相続人である子供が未成年です。その場合の手続きについて教えてもらえますか?

こんにちは、税理士の枡塚です。

「相続」とは、人の死亡をもって開始するものです。

ご高齢の方がお亡くなりになることが大半ですが、不慮の事故などによって、若くしてお亡くなりになり、相続が開始してしまうケースもあります。

また、ご高齢でお亡くなりになられた場合でも、お孫様を養子縁組しているようなケースもあります。

このようなケースにおいては、相続人の中に、未成年者が含まれている場合があります。

相続人の中に未成年の方がいる場合の相続は、特別代理人を選任することから始まります。

この記事では、相続人の中に未成年者がいる場合における相続手続き 特別代理人の選任に一挙に解説をします。

最後までお読み頂ければ、相続人の中に未成年がいても、慌てることなく相続手続きを行うことができます。2022年4月からは成人年齢が引き下げられます。対象者が増えるので、多くの方にお読み頂ければ幸いです♪

さらに、若くしてお亡くなりになった場合には、勤めていた企業からの退職金の受領、ご自宅の住宅ローンの残債など、検討すべき事項が増大します。相続税申告にお困りの方は、ぜひこちらも合わせてお読みください。

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また、お孫様を養子にしている場合の留意点は、こちらで詳しく解説をしています!

未成年者とは?

満20歳に達していない人をいいます。
ただし、20歳未満であっても、婚姻をすると法律上は成人とみなされます。

※民法改正によって、成人年齢が引き下げられるため、2022年4月1日以降は、18歳未満が未成年者となります。

未成年者

また、相続の場面では、産まれる前の胎児についても、既に産まれたものとみなされ、相続権を有するとされています。そのため、胎児についても、未成年者に含まれることになります。
通常の場合、人は産まれた時から権利能力を有するとされますが、産まれた日が数日違うだけで、相続人となる・ならないが変わるのは、不公平だと考えられるためです。

未成年者は、親などの法定代理人の同意を得なければ、原則として、契約などの法律行為をすることができません。
身近な例として、未成年者が携帯電話を契約する際、親に同意をしてもらう必要があるのは、そのためです。
また、未成年者が単独で行った法律行為は、取り消すこともできます。

未成年者

遺産分割協議には特別代理人の選任が必要?!

まず、一番に留意をしなければいけないのが、遺産分割協議の場面です。

相続人が複数いるときは、その相続人全員で、お亡くなりになった方が所有していた財産をどのように分けるか話し合いをする必要があります。これを遺産分割協議といいますが、遺言書がない場合には、必ず行う必要があります。

遺産分割協議は、法律行為に該当するため、未成年者自身が参加することはできず、法定代理人である親権者が代わりに参加することになります。

しかし、次のように親権者も未成年者と同時に相続人になるような場合には、代理人となることができません。
これは、親権者である母と未成年者である子供の間で利益相反が生じるためです。

利益相反

利益相反とは?


ひとことで言うと、利害が対立している関係にあることをいいます。

上記の場合であれば、母の取得分を増やすことにより、子供の取得分は減少します。反対に、母の取得分を減らすことにより、子供の取得分を増加させることができます。このように、ある行為が一方にとっては利益になるが、もう一方にとって不利益になってしまうような状態を利益相反といいます。

このような状態で、母が代理人となった場合には、自身の利益を優先して、子供の取得分をなくすことも可能となり、子供が不利益を被る危険性が生じます。
親権者が未成年者と同時に相続人となる場合に、代理人となることができないのは、このような理由からです。

ちなみに、未成年者が相続人となるような場合であっても、親権者が同時に相続人とならない下記のようなケースには、利害が対立しないことから、親権者が代理で遺産分割協議を進めることができます。

利益相反

また、国税庁の質疑応答事例において、下記のようなケースも利益相反には該当しないとして回答がされています。少し関係性が複雑なので、一般的ではありませんが、ご紹介します!

利益相反
国税庁(質疑応答事例)共同相続人に該当しない親権者が未成年者である子に代理して遺産分割協議書を作成する場合 

【照会要旨】
被相続人である甲さんは、妻である乙さんとの間に子A(成人)がありましたが、妻以外の女性丙さんとの間にも子B(未成年)があり、生前に認知していました。
甲さんの死亡に係る相続に関して、相続人である妻乙さんと子A、子Bで遺産分割協議をし、相続税の申告をすることになりましたが、未成年である子Bに代理して親権者である丙さんが分割協議に参加することはできますか?

