障害者の相続手続き 成年後見制度の利用・障害者控除 留意点を徹底解説

2021.06.26

こんにちは、税理士の枡塚です。

相続人の中に、障害をお持ちの方が存在する場合の相続手続きについては、通常の手続きにプラスして、代理人の選任をしなければいけない場合もあります。
また、相続税申告においては、障害をお持ちの方の生活の保護を目的として、優遇措置も設けられています。

そこで、この記事では、相続人の中に障害をお持ちの方がいる場合における相続手続きの留意点について、一挙に解説をしたいと思います!

もう一つの特殊ケースである、相続人の中に、未成年の方がいる場合の手続きについては、こちらで解説をしています!

未成年の相続手続き 特別代理人の選任・未成年者控除 留意点を徹底解説

【遺産分割協議には成年後見人等の選任が必要?!】

まず、一番に留意をしなければいけないのが、遺産分割協議の場面です。

相続人が複数いるときは、その相続人全員で、お亡くなりになった方が所有していた財産をどのように分けるか話し合いをする必要があります。これを遺産分割協議といいますが、遺言書がない場合には、必ず行う必要があります。

この遺産分割協議にあたり、相続人の中に、障害をお持ちの方がいる場合には、成年後見制度の利用を検討する必要があります。

また、今回のテーマである相続人の中に障害をお持ちの方がいる場合とは少し離れますが、相続人の中に認知症の方がいる場合においても、判断能力が不十分なため、成年後見制度の利用が必要になります。
2025年には、高齢の方のうち5人に1人が認知症になるという推計もあります。
つまり、これからの相続手続きにおいて、成年後見制度の利用が必要になるケースは決して珍しいケースではなくなると予想されます。是非、他人事と思わず、最後までお読み頂ければ幸いです!

【成年後見制度とは?】
知的障害、精神障害などの理由で判断能力が不十分な方は、不動産や預貯金などの財産の管理をしたり、契約を結んだり、遺産分割協議をする必要があっても、自らこれらの手続きを行うことが難しい場合があります。また、十分に判断ができないことで、不利益な契約をしてしまう可能性もあります。このような判断能力が不十分な方を保護し、支援する制度のことをいいます。

なお、成年後見制度は、「任意後見」と「法定後見」の2つに分類されます。

〈任意後見制度〉
判断能力が十分にある方が、自分自身の判断能力が低下したときに備えて、事前に自ら後見人を選んで、契約を結ぶ制度のことです。

誰になにを支援してもらうか具体的に決定した上で、後見契約を結び、実際に判断能力が低下・喪失したときに後見を開始する点が特徴です。

〈法定後見制度〉
既に判断能力が低下して、自身で財産管理等を十分に行うことができない方に、本人に代わって配偶者や子供などが申立てを行い、後見人を選任する制度です。

さらに、法定後見制度では、選任の申立を受けた家庭裁判所が判断能力に応じて、補助、保佐、後見の3つの類型から適切なものを選択し、状況に応じた支援を行います。

「補助」は、判断能力がある程度低下してしまった人に適用されるもので、3つの類型の中では最も軽度なものです。補助の対象になる方は、日常生活には特段問題がない方が多いため、被補助人は一人で行うことが難しい事柄に限って、必要に応じて補助人にサポートをお願いします。そのため、補助人には、包括的に権限が付与されるわけではなく、必要に応じて個別に代理権や同意権が付与されることになります。

「保佐」は、判断能力が相当程度低下してしまった人に適用されるもので、3つの類型のうち、中間に位置します。保佐の対象になる方は、重要な法律行為(不動産の取引や遺産分割協議、金銭の貸し借りなど)について、サポートを必要とする状態にあるため、保佐人は、被保佐人が行った法律行為を完全に有効にする同意権と、それを取り消すための取消権を有します。

「後見」とは、判断能力がほとんどなくなってしまった人に適用されるもので、3つの類型のうち、最も重い類型です。後見の対象になる方については、様々な不利益から法的に広く保護することが重視されています。そのため、後見人は、被後見人に代わって法律行為を行う代理権と被後見人が行った法律行為を取り消すための取消権を有します。
ちなみに、成年後見制度のうち、最も利用者数の多い類型であり、利用者全体の約8割がこの「後見」を利用しています。

遺産分割協議において成年後見制度が必要になるケースとは?
知的障害や精神障害によって、判断能力が不十分なため、相続財産の内容を理解した上で、遺産分割協議をすることが難しい相続人がいる場合に成年後見制度を利用し、その相続人の代理人を選任した上で遺産分割協議を行う必要があります。
たとえ、身体に障害をお持ちであっても、判断能力がしっかりしており、相続財産の内容を理解した上で、遺産分割協議に参加することが可能であれば、その方については、成年後見人等の選任は不要です。

それでは、成年後見制度の利用が必要になった場合、どのように手続きを行えば良いか見ていきましょう!

