種類株式 属人的株式

こんにちは、円満相続税理士法人の中岡です!

株主平等の原則というものがあり、会社の株式をもっている株主の権利は原則として平等なのですが、その取扱いが異なる株式を発行することができます。

≫株主の権利について知りたい方は、こちらもご覧ください。

例えば、配当金をほかの株主より多く受け取ることができる株式や、議決権がない株式などです。

その異なる種類の株式のことを種類株式といいます。(通常の株式を普通株式といいます。)

種類株式は、会社法に定められているものしか発行することができませんが、その種類は全部で9種類あり、組み合わせるといろんなバリエーションをつくることができます。

今回は、種類株式の発行の方法から、どんな種類があるのか、また属人的株式と呼ばれる特殊な株式について、分かりやすく解説していきます。

≫種類株式の相続税評価について知りたい方は、こちらもご覧ください。

最後までお読みいただければ、種類株式について分かるようになりますよ♪

種類株式の一覧

まずは、会社法108条1項に定められている9つの種類について解説していきます。

1.剰余金の配当

配当金の支払いについて、特別な扱いをすることができる株式です。

配当金の決め方や支払う条件などについて、ほかの株主より、有利にしたり、不利にしたりすることができます。

金銭的な面で優遇したい場合に便利ですね。

2.残余財産の分配

残余財産とは、会社が解散したあとに残った財産です。

そして、残余財産は、株主のものなので、株主に分配されます。

この分配の方法や金額などについて、特別な扱いをすることができる株式です。

3.議決権の制限

株主総会の議決に参加する権利が議決権です。

この議決権を行使できる事項が限られる株式です。

経営には参加する意思はないけど、配当金はたくさんほしいという場合に、1.剰余金の配当と組み合わせて、無議決権だけど高配当といった株式をつくることができます。

≫無議決権株式の活用・評価・デメリットについて知りたい方は、こちらもご覧ください。

4.譲渡制限

株式は原則は自由に譲渡できるものですが、この種類株式は会社の承認がないと第三者に譲渡できないというものです。

会社にとって好ましくない人が株主となることを防ぐために用いられます。

また、全部の株式について(要するに普通株式にも)、譲渡制限を付すこともできます。(会社法107条1項1号)

多くの中小企業は、譲渡制限を付しています。

≫譲渡制限株式のメリット・売却する方法について知りたい方は、こちらもご覧ください。

5.取得請求権

株主が会社に買い取りを求めた場合、会社が定められた対価(金銭以外でもOK)で必ず買い取らなければならないという株式です。

株式は原則は自由に譲渡できると言いましたが、現実は買い手を探すのにも一苦労です。

そこで、あらかじめ会社が買い取ることを約束しておけば、株主が売りたいときに売れるので、投資のハードルが下がるということがあります。

また、譲渡制限と同様に、全部の株式について、取得請求権を付すこともできます。(会社法107条1項2号)

6.取得条項

ある事象が起こった場合やある日が到来した場合など、あらかじめ定めた一定の事由が生じたことを条件として、強制的に会社に買い取られる株式です。

対価は、金銭以外にすることもでき、普通株式や他の種類株式などと定めておけば、一定の事由が生じたことで、株主の持つ株式の種類を転換することができます。

また、譲渡制限や取得請求権と同様に、全部の株式について、取得条項を付すこともできます。(会社法107条1項3号)

7.全部取得条項

先ほどの取得条項と似ていますが、こちらは、株主総会の特別決議(3分の2以上の賛成)によって、強制的に会社に買い取られる株式です。

対価は、金銭以外にすることもでき、また無しにすることもできます。

全部取得条項付株式は、スクイーズアウト(少数株主の排除)や100%減資(株主の交代)、敵対的買収の防衛策などに活用することができます。

8.拒否権(黄金株)