【回答要旨】
丙さんは、被相続人である甲さんの相続人には該当しないため、子Bをはじめとする甲さんの相続人と利害が対立することはありませんね。そのため、子Bの代理をすることができます!
※一部割愛し、内容を変更しています。

それでは、親権者が未成年者と同時に相続人となる利益相反に該当するケースでは、どのような手続きが必要になるのか、解説をしていきたいと思います。

特別代理人の選任方法 徹底解説


親権者である親が、子供との間で利益相反行為をする場合には、子供のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求をしなければいけません。

特別代理人の選任をせずに、遺産分割協議を行った場合、その遺産分割協議は、無権代理行為として、無効になる場合があります。
無権代理行為とは、代理人としての権利がないにも関わらず、勝手に代理人として行った行為のことをいいます。この行為は、子供が成人した後に、「私が未成年の時に行った遺産分割協議は、代理人ではない人がしたものだから、無効にしてください!」と主張すれば、その通り、無効となり、遺産分割協議を最初からやり直すことになります。
つまり、特別代理人を選任せずに行った遺産分割協議は、全く意味のないものになる可能性があるということです。

〈特別代理人とは?〉


遺産分割協議において、判断力が未熟である未成年者に代わって、その子供の利益を守るために立てる代理人のことをいいます。

特別代理人は、家庭裁判所の審判を受けた行為にのみ、代理人となることができるため、遺産分割協議が終了した時点で、特別代理人の任務は終了します。

特別代理人となるために、特に資格は必要ありませんが、利害が対立していない相続人以外の人から選任する必要があります。
また、未成年の子が二人以上いるのであれば、それぞれ別々の特別代理人を選任する必要があります。

一般的には、成人している親族が特別代理人となるケースが多いですが、親族に候補者がいない場合には、司法書士や弁護士、行政書士などの専門家に依頼するケースもあります。

選任の方法


特別代理人の選任は、未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所に申立をします。

申立人になれるのは、親権者もしくは利害関係者(親権者と未成年者以外の相続人など)です。
未成年者一人につき、収入印紙800円と連絡用の切手が必要になります。

特別代理人の選任

特別代理人選任申立書は、裁判所のホームページから入手が可能です。申立書と聞くと、記載内容が難しそうに感じますが、難易度は高くありません。参考までに記載例を掲載します!

特別代理人選任申立書
特別代理人選任申立書
裁判所ホームページより 特別代理人選任の申立書(遺産分割協議)記載例

また、遺産分割協議書案も一緒に提出をする必要があります。
未成年者に不利な内容であれば、変更を求められたり、却下される場合もあるため、基本的には、法定相続分通りとするのが一般的です。
しかし、個別具体的な事情(子供がまだ幼く、成人するまで長期間に及ぶ場合など)を勘案した上で、柔軟に対応してくれるケースもありますので、未成年者にとって不利な内容になるようであれば、その理由について上申書を遺産分割協議書案と一緒に提出します。

選任までの流れ


一般的な選任までの流れは、下記の通りです。申立書を提出すると、審理が開始されます。審理の最大のポイントは、未成年者にとって不利なものではないかどうか。

その後、裁判官の判断により、審判が下されます。
選任された場合には、「特別代理人選任審判書」が送付されます。これは、特別代理人に選任されたことを証明する書面です。
こちらが送付されてきたら、予め裁判所に了承を得ていた遺産分割協議書にその他の相続人と合わせて署名・捺印を行い、遺産分割協議書が完成します。

特別代理人選任の流れ

一般的に、申立から結果の連絡まで、約1か月かかるといわれています。
申立する家庭裁判所の混雑具合によっては、これ以上かかることもありますので、相続人の中に未成年者がいる場合で、特別代理人の選任が必要なときは、相続税の申告期限に余裕をもって手続きを開始する必要があります。

未成年者控除

未成年の方が財産を相続した場合には、今後の教育費や養育費を考慮して、相続税額のうち一定額が控除される制度があります。これを「未成年者控除」といいます。

未成年者控除については、こちらで詳しく解説をしています!

まとめ

相続人の中に未成年者がいる場合、慣れない機関(家庭裁判所)での手続きも必要になるため、余裕をもって手続きを開始することが重要です!私たち円満相続税理士法人では、相続人の中に、未成年の方がいる場合の相続手続きも数多くお手伝いしています!

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