素の1つです。その方法について、ざっくり解説していきます。

ケース10

株主構成と株価

父は、創業した会社のオーナー社長で、会社の株式を1,000株(所有割合100%)を所有しています。

相続税評価額は、原則的評価で10億円(1株100万円)となり、なんとか対策をして、子供に承継したいと考えます。

相続税対策

株価を引き下げられるだけ引き下げてから、承継しよう!

そして、父は、様々な株価引き下げ策を実行に移します。

顧問税理士に株価を試算してもらうと、父の思惑通り、大幅に株価を引き下げることができました。

相続発生

そうこうしているうちに、父に相続が発生してしまいます。

子供は、引き下げられた株価で、承継することができました。

ところが、しばらくして、

社長!資金繰りが苦しくなってきました!

父が実行した株価引き下げ策が会社の本業に悪影響を及ぼし、資金繰りが悪化してしまったのでした。

株価引き下げの方法7選

非上場株式の株価は、その会社の利益や純資産額などを基に算出します。

≫非上場株式の株価の計算方法について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。

従って、あえて利益を引き下げたり純資産額を引き下げれば、株価を引き下げることができるのです。

株価引き下げの主な方法を7つ紹介します。

役員退職金の支給

最もオーソドックスな手法です。

先代経営者の退任に合わせて、役員退職金を支給して、利益を大きく圧縮します。

純資産額も引き下げられます。

含み損のある資産の売却

売却損を計上して、利益を圧縮するという方法です。

事業上、不要な資産であれば、売却してしまっても問題ないでしょう。

オペレーティング・リース

ざっくり言うと、航空機や船舶などに投資して、事業会社にリース(賃貸)するのですが、減価償却費によりリース(賃貸)期間の前半は損失が発生し、後半は利益が発生するというものです。

ただし、投資ですので、倒産リスクや為替リスクなどのリスクがありますので、その点は注意しましょう。

賃貸不動産の購入

純資産価額方式の評価引き下げにつながります。

理屈は個人の相続税対策と同じで、帳簿価額ではなく、相続税評価額で評価することができるためです。

ただし、取得後3年間は、相続税評価額ではなく、通常の取引価額(時価)で評価しなければなりませんので、注意が必要です。

また、賃貸不動産の購入も投資ですので、空室リスクなど様々なリスクがあります。

生命保険の加入

生命保険に関する法人税の改正があり、以前ほどの効果は出ないものの、一部を費用にすることで、利益を引き下げることができますし、解約返戻金が低ければ、純資産価額方式の評価引き下げにもつながります。

ただし、解約返戻金が低い場合は、本当に損をしてしまいますし、不要な保障を買っている可能性もあります。

高収益部門を分社型分割

会社分割の手法を使って、高収益部門を子会社化すると、別会社になるので、利益を引き下げることができます。

また、ホールディングス化と同様の効果が得られ、将来の株価上昇を抑制することができます。

≫ホールディングス化について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。

会社規模の変更

一般的に、類似業種比準価額方式の方が、純資産価額方式より、株価が低くなります。

従って、類似業種比準価額方式を多く使える会社の方が有利になりますので、会社規模を大きくする(「大会社」に該当するようにする)という方法があります。

対策

株価の引き下げは、事業承継を考える上で、重要な要素の1つです。

しかし、あくまでも1つの要素に過ぎません。

株主構成をどうするのか、事業をどのように繋いで発展させていくかなど、ほかにも重要なことがあります。

しっかりと考えていきましょう!

最後に

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