円満相続税理士法人 公認会計士・税理士
在学中に公認会計士試験に合格し、監査法人、コンサル、公務員を経て、円満相続税理士法人へ入社。相続・事業承継のプロとしてご家族のサポートができるよう業務に携わっています!
こんにちは、円満相続税理士法人の中岡です。
資産管理会社とは、個人が所有する不動産や株式を、所有・管理することを目的に設立される会社です。
資産管理会社を設立する際に、合同会社か株式会社かどちらがいいのでしょうか?
結論からお伝えすると、資産管理会社なら、合同会社がおすすめです!
合同会社は、平成18年の会社法施行により、設立することができるようになった会社で、現在日本で設立することができる会社4つのうちの1つです。
もちろん株式会社もそのうちの1つです。
(ほかには、合資会社と合名会社があります。)
≫合同会社・合資会社・合名会社については、こちらもご覧ください。
今回は、資産管理会社の設立における、合同会社と株式会社の違いを、比較しながら解説します。
最後までお読みいただければ、合同会社のメリット・デメリットについて、分かるようになりますよ♪
株式会社と合同会社の主な違い
まず、合同会社と株式会社はどういった会社なのかや、それぞれの違いを解説していきます!
出資者は、株主ではなく、社員という
株式会社の出資者(すなわち所有者)は、株主ですが、合同会社の出資者(所有者)は、社員と呼びます。
社員と言っても、一般的なイメージの従業員とは異なります。
少しややこしいですが、法律で、社員と呼ぶことが定められています。
社員が持っている出資は、持分という
株式会社の株主は、その出資の対価として、株式を所有していますが、合同会社の社員は、持分を所有しています。
最大の違いは、所有と経営の一致
株式会社の場合、株主ではない方が、取締役など役員に就くことができます。
一方で、合同会社の場合、出資者である社員が経営を行う役員になります。
出資者の責任の範囲は同じ
株式会社も合同会社も、出資者は有限責任です。
有限責任ってなに?
会社の債務を弁済する責任が、出資の範囲に限られている(有限)ということです。
つまり、会社が倒産しても、出資した財産が戻ってこなくなるというだけです。
株式会社の株主も、会社が倒産しても、株式が無価値になるだけで、それ以上責任を負うことがないので、この点は、合同会社も株式会社も同じです。
資産管理会社を合同会社にする主なメリット
資産管理会社を合同会社にするメリットは、なんといっても、費用や手間が抑えられるという点です。
設立手続きが簡素で、設立費用が安い
役員の任期がなく、決算の公告が不要なため、ランニングコストを抑えられる
次からは、5つの視点で比較しながら、資産管理会社を設立するなら、合同会社と株式会社のどちらがオススメか、解説していきます。
なお、今回は、資産管理会社を設立するということで、いわゆる商売的なこともせず、事業拡大などもしない、家族だけの会社という前提です。
合同会社vs株式会社【1】組織面の比較
経営者の違い
合同会社の場合、必要なのは、社員のみです。出資者(社員)=経営者なので、社員が経営します。
株式会社の場合、株主と取締役が、必ず必要です。
もちろん株主が取締役(経営者)になることもできますし、資産管理会社の場合、基本的には取締役=株主となると思います。
経営権を持つ社員を限定することもできる
合同会社では、定款で経営権(業務執行権)を与える社員を定めることができ、その社員を業務執行社員と呼びます。
業務執行社員以外の社員は、社員のままですが、経営に参画しなくなります。
ただの出資者ということで、株主と似たような立ち位置と言えます。
代表社員を置くこともできる
合同会社でも、株式会社の代表取締役のような、会社を代表する代表社員を置くことができます。
【判定】引き分け
下表のように、合同会社と株式会社でほとんど同じような組織を作ることが可能です。
ですので、「引き分け」とします!
ただし、注意しなければならないのは、合同会社の場合、業務執行社員や代表社員になれるのは社員のみ、つまり出資者のみです。
一方、株式会社の場合は、株主でなくても、取締役や代表取締役になれます。
合同会社vs株式会社【2】設立時の比較
設立手続き
合同会社と株式会社の設立手続きを簡単に示すと、下のような感じです。
ほとんど同じですが、合同会社では、定款の認証は不要です。
定款の認証とは、その定款が正当な手続きを経て作成されたものであることを、公証人に証明してもらうことです。
設立費用
合同会社と株式会社の設立費用をざっくり比較すると、下表のような感じとなり、合同会社のほうが費用が安く済むことが一般的です。
【判定】合同会社の勝ち
合同会社は株式会社よりも設立手続きが簡素化され、設立費用が安いです。
ですので、「合同会社の勝ち」とします!