【選任の方法】
成年後見人等の選任は、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に申立をします。

申立人になれるのは、本人、配偶者、四親等内の親族等です。
成年後見人等になる人は、親族に限らず、弁護士や司法書士、社会福祉士などの専門家が選任される場合もあります。成年後見人等になるために、特に資格は必要ありませんが、成年後見人等は、申立のきっかけとなったこと(不動産の取引や遺産分割協議、金銭の貸し借りなど)が終わった後も、本人が亡くなるか、判断能力が回復するまで、職務が続くことになるため、注意が必要です。

選任手続きには、申立手数料として800円、登記手数料として2,600円分の収入印紙が必要になります。また、連絡用の切手も必要です。後述しますが、本人に判断能力がどの程度あるかを医学的に判定するため、鑑定という手続きが行われる場合があります。この場合、鑑定費用として、10~20万円の費用がかかります。

成年後見人の申立を行うための「後見・保佐・補助開始等申立書」は裁判所のホームページから入手が可能です。

【選任の流れ】
一般的な選任までの流れは下記の通りです。

申立がされると、家庭裁判所は、必要書類がすべてそろっているか、必要な事項がきちんと記載されているか、を審査します。
書類の内容によっては、本人や親族、成年後見人等候補者に申立に至った事情などを面接し、照会することがあります。
また、本人に判断能力がどの程度あるかを医学的に判定するため、鑑定という手続きを行う場合もあります。申立時に提出する診断書とは別に、家庭裁判所が医師に鑑定を依頼し、実施されます。法律上、後見・保佐の場合には原則、鑑定が必要となりますが、診断書の内容などに応じて、省略されることもあります。
さらに、本人の意思を尊重するため、申立内容など本人からの意見を伺う本人調査や成年後見人等候補者の適格性に関する調査もあわせて実施される場合があります。

鑑定や調査が終了すると、家庭裁判所は、後見等の開始を審判し、最も適任と思われる成年後見人等を選任します。後見等開始審判の確定後、家庭裁判所が、法務局に審判内容を登記してもらうように依頼をし、成年後見人等の職務が開始されます。

一般的に、申立から審判までおおむね1~2か月かかるといわれていますが、申立をした事案の内容に応じては、2ヶ月以上かかる場合もありますので、成年後見人等の選任が必要なときは、相続税の申告期限に余裕をもって手続きを開始する必要があります。

【障害者の相続人が財産を相続すると障害者控除が使える】

障害者の方が相続人となった場合、相続税額を一定額減額できる「障害者控除」という制度があります。
これは、相続税の負担が、障害者の生活にまで、影響を及ぼすことを防止するために設けられた制度です。

【いくら減額されるの?】
いくら減額されるかについては、障害者の方が財産を相続したときの年齢及び障害の等級に応じて異なります。
計算方法は下記の通りです!

相続した年齢から85歳に達するまで、1年あたり10万円(特別障害者の場合には20万円)減額できる仕組みです。

なお、一般障害者及び特別障害者の定義は下記の通りです。
一般障害者:身体障害者手帳上の障害等級が3~6級又は精神障害者保健福祉手帳上の障害等級が2級もしくは3級 他
特別障害者:身体障害者手帳上の障害等級が1級又は2級もしくは精神障害者保健福祉手用上の障害等級が1級 他

また、上記の計算式を用いて計算した減額できる金額が、障害者本人の相続税額より大きいため、減額できる金額の全額を引き切れなかった場合には、その引き切れない金額をその障害者の扶養義務者の相続税額から減額することができます

ちなみに、扶養義務者とは、父母、祖父母、兄弟姉妹をいいます。また、三親等内の親族で、家庭裁判所が扶養義務者と定めた人や家庭裁判所の審判を受けていないが障害者と生計を一緒にしている三親等内の親族も含まれます。

〈適用要件は?〉
(1)相続または遺贈により財産を取得すること
(2)法定相続人であること
(3)相続開始日に障害者であること
(4)相続開始日に日本国内に住所があること

〈陥りがちな注意点 その1〉
適用要件(1)の財産の取得要件はとても大切な論点です。
例えば、障害者である相続人に係る生活費等の費用は全て別の相続人が負担していくこととし、障害者である方に、全く財産を相続させないとした場合、障害者控除の適用を受けることはできません。もちろん、その場合には、余りが生じることもないので、扶養義務者から減額できる障害者控除もないということになります。

障害者控除の適用を受けたければ、1万円でもいいので、障害者である相続人に財産を相続させる必要があります。

〈陥りがちな注意点 その2〉
適用要件(3)の障害者に該当するかどうかの判定時期は、相続開始の日。つまり、お亡くなりになった日です。ただし、この時点で、障害者手帳を所有していないからといって、障害者控除の適用を諦めてはいけません!次の要件をどちらも満たす場合には、お亡くなりになった日に障害者手帳を所有していなかった場合でも、適用を受けることができます。
① 相続税の申告書を提出する時点で、障害者手帳の交付を受けている又は障害者手帳の交付申請をしていること
② 医師の診断書により、お亡くなりになった日において、障害者手帳の交付を受けることができる程度の障害があったと認められる者であること

〈陥りがちな注意点 その3〉
見落としがちですが、適用要件(3)の障害者には、身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳を所有しているの方のほか、療育手帳を所有している方も含まれます。
療育手帳とは、児童相談所又は知的障害者更生相談所において、知的障害があると判定された方に交付される手帳のことです。
一般的には、特別障害者にあたる重度の方をA、一般障害者にあたる軽度の方をBと区分しますが、運用が各自治体に委ねられていることから、独自の区分が存在する自治体もあります。
療育手帳をもとに、障害者控除を適用する場合には、事前に区分を確認する必要があります。

なお、障害者控除は、遺産分割が完了していない、いわゆる未分割による申告をする際にも適用が可能です。

【まとめ】

相続人の中に障害者の方がいる場合、手続きや検討すべき事項が増加することをご理解頂けたかと思います。家庭裁判所など慣れない機関での手続きも必要になるため、余裕をもって手続きを開始することが重要です!私たち円満相続税理士法人では、このような特殊な案件も経験豊富な税理士が、各種専門家としっかり連携を取りながら、サポートしていきます!

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