地主納税資金対策

こんにちは、円満相続税理士法人の中岡です!

今回は、地主さんのための納税資金対策について、取り上げたいと思います。

地主さんは、先祖代々継承してきた土地を多く所有しているため、財産のうち、土地の占める割合が大きく、金融資産は少ししかないという状況になりがちです。

例えば、不動産が2.5億円あり、預金が0.5億円、相続人が子供2人の場合を想定すると、相続税額は2人合わせて6,920万円となり、相続財産である預金0.5億円では、支払うことができません。

このような状況は珍しくなく、お困りの地主さんも多くいらっしゃると思います。

そこで、今回は、地主さんのための相続税の納税資金対策について解説していきます♪

生前にできる納税資金対策①現状把握

本当はやらなくて良かったことをしてしまうリスクもありますので、何事もまずは現状把握が大切です。

相続税の試算をする

今後、相続税が発生した時に焦らないように、早いうちから相続税の試算をしておきましょう。

まずは、財産の棚卸をします。

不動産だけでなく、預貯金・有価証券・生命保険契約などの金融資産についても、何を所有していて、いくらあるのかを把握しましょう。

財産の棚卸ができたら、将来支払うことになる相続税を試算しましょう。

分け方によって、相続税が変わることもありますので、分け方をいくつか想定してシミュレーションをするとよいでしょう。

また、推定相続人に配偶者がいる場合は、配偶者の相続(2次相続)まで含めたシミュレーションをすることが重要です。

土地の評価は複雑で、さらに小規模宅地等の特例といった特例の適用要件も複雑でるため、税理士でも間違うことがあります。そのため、費用は掛かりますが、相続税に強い税理士に正確な計算を依頼することをオススメいたします。

ここまで来たら、いくら納税資金が不足しているのか、明確になりました。具体的な納税資金対策の前にもう1つやっておくとよいことがあります。それは、あらかじめ土地を分類しておくということです。

あらかじめ土地の分類をしておくとよい

先祖代々引き継いできたものですので、なかなか難しいですが、例えば、以下のように重要度を考えておくと、相続対策やいざというときに判断に迷わなくなります。

また、土地の歴史とあわせて、跡取りとなる方に伝えておくのもよいと思います。

代々継承していってほしい土地(自宅やその周辺など)

手放したくない土地(収益を生んでいる土地など)

最悪、手放してもいい土地(離れたところの土地、空き地など)

もう処分してもいいかなと思う土地もあるんですが。。。

処分したあとの相続税も試算しておきましょう

このようなことを考えていると、生前中に処分しておこうと思われる土地もあるかもしれません。

売れるときに売っておいた方がよいというのは、もちろんですが、一般的に、

土地の時価 > 土地の相続税評価額(一般的に時価の8割)

となるので、売却して、土地の時価分の現金を受け取ると、相続財産の評価額が上昇し、相続税額が増加するという現象が起こってしまうかもしれません。

事前にきっちりと相続税の試算をしていれば、売却後の試算もすぐにできますね。

なお、相続後に売却すれば、取得費加算の特例を適用することもできます。

≫取得費加算の特例について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。

生前にできる納税資金対策②相続税を減らす

納税資金を確保する前に、支払う相続税そのものを小さくできないか、検討しましょう。

代表的な方法は以下の4つです。

養子縁組で法定相続人を増やす

貸駐車場や空き地に賃貸物件を建てる

生命保険金の非課税枠を上限まで使う

生前贈与で相続財産を減らす

それぞれについて詳しく解説していきます。

養子縁組で法定相続人を増やす

法定相続人が増えると家族全体の相続税額が減少します。

よくあるのが、長男の長男(孫)を養子にするというケースですね。孫に相続させると相続税の2割加算というデメリットもありますが、代飛ばしが可能です。

ただし、他の相続人から不満が出るなど、相続争いの火種にもなりかねませんので、慎重に行いましょう。

≫孫養子について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。

貸駐車場や空き地に、賃貸物件を建てる

賃貸物件が建っている土地の評価額は、貸駐車場や空き地の評価額より2割ほど下げることができます。

また、賃貸物件そのものの評価額も、建築会社に支払った金額より低くなります。つまり、賃貸物件を建てることで、相続税を減らすことができるのです。

例えば、1億円借金して、6,000万円の相続税評価額になる賃貸物件を建てた場合、相続財産の評価額を4,000万円圧縮することができます。

なお、借金をすれば相続税対策になると誤解している方も多くいらっしゃいますが、借金をするだけでは相続税対策にはなりませんので、注意しましょう。

生命保険金の非課税枠を上限まで使う

生命保険金は、500万円×法定相続人の数まで非課税となりますので、即効性のある相続税対策となります。

≫生命保険金について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。

なお、手元資金に余裕がある場合は、非課税枠を使い切っていても、レバレッジのきいた(将来大きく増えて生命保険金として返ってくる)生命保険に加入して、納税資金を準備する方法もあります。

