【この記事の執筆者】
相続税の研究を愛する相続専門の税理士。23歳で税理士試験に合格し、国内最大手の税理士法人で6年間の修行を積んだのちに独立。円満相続税理士法人の代表を務める。
こんにちは!相続専門税理士の橘です。
平成30年4月1日より、貸付事業用の小規模宅地特例に大きな税制改正が行われました。
貸付事業用の小規模宅地の特例とは、亡くなった人が賃貸物件として使っていた土地については、200㎡まで50%引きで相続税を計算していいですよ、という非常に魅力的な特例です。(この特例の詳しい内容を知りたい人はこちら↓の記事をご覧ください)
亡くなった人がアパートや駐車場として使っていた土地は200㎡まで50%引きになる特例があります(アスファルトや砂利のない青空駐車場は不可)。その名も小規模宅地等の貸付事業用の特例です。この特例と自宅80%引きの特例は部分的にしか併用できません。どちらを優先させるべきかの有利判定や限度面積の計算をイラストを使いながらわかりやすく解説しました。
ただでさえ、不動産を購入し、それを賃貸にだせば大幅な評価減の恩恵を受けることができます(※詳しくはここの記事→土地の相続税評価額の計算方法)。
それに上乗せする形でこの特例が使えれば、さらにそこから50%引きとなるので、相続税を少なくする効果は凄まじいものがあります。
近年、この効果に目を付けて、相続税を減らす目的だけで賃貸物件を購入する人が非常に増えてしまいました。しかし、そもそもこの特例の趣旨は、賃貸不動産を相続した人が、不動産賃貸業を継続させやすいように税制面からもバックアップしよう!というものです。
そういった背景があり、「相続税を減らす目的だけで不動産賃貸業を始めるような人には、この特例は認めない!」という考えのもと、平成30年4月1日より特例の条件が厳しくなりました。
今回は、貸付事業用の税制改正の内容について解説します!
この度の税制改正は、ずばり・・・
亡くなる前3年以内に、新たに賃貸を始めた物件には、貸付事業用の小規模宅地の特例を使えないようにします!という改正です。
相続税を減らす目的だけかどうかの判断は、3年以上不動産賃貸業を営んでいたかどうかで判定するというわけです。
まぁ確かに、相続税対策で相談に来られる人から、「父が亡くなる直前に賃貸不動産を買ってもらって、父が亡くなったら、すぐに売却してもいいですか?」という質問を受けることがよくあります。
このようなケースは、やはり元々将来にわたって不動産賃貸業を営んでいく気はないわけです。こういった人まで、特例で救済する必要はない!という今回の税制改正は一理あるかもしれないですね。
余談になりますが、私はこれまでたくさんの大家さんと話をしてきました。大家さんが口を揃えていうのは・・・
不動産賃貸業は決して不労所得なんかじゃなく、やることたくさんあって大変なのよ!という意見です。
よくサブリースで一括借上げしてくれれば楽ですよ、という話もありますが、なんだかんだで毎年の確定申告など、色々やることはでてくるわけですね。
そういったこともあるので、「3年以上不動産賃貸業を継続させた人は、相続税を減らす目的だけではありませんね」ということで、無事に貸付事業用の特例を使い200㎡まで50%引きができるのです。
今回の税制改正の趣旨は、「相続税を減らす目的だけで不動産賃貸業を始めた人には特例を認めない」というものです。そして具体的には、亡くなる前3年以内に取得した賃貸物件には、特例を認めないという形で改正されました。
そうすると、次のような人が改正の影響を受けてしまいます。
例えば、もともと複数の物件を持っている大家さんがいて、その人が亡くなる3年前に新たに購入した賃貸物件がありました。
今回の税制改正で、亡くなる前3年以内に購入したものには特例が使えなくなりましたが、もともと不動産賃貸業に本腰をいれているような人であったのなら、それは、相続税を減らす目的だけではなかった可能性が高いと言えます。
そのような趣旨から、元から不動産賃貸業に本腰をいれているような人には、今回の税制改正の影響を受けないような措置がされました。
