円満相続税理士法人 パートナー税理士
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ついにスタートした「遺言書の保管制度」!
こんにちは!
相続専門税理士の桑田悠子です。
本日は、2020年7月10日からスタートした「遺言書の保管制度」の体験記をお届けします♪
このような内容を解説していますので、最後までご覧ください(*^^)v
・遺言書の保管制度とは?
・どこの法務局で保管できるのか?
・遺言書作成の注意点、保管できる遺言書の要件
・法務局では、遺言の内容のアドバイスは一切受けられない
・手数料はいくら?
・手数料の印紙はあらかじめ買っていくべき?
・東京法務局の遺言書保管所はどんな場所?(写真付きで解説)
・遺言書は封をして持っていくの?
・保管のための申請書記入の注意点は?
・保管に予約は必要?
・遺言を書く人が入院中の場合、代理人が持参してもOK?
・相続税で大損する遺言書が多発中!
「遺言書の保管制度」とは?
まず、遺言は、大きく分けて次の2種類に分類されます。
1つ目は、遺言を作る人が、公証役場で公証人の先生と一緒に作成する「公正証書の遺言」!
(専門用語で、「公正証書遺言」と呼びます。)
2つ目は、遺言を作る本人が自分の手で書き上げる「手書きの遺言」!
(専門用語で、「自筆証書遺言」と呼びます。)
※危急時遺言などほかの種類の遺言もありますが、今回は分かりやすさ重視のため、割愛しております。
このうち、「公正証書の遺言」は、公証役場が原本を保管するので、紛失・改ざんなどのリスクはありませんが、「手書きの遺言」は、今回の保管制度が始まるまでは、自宅の引き出しの中で保管したり、信頼する友人や専門家に預けたりと、保管方法は遺言を書いた人に委ねられていました。
そのため、紛失により遺言が発見されなかったり、悪意のある相続人により遺言が改ざんされたり、預けていた専門家が遺言を書いた人よりも先に亡くなったり認知症となる等で、遺言が行方不明になる等のリスクが、ありました。
そこで、手書きの遺言を、法務局で保管してくれる制度が始まったのです(^^)
「手書きの遺言書」は、当初、最初から最後まで手書きである必要がありましたが、2019年1月13日より、本文を要件に添って手書きにすれば、財産目録部分は、手書きでなくてもOKとなりました!
どこの法務局に行けばいいの?(遺言書保管所はどこ?)
お待ちください!
どこの法務局でも遺言を保管してもらえるわけではありません・・・
遺言を保管してもらえるのは、次の3つのいずれかを管轄する法務局です!
①遺言を書く人の本籍地←戸籍でチェック
②遺言を書く人の住所地←住民票でチェック
③持っている不動産がある場所←不動産の謄本でチェック
これらの遺言を保管してくれる法務局のことを「遺言書保管所」と呼びます(^^)
あなたの遺言書保管所がどこなのか?は、こちらの法務省のページでご確認ください♪
私は、自分の住所が東京都港区であるため、九段下にある東京法務局の本庁へ行ってきました!
遺言書保管所は、上図のように、まず、右側の列で、自分の本籍 or 住所 or 所有不動産の所在地が、どの管轄区域にあるのかを確認し、次に、左側の列に目を移すことで見つけることができます!
あなたも、ご自身の遺言書保管所を見つけることができましたか?
ちなみに、こちらの写真は、私が保管した東京法務局本庁です。
内部の写真も、ページ下部にて掲載しておりますので、最後までお読みくださいね(^^)
いざ、遺言書作成だ!
法務局で保管してもらえる遺言には、簡単に言うと、5つの要件があるのです。
①紙のサイズはA4
②規定の余白を守る
③名前を書く
④印鑑を押す
⑤書いた日の日付を書く
細かな注意事項は、こちらの法務省HPをご覧ください。
私が、遺言書の保管申請をして、待合室で待機している間に、遺言を書いて持ってくる人が何名もいらっしゃいましたが、その多くが、要件不備で保管を受け付けてもらえず、出直すことになっていたご様子でした(>_<)
※東京法務局の遺言書保管所における保管手続は、個室での個別的な対応ではなかったため、他の遺言者と法務局の人のやり取りは、待合室にいる間、普通に聞こえてしまいました(;^ω^)もう少しプライバシーに配慮した作りにした方が良いと思います。
私がちょうど遭遇した方々は・・・
・余白の要件を満たしていなかった人
・本文をPCで入力してしまった人
・遺言執行者を設定したいのに、誰にするか決まっていなかった人
などです。
このように、せっかく自分で遺言書を書いて持っていっても、要件不備で持ち帰りとなることも多くあります。
この制度も便利ではありますが、やはり、公証役場で作成する遺言の方が、確実性が高いため、おススメですね!
法務局では、遺言内容のアドバイスは一切受けられません!
法務局の担当者から、遺言の内容に関するアドバイスを受けることは、できません!