生前贈与で相続財産を減らす

110万円ずつ、もしくは、将来払う相続税よりも低い税率で贈与税を支払ってでも110万円超を贈与していくという方法です。

令和6年からは7年以内加算となるので、7年経たないと贈与の効果は出なくなりますが、相続時精算課税制度を使うことで、毎年110万円ずつコツコツと対策をしていくことが可能となります。

≫令和6年以降の税制改正について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。

将来相続しない孫への生前贈与は7年以内加算の対象とならないので、効果は大きいのですが、孫へ贈与してしまって、相続人(子)の納税資金がなくなるということにならないように、計画的に贈与していきましょう。

生前にできる納税資金対策③所得を相続人に移転する

地主さんが本来受け取るべき所得を、相続人に移転させ、地主さんの蓄財を抑制しつつ、相続税の納税資金を相続人に蓄えさせる方法です。相続が発生するまである程度の時間があると見込まれる場合に、有効な手段です。

方法としては、以下のようなものがあります。

地主さんの土地の上に、相続人が賃貸物件を建てる

賃貸物件を相続人に生前贈与する

法人化する

地主さんの土地の上に、相続人が賃貸物件を建てる

「貸駐車場や空き地に、賃貸物件を建てる」ということを相続税対策でご紹介しましたが、こちらは、例えば、親の土地の上に子供が賃貸物件を建てるということです。

このようなケースでは、親は子供から地代を取らない(法律上も税務上も問題ありません)ことが一般的であり、この場合は相続税対策にはなりませんが、上に建てた賃貸物件から子供が家賃を得られるので、将来の納税資金として貯めていくことが可能です。

なお、子供が親に地代を支払うと、子供に借地権が発生し、親の土地は底地として低い評価額となり、相続税を減少させることができます。しかし、子供に借地権相当額の贈与があったとして贈与税が課税されたり、地代により親の財産が増えていったりということがありますので、安易に地代を払わないようにしましょう。

賃貸物件を相続人に生前贈与する

新たに建てるのではなく、贈与してしまうという方法です。

収益を生んでいるのは建物なので、土地は贈与する必要はありません。

ただし、不動産取得税や登録免許税がかかるなどのデメリットもありますので、検証が必要です。

≫賃貸物件の贈与について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。

法人化する

賃貸事業を法人化して、地主さんの蓄財を抑制しつつ、相続人を会社の役員にして報酬を支払い、将来の納税資金として貯めていくという方法です。

≫法人化について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。

相続発生後にできる納税資金対策

相続発生後に納税資金が足りない場合は、以下のような方法があります。

融資を受ける

相続した土地を売却する

延納の申請をする

物納の申請をする

融資を受ける

銀行から納税資金を借りるという選択肢です。

借りることができても、利息の支払いが発生しますので、後述の延納と比較して、どちらが有利か検討する必要があります。

また、そもそも必ず借りることができるというわけでもありません。

相続した土地を売却する

相続した土地を現金化して納税する方法です。

あらかじめ土地の重要度を分類しておけば、どの土地を手放すのか迷わなくて済みますね。

ただし、相続発生後、納税期限まで10ヶ月しかありません。売り急いで、本来の価格より安値で手放してしまうリスクもありますので、注意しましょう。

上述したとおり、生前に売却するよりも税務上は有利になるケースが多く、取得費加算の特例を適用し、譲渡所得税を抑えることもできます。

≫取得費加算の特例について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。

延納の申請をする

延納とは、分割払いで相続税の支払いができる制度です。

相続財産の内容により、最長20年間の分割払いが可能です。

ただし、誰でも使えるのかというと、そうではなく、現金で一括払いをすることが難しい理由があり、かつ、支払いができない範囲内でしか認められず、税務署に申請して許可を受けなければません。

ここで注意しなければならないのは、延納が認められたとしても、お金を借りているのと同じ状況なので、利子税という利息のようなものを支払わなければなりません。

利子税の税率は相続財産の内容により変わりますが、令和4年は、概ね0.4%~0.7%程度です。

≫延納について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。

物納の申請をする

物納とは、延納でも現金納付が難しい場合に、相続財産そのものを納めることで、相続税の支払いができる制度です。

延納と同様に、税務署からの許可が必要になり、延納でも納めきれない範囲でしか認められません。

留意点は以下のとおりです。

譲渡所得税がかからない

相続税評価額で充当されるため、時価と乖離がある

相続税評価額で充当されるため、物納する予定の土地には小規模宅地等の特例を適用しない

≫物納について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。

まとめ

今回は、地主さんの相続税の納税資金対策について、お話してきました。地主さんの財産は土地が多くを占め、一般的には分けにくい状況にありますので、あわせて、相続対策について検討することも大切です。

相続対策も納税資金対策も、早く始めるに越したことはありません。

また、相続発生後はできることも限られますし、猶予が10ヶ月しかありませんので、生前から相続税の納税を想定して、対策を打っておくことが大切です。

将来の相続が不安な地主さんは、相続に強い税理士に相談してみることをオススメします!

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最後までお読みいただきありがとうございました!

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