≫合同会社を最も安く設立する方法を知りたい方は、こちらもご覧ください。
合同会社vs株式会社【3】運営面の比較
会社の意思決定
合同会社では、社員または業務執行社員の決議により会社の意思決定を行います。
原則として、1人1票です。
多く出資したからと言って、議決権は増えません。
ただし、議決権や議決するために必要な票数などを、定款で自由に定めることができます。
株式会社では、重要事項は株主総会の決議が必要です。
出資の比率に応じて、議決権が与えられます。
決議に必要な議決権割合などは、会社法で定められています。
合同会社の方が、柔軟性は高いですが、家族経営の資産管理会社なら、家族で意思決定しますので、実質的にどちらでもあまり変わらないかなと思います。
役員の任期
合同会社では、社員に任期はありません。
株式会社では、取締役の任期は最長10年です。
任期があっても、どうせ再任すれば、一緒では?
と思われるかもしれませんが、取締役を再任した場合であっても、役員変更登記が必要になります。
役員変更登記の登録免許税は、資本金額に応じて、1万円か3万円ですが、手間が増えますね。
決算の公告
合同会社では、決算の公告をする必要はありません。
株式会社では、決算の公告をする必要があります。
公告とは、広く知らせることをいい、官報や日刊新聞、インターネットに掲載します。
株式会社は、定時株主総会のあと、貸借対照表等を公告することが、会社法で定められています。
【判定】合同会社の勝ち
会社の意思決定は大差がありませんでしたが、合同会社では役員の任期や決算の公告がないため、小さいことかもしれませんが、手続き面や費用面におけるメリットと考えられます。
ですので、「合同会社の勝ち」とします!
合同会社vs株式会社【4】相続時の比較
株式は、相続財産となる
株式会社の株主が亡くなった場合は、その出資の権利である株式は相続財産となり、相続人に相続されます。
合同会社の持分は相続されず、払戻請求権が相続される
合同会社の出資者である社員が亡くなったら、社員の地位を失うこととなってしまいます。では、その出資である持分は、どうなるのでしょうか?
社員の地位を失うと、持分は、その持分に応じて会社の財産の払い戻しを受ける権利(払戻請求権)に変わります。
つまり、相続人が承継するのは、持分ではなく、払戻請求権です。
【例外】合同会社では、定款に定めがあれば持分が相続される
合同会社では、定款で、社員の持分を相続人が承継できる旨を定めておけば、持分を相続することができます。
つまり、定款に定めがあるかどうかで、相続人が持分を承継できるかどうかが決まります。
合同会社の持分の相続税評価額は?
【原則】払戻請求権として評価する
ざっくりいうと会社の純資産額(資産-負債)のうち持分に応じた金額で評価することになります。
【例外】定款に定めがあれば、非上場株式に準じて評価する
定款で、社員の持分を相続人が承継できる旨を定めておけば、持分を相続することができますので、株式と同じように評価します。
≫非上場株式の相続税評価額について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。
【判定】引き分け
定款に定めがあれば、合同会社の持分も、株式会社の株式と同じように、相続でき、非上場株式と同様に評価します。
ですので、「引き分け」とします!
合同会社vs株式会社【5】その他の比較
社会的信用力
合同会社のデメリットとして挙げられるのが、株式会社と比べて社会的信用力が低いということです。
これは、株式会社と比べて小規模な会社が多く、認知度が低いためだと考えられます。
銀行からの借入や人材の採用、取引先との契約などの場面で、影響する可能性があります。
資金調達
合同会社には株式がありませんので、株式会社のように株式の増資による資金調達ができません。
【判定】株式会社の勝ち
合同会社は株式会社に比べて、一般的に社会的信用力は劣ります。
しかし、資産管理会社は、大々的に取引をするわけでも、新たな人材を採用するわけでもありませんので、社会的信用力は必要ありません!
私たち、円満相続税理士法人では、資産管理会社設立に関するサポートを行っていますので、こちらもご覧ください。
合同会社から株式会社への変更も可能
合同会社も株式会社も同じ会社なので、社員全員の同意があり、手続きを踏めば、合同会社を株式会社に変更すること(組織変更と言います)ができます。
もちろん、株式会社を合同会社に変更することもできます。
変更にかかる期間は約2ヶ月で、費用は約10万円というのが一般的です。
まとめ
資産管理会社を設立するなら合同会社をオススメする理由について、ご理解いただけたでしょうか?
資産管理会社を合同会社にする主なメリットは、なんといっても、費用や手間が抑えられるという点です。
設立手続きが簡素で、設立費用が安い
役員の任期がなく、決算の公告が不要なため、ランニングコストを抑えられる
注意点
今回は、資産管理会社を設立する前提で解説してきましたが、個人事業を法人化する場合には、今後の計画なども踏まえて、どのような会社形態が適しているのか複合的に検討する必要があります。
また、合同会社は株式会社に比べて馴染みもないと思いますので、合同会社の仕組みを十分に理解したうえで、設立に向けた検討をしましょう。
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最後までお読みいただきありがとうございました!