前述の5要件を満たしていないことにより無効となることは免れられますが、内容自体のチェックは一切してもらえませんので、保管した遺言書が有効であるとは限りません。
そのため、せっかく遺言書を作成するのであれば、私は、公証役場で公証人の先生と確実な遺言書を作成されることを、おススメします!
保管に手数料などの費用はかかるの?
遺言の保管には、手数料がかかります!
その金額は、3,900円です。なお、保管申請以外の閲覧などの手続きにおいても手数料が発生します。詳しくは下表にてご確認ください。
手数料は、カウンターで現金払いをする訳ではありません。
専用の台紙に「収入印紙」を貼ることで、支払います。
収入印紙は、郵便局で購入することもできますが、保管する法務局内で購入可能です。
東京法務局では、遺言書保管所とは別の階で販売しており、印紙の販売場所は、遺言書保管所の担当者さんにご案内頂けました。
なお、購入するタイミングは、遺言書が要件を満たしていて、保管可能であることが確実になってからがおススメです。
私が申請手続きを待っている間だけでも、何人か遺言書を保管に訪れていましたが、ほとんどの人は要件を満たしておらず、保管することができていませんでした。そのため、先に購入せず、保管することができると確定してから購入した方がいいでしょう。
遺言書保管所は、どんな場所なの?
遺言書保管所は、場所どのような場所なのか気になりますよね!
私が実際に伺った東京法務局の遺言書保管所は、こんなところでした♪
「法務局」と聞くと、なんだかハードルが高いように感じますが、所謂お役所と同じ雰囲気ですので、一般の方も違和感なく訪ねることができると思います。
また、私を担当してくださった方は、とても物腰柔らかで優しい方でした!
上の写真にあるカウンターで担当者さんに遺言書を渡すと、代わりに番号札を貰います。個人情報の関係で、名前で呼ぶことはなく、必ず番号で呼ばれます。
「申請書」の記載が必要です!注意点もあるよ。
遺言書の保管手続きでは、遺言書のほかに、申請書も提出する必要があります。
申請書は、基本的には当日までに自宅で記入を終わらせ、記入済みであるものを持っていきましょう。
申請書は4枚ほどあり、記載する内容も多く、分かりづらい点もありますので、事前に家で書いてみて、分からないところは法務局に電話相談して、完璧な申請書にして持っていくことをお勧めします!
※申請書は、こちらの法務省HPからダウンロードしてプリントすることができます!
※拡大や縮小をすると受け付けてもらえない可能性がありますので、プリントする際には、縮尺にご注意ください!申請書は、自動読取装置で処理されるため、拡大縮小されていると、読込みエラーとなってしまうのです・・・
ご自身で申請書の印刷などが出来ない場合には、法務局でもらうことができますので、予約時間より早めに法務局へ行き、申請書を受け取り、その場で書く方法でも大丈夫です。
また、申請書には住所の記入欄があるのですが、そこには住民票と完全に同じ表記で書く必要があります。マンションにお住まいの方で、住民票にマンション名を記載がない場合は、申請書にもマンション名は不要です。
私自身、申請書で一か所、書き間違えをしたのですが、二重線で消すことで、記入し直さずとも、受け付けてもらうことができました。訂正印は、特に求められませんでした。
※申請書の修正は、修正部分に二重線を記載するのみで保管手続きができましたが、あくまでも、申請書の話です。遺言書の本文に加筆・修正を行う場合には、所定の方法がありますので、確認のうえ行ってください!
相続人以外に財産を渡す場合など→その人の住所が必要!
相続人以外の人に、遺言書で財産を渡す(「遺贈」と呼びます)場合には、その財産を貰う人(「受遺者」と呼びます)の住所を申請書に記載しないと、遺言書を保管することはできません。
また、遺言執行者という遺言書の内容を実現する人を設定する場合にも、その遺言書執行者の住所を記載する必要があります。
そのため、本人から住民票上の住所を確認するなどし、正確に申請書に記入しましょう。
ここで問題です!
受遺者や遺言執行者の住所はなぜ必要なのでしょうか・・・?
答えは、通知書の送り先として使用されるため、です。
通知書とは・・・遺言を書いた人の死後、その相続人などが、遺言書の閲覧などを行った場合に、他の相続人・受遺者・遺言執行者などに対して、遺言書が法務局に保管されている旨が通知される書類のことです。
受遺者等が、外国に住んでいる場合は、どのように記載すればいいでしょうか?
これは、先程の使用目的から考えてみると分かります♪
要は、通知書を送る場合の送付先住所として使われるので、郵便物が正確に届くようにローマ字で氏名・住所を書けばOKです!
受遺者等の生年月日を記入する欄もありますので、正確に記入しましょう。こちらは、遺言を書いた人が亡くなった後に、受遺者等が遺言書の閲覧に来た時に、本人確認のために使われます。
必要書類は?
遺言書を保管するためには、遺言書・申請書・手数料の他に、住民票や本人確認書類が必要です!