具体的には、亡くなる前3年以上、不動産賃貸業を事業的規模で営んでいる人は、亡くなる3年以内に新たに賃貸を始めた物件でも特例が使えます。
この事業的規模の定義については、現在まだ国税庁から公式な見解が公表されていませんが、所得税の取扱いには、事業的規模の規模の見解は公表されていて、恐らく、この考え方が相続税でも使われるだろうと言われています。
では、具体的に事業的規模とは、どのくらいの規模なのかというと・・・
5棟10室(ごとうじゅっしつ)基準と呼ばれています。四字熟語みたいですね。
貸家などの場合には5棟以上、アパートやマンションの場合には10室以上、駐車場の場合は50台以上の規模で不動産賃貸業を営んでいれば、事業的規模と認めてもらえます。※貸家とアパートと駐車場を持っている場合などには、各数値をMIXして判定します。
元々このくらい大きな規模で賃貸経営をしてきた人であれば、亡くなる直前に新たな不動産を購入したのであっても、それは相続税を減らす目的だけではないと認めてもらえるわけです。
先ほど、3年以上事業的規模で不動産賃貸業を営んできた人は、亡くなる直前に賃貸不動産を購入してもOKですよ、とお伝えしました。
そうすると、例えば次のようなケースはどうなるか、考えてみましょう。
元々、事業的規模で不動産賃貸業を営んできた甲さんという人がいます。この甲さんが亡くなってしまい、妻の乙さんが賃貸不動産を相続しました。乙さん自身は元々、賃貸不動産を持ったことは一度もありません。
この相続のあと、妻の乙さんは新たに賃貸不動産を購入しました。
その後、購入してから3年経たずに乙さんも亡くなってしまいました。
この場合、乙さんが新たに購入した賃貸不動産には、特例が使えるでしょうか?
ちょっと考えてみましょう・・・・
ポイントは、甲さんが事業的規模で営んできた期間が、乙さんに引き継がれるかどうかです。
引き継がれるのであれば、乙さんも3年以上事業的規模で営んできたことになるので、亡くなる直前に購入したものであっても特例が使えます。
一方で、もし引き継がれないのであれば、3年以上事業的規模で営んできたことにはならないので、特例は使えません。
それでは正解を発表します。今回のこのケース!特例は・・・・
使えます!事業的規模の期間は相続によって引き継がれます。
最後になりますが、この税制改正は平成30年4月1日からスタートしてます。
平成30年4月1日にスタートしたのですが、この改正が公表されたのは平成29年12月なんです。それまで、この改正の噂はまったく出回ってなかったので、まさに寝耳に水でした。
世の中には既に、相続税対策として賃貸不動産を購入してしまった人もたくさんいます。その人たちに後出しじゃんけんで税制改正してしまうのは流石にかわいそう、ということで、平成30年3月31日までに不動産を購入した人には、購入してから3年以内に亡くなってしまったとしても特例が受けられるようになっています。
ただし、平成30年3月31日までに購入しただけでなく、実際に賃貸を始めていたことが要件になりますので、ぎりぎりで購入しただけで、まだ賃貸してなかった場合には受けられません。注意しましょう。
アパートや駐車場として使っている土地は200㎡まで50%引きにできるこの特例は、やはり使えるなら使いたいですよね。ただ、亡くなる前3年以内に購入したものには原則として、この特例は使えなくなりました。
例外として、事業的規模と呼ばれる不動産賃貸業に本腰をいれている人たちは、この取り扱いから除外されています。
改正を踏まえた対策としては、①賃貸不動産を買うなら早めに買う、②既に不動産賃貸業を営んでいる人は事業的規模と認められるように規模を拡張する、③そもそも賃貸物件で50%引きをとるアプローチから、自宅で80%引きをとるアプローチに変更する、などが挙げられます。
3年以上事業的規模で営んでいたかどうかは、過去の確定申告書を見れば一発でわかりますので、ごまかそうとか考えないでくださいね♪対策したい方はお早めにご相談くださいませ!
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