株主総会や取締役会の決議のうち、一定のものについて、拒否することができる株式です。

株主総会の決議を拒否できるという大きな権限を持つため、黄金株とも呼ばれています。

ただし、拒否できるだけであって、自由に決められるわけではありません。

9.役員選任権

取締役や監査役をこの種類株式を持っている株主だけで選ぶことができる株式です。

会社の経営を支配できてしまうため、非公開会社(株式の全部に譲渡制限が付されている会社)しか、この種類株式を発行することができません。

種類株式の発行の方法

次に、種類株式の発行の方法について、解説していきます。

私たち、円満相続税理士法人では、種類株式の活用についてのサポートを行っていますので、こちらもご覧ください。

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手続きは次の4つです。

1.定款を変更する

2.種類株式発行会社であることを登記する

3.新しく種類株式を発行する/普通株式を種類株式に転換する

4.発行済株式数などの登記を変更する

定款を変更する

まずは、種類株式を発行できるように定款を変更する必要があります。

発行できる種類株式の内容や発行できる株式総数を定款で定めます。

定款を変更するには、株主総会の特別決議が必要です。

特別決議とは、議決権の行使できる株主の過半数の株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成で決議するもので、定款の変更は会社にとって重要事項ですので、要件が厳しくなっています。

新しく種類株式を発行する/普通株式を種類株式に転換する

新株を発行する場合、非公開会社(株式の全部に譲渡制限が付されている会社)では、株主総会の特別決議が必要となります。

また、種類株式発行会社となり、既に発行済みの普通株式の一部を種類株式に転換する場合は、普通株式を持つ株主全員の同意が必要となります。

すべての普通株式に、全部取得条項を付す場合は、特別決議で行えます。

すべての普通株式に、譲渡制限を付す場合は特殊決議、取得条項を付す場合は株主全員の同意が必要となります。(会社法111条)

種類株式の変更の方法

種類株式を発行したけれど、その内容を変更したいと思ったときの方法について、解説していきます。

種類株式の内容を定めているのは、定款ですので、定款の変更が必要になります。

つまり、必要な手続きは以下の2つ+登記事項の変更です。

1.定款を変更する

2.種類株式総会で決議する

定款を変更する

既に述べたとおり、定款を変更するには、株主総会の特別決議が必要となります。

種類株式総会で決議する

種類株式総会とは、その種類株式を持つ株主だけの総会です。

そして、株式の内容を変更する種類株主総会の決議は、定款によっても省略することができません。(会社法第322条第1項第1号、第2項、第3項)

さらに、この決議には、特別決議が必要です。(会社法第324条第2項第4号)

なお、種類株式の内容を変更することは、その種類株式を持つ株主だけでなく、普通株式を持つ株主や他の種類株式を持つ株主にも影響があるので、普通株式や他の種類株式に関する種類株主総会の決議も必要となります。

属人的株式

最後に属人的株式と言われる、特殊な制度をご紹介したいと思います。

ややこしくなるのですが、種類株式とは全く別ものだということを、初めに押さえておいてください。

属人的株式とは?

属人的株式とは、以下の3つの権利について、株主ごとに異なる取扱いを行うことができる株式をいいます。(会社法109条2項)

剰余金の配当を受ける権利

残余財産の分配を受ける権利

株主総会における議決権

ただし、非公開会社(株式の全部に譲渡制限が付されている会社)しかつくることができません。

通称で属人的株式と呼ぶのですが、実際は、株式の種類ではなく、単なる株主ごとに決めた特別な取扱い(属人的定め)のことです。

したがって、その人以外の人が株主になっても、その特別な取扱いは、適用されません。

一方で、種類株式は、株式ごとに異なる取扱いを行うもので、その種類株式を持っている株主に等しく適用されます。

属人的株式をつくる方法

定款で定めるだけです。

ただし、この定款の変更は、特別決議より厳しい要件が設けられており、総株主の半数以上かつ総株主の議決権の4分の3以上の賛成が必要です。

なお、登記事項でありませんので、登記をする必要はありません。

属人的株式の注意点

株主の権利を自由に設計できる反面、無秩序になる恐れがある

登記事項ではないため、取り決めがあるかは定款を見ないとわからない

非公開会社(株式の全部に譲渡制限が付されている会社)しかつくることができない

人ごとの定めなので、株式を譲渡しても、その定めは引き継がれない

まとめ

種類株式は全9種類あり、少し複雑ですが、うまく使うことによって、投資のハードルを下げたり、経営の自由度を高めたり、事業承継に活用できたり、非常に高い効果を発揮するものです。

≫種類株式の相続税評価について知りたい方は、こちらもご覧ください。

属人的株式も、登記簿を見られても外部からは分からない、特定の人の株式だけ種類株式にするより、属人的株式の定款の定めをする方がハードルが低いなど、活用できる場面はあります。

種類株式を活用した事業承継を検討される際は、相続や事業承継に強い税理士に相談してみることをオススメします!

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最後までお読みいただきありがとうございました!

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