①住民票
本籍の記載のある住民票の写し等である必要があります。
また、作成後3か月以内のものでなければ、ダメです。
②本人確認書類
本人確認書類は、有効期限内である次のうち、いずれか1点でOKです。
・マイナンバーカード
・運転免許証
・運転経歴証明書
・旅券
・乗員手帳
・在留カード
・特別永住者証明書
これらの他にも、遺言書が外国語により記載されているときは、日本語による翻訳文も必要です。
遺言書の保管手続には予約が必要?
遺言書の保管手続きは、予約制です。
いきなり法務局へ行っても、長時間待たされたり、そもそも手続きをすることができない可能性があります。
そのため、遺言書保管制度を利用する場合には、事前に予約をしましょう。
予約方法は2種類です!
①専用HPからの予約
こちらの法務省HPからの予約であれば、24時間365日予約することができます(^^)
https://www.legal-ab.moj.go.jp/houmu.home-t/top/portal_initDisplay.action
②法務局(自分の遺言書保管所)へ電話して予約、又は窓口へ行き予約
電話又は窓口で予約のできる時間帯は、平日8:30~17:15のみで、土日祝日や年末年始は除かれます。また、お電話の場合、時間帯によっては、職員さんが他のお手続き中であるなどの理由で、繋がりづらいことがありますので、要注意です!
電話番号や所在地は、こちらの法務省HPでご確認ください。
遺言書保管の予約における注意点はこちらです。
・予約を行うことのできる期間は、当日から30日先まで
・予約日の前々営業日までに予約する必要があり
※例:7/13(月)の予約は、7/9(木)12:00までにする必要あり
遺言を書く人が入院中の場合、代理人が持参してもOK?
遺言書を書いた本人が、入院していて外出許可をもらうことができない場合など、どうしても法務局に行けないときは、代理人が保管申請しても大丈夫でしょうか?
答えは、NOです!
この遺言書の保管制度は、例外なく、本人が法務局へ行かなければいけません。
なお、介助者が同行することは認められています。
ちなみに、公証人の先生が作る公正証書の遺言書であれば、公証人の先生が病院や自宅まで出張してくれます(^^)
遺言書保管が完了したら「保管証」をゲットできます!
遺言書保管が完了したら、このような「保管証」をもらいます!
この保管証は、保管手続をした時にのみ発行され、無くしても再発行はしてもらません。
遺言書の閲覧、保管申請の撤回、変更、相続人等が遺言書情報証明書の交付を請求するときなどに、この保管証に記載された「保管番号」があると便利ですので、大切に保管してください♪
そしてご家族などに、遺言書を法務局に保管していることをお伝えになる場合には、この保管証のご自宅での保管場所や、保管番号をお伝えされておくと、遺言を書いた方がお亡くなりになり、保管してある遺言書が必要になる際、相続人の方などの手続きがスムーズになります(保管証がない場合も、手続きは可能です)。
なお、コピーでも問題ありませんので、原本を本人が保管し、ご家族にはコピーを渡しておけば安心ですね。
遺言書を書いた方がご存命であるうちは、この保管番号が分かっても相続人の方などが、勝手に遺言書を見ることはできませんので、ご安心ください(^^)
自分で書いた遺言書を銀行の貸金庫に預けるのはダメ?
自分で書いた遺言書を銀行の貸金庫に預けるのは、危険です!貸金庫を開けるためには、相続人全員の同意書か遺言書が必要になります。それなのに、肝心の遺言書が貸金庫にあると、開けることができないのです。
せっかく書いた遺言書なのに税金で大損しているケースも!
この保管制度がスタートしたことで、遺言書を書こうと考える方が増えると思います。
その際に、相続専門税理士として、あなたにお伝えしたいことは、「税金を鑑みた遺言書」を作成するべきであるということです。
相続税がかかる可能性のある方は、必ず相続専門税理士による相続税の試算をしたうえで、税金的にもベストな遺言書を作成されることを強くお勧めします。
相続税がかからない方でも、遺留分という兄弟以外が相続することが保証されている最低限の権利については存在しますので、遺留分を侵さないような遺言であることも、争いを防ぐためには大切です。
ちなみに、相続人全員の同意があれば、遺言書があっても、遺言書を使用せずに、相続人間の話し合いで分け方を決めることができます(遺言執行者がいる場合は、遺言執行者の同意も必要である等の例外もありますが)。
そのように、せっかく存在する遺言を無視して、遺産を分けるケースのほとんどは、相続税について考えていない遺言書であるケースです。
相続する人や割合によって、何百万・何千万と相続税の金額が変わることは、よくあります。
遺言を書こうと思っているあなた、遺言を書く前に1度、円満相続税理士法人にご相談ください。税金のアドバイスのみならず、遺言書作成サポートも行っております。
税金についても対策をしたうえで、お気持ちの伝わる遺言書を作成しましょう。
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