円満相続税理士法人 代表税理士
『最高の相続税対策は円満な家族関係を構築すること』がモットー。日本一売れた相続本『ぶっちゃけ相続』シリーズ19万部の著者。YouTubeチャンネル登録者10万人。
生命保険金を受け取ったら、何税がかかりますか?
こんにちは!円満相続税理士法人の橘です。
生命保険金は契約の形よって、相続税・所得税・贈与税の3種類の税金がかかります。
とても難しそうですね…
いえ、コツさえわかれば簡単に理解できます!
今回は、日本一売れた相続本の作者である私が、生命保険にかかる税金を、イラストを使いながら日本一わかりやすく解説していきます。
最後までお読みいただければ、すーっと理解することができますよ♪
登場人物の確認
生命保険契約には、3人の登場人物の存在を理解しなければいけません。
被保険者
これは保険の対象となる人のことです。
つまり被保険者が死亡した時に保険金が支払われます。逆を言えば、この被保険者が死なない場合には保険金は降りてこないことになります。
被保険者の最大の特徴は、途中で変更することができない点です。
生命保険は、新しく加入するときに、被保険者の健康状態などをチェックしたうえで、保険料を決めたり、万が一の際の保険金を決めたりします。
そのため一人一人の条件が異なりますので、一度契約してから、被保険者を変更するということはできません。他の人に生命保険を変更したい場合には、新たに加入しなおすしかないですね。
まずは、これが被保険者でした。保険の対象となる人と覚えてください。
契約者
保険の契約をし、保険料を負担する人のことです。
一般的には、契約者と被保険者は同じ人にすることが多いです。自分が自分に保険を掛ける形ですね。
ただ、もちろん違う形にすることも可能です。例えば、奥さんがご主人に保険を掛けるとか。
この場合には、契約者:奥様、被保険者:ご主人となります。
生命保険に係る税金を理解する上で最も大切なポイントになるのは、保険料を誰が負担したか、ということです。契約者という表現だと、契約書にサインした人が重要かと思われますが、実は違います。
契約書にサインしたかどうかではなく、実際に保険料を誰が負担していたのかが重要になります。(この点についてはまた後ほど解説していきます。)
被保険者と異なり、契約者は途中で変更することが可能です。
受取人
これはその名前の通り、保険金を受け取る人のことです。
被保険者と異なり、受取人は簡単に変更することができます。受取人はシンプルなのでこれ以上解説することはありません。
以上の3人。
被保険者 → 保険の対象となる人
契約者 → 保険料を負担する人
受取人 → 保険金を受け取る人
と覚えてください。
理解するコツ
先ほどの、3人の組み合わせ方によって、相続税がかかる場合、贈与税がかかる場合、所得税がかかる場合の3パターンが存在します。一見複雑そうに見えるのですが、コツがつかめれば凄く簡単です。
それでは、そのコツをお伝えしていきましょう。
生命保険にかかる税金は、『誰が保険料を負担して、誰が保険金を受け取ったか』だけを考えていれば一発で理解できます!
順を追って解説していきます。
相続税
相続税がかかるのは、ズバリ、このような形です。
契約者:夫
被保険者:夫
受取人:妻
この形は、生前中にご主人が自分自身に生命保険を掛けて保険料を負担し、亡くなった時に、保険金が妻に支給される形です。
つまり自分のお金が、自分が死んでしまったことによって、妻に渡るのと同じなのです。
故人が保険料を負担して、相続人が保険金を受け取る形 → これは相続税の対象になります。
500万×法定相続人の数まで非課税
ちなみに、この契約の場合、生命保険は一定額まで非課税とされています。
その金額は、『500万円×法定相続人の数』という算式で計算します。例えば、父、母、子供2人という家族であれば、父が亡くなった時の相続人は、母と子供2人の合計3人です。
500万×3人なので、1500万円までは生命保険に相続税はかからないことになります
この場合、1500万の保険を、母に500万、子供達にも500万ずつという形でも非課税ですし、母だけに1500万、子供は0円でも非課税です。また母は0円、子供達に750万ずつでもOKです。
なお保険金の特約次第では、非課税にならないものもあるため注意が必要です。詳しくは、こちらの記事をどうぞ。
受取人は配偶者よりも子の方が節税
税金のことだけを考えれば、子供達だけに750万ずつという形の方が有利になる可能性が高いです。
何故かと言えば、夫婦間の相続は元々1億6千万まで無税となる、配偶者の税額軽減という特例があるからです。
また別の論点ですが、生命保険が非課税となるのは、受取人が相続人である場合に限定されています。例えば、孫を受取人としているような保険は、非課税になりませんので注意が必要です。
このあたりの考え方を別の記事にまとめましたので、気になる人は是非ご覧くださいませ↓
贈与税
贈与税がかかるのは、ズバリ、このような形です。
契約者:妻
被保険者:夫
受取人:子
この形は、保険の対象となるのはご主人ですが、保険料を負担するのは妻です。そして、ご主人に万が一のことがあった場合には、保険金は子供に支給されます。
この場合、誰が保険料を負担して、誰が保険金を受け取るか考えてみましょう。
保険料を負担しているのは妻。保険金を受け取ったのは子供です。
先ほどのケースと大きく異なるポイントは、保険金が支給される時に、妻は亡くなっていない点です。亡くなったのはあくまでご主人であり、奥様はまだ元気です。
ご健在である奥様のお金が、子供に渡ることになりますので、これは生前贈与と考えます。従ってこの形の場合には、贈与税が課税されることになるのです。
所得税
所得税がかかるのは、ズバリ、このような形です。
契約者:妻
被保険者:夫
受取人:妻
この形は、保険の対象はご主人で、保険料を負担するのは奥様。そしてご主人に万が一のことがあった場合に、保険金を受け取るのは奥様です。
それでは、また、誰が保険料を負担して、誰が保険金を受け取ったか、考えてみましょう。
今回のケースでは、奥様が保険料を負担して、奥様が保険金を受け取っています。つまり、自分でお金を出して、自分で受け取っているのです。このような場合には、かかる税金は所得税がかかります。
ただ、ここは非常に誤解している人が多いので、強調しますが…
所得税がかかるのは、儲けがでた時だけの話です!
『所得』というのは、言い換えると『儲け』です。所得税というのは儲け税です。
例えば、保険料を1000万円負担していて、受け取る保険金も1000万円だったとします。この場合、儲けはでていますか?
…儲けていませんよね。このような場合には、税金は一切かかりません。自分で出したお金が、そのまま戻ってきただけですから当然です。
所得税がかかるのは、例えば、保険料1000万円だしていて、保険金が1500万円支給されたような場合です。
この場合には、1500万円から1000万円を引いた500万円に対して所得税が課税されます。
ちなみに、保険での儲け部分については、50万を控除していいこととなっています(専門用語でいうと一時所得といいます)。
つまり、儲けが50万以内に収まれば所得税はかからないことになります。
確定申告は保険事故が発生した年
ここでの注意点は、確定申告をするべきタイミングです。生命保険での儲けは、保険事故が発生した年の儲けとして申告しなければいけません。
保険金を実際に受け取った年ではありませんので、気を付けなくてはいけません。
例えば、令和3年12月にご主人が死亡し、奥様へ生命保険が令和4年1月に支給されたとします。この場合、確定申告はあくまでご主人が亡くなった令和3年の所得として申告しなければいけないので、確定申告の期限は令和4年3月15日となります。
実際に支給を受けた日は関係ありませんので要注意です!
非課税
心身に加えられた損害
入院給付金や、高度障害保険金など、心身に加えられた損害につき支払われる保険金は非課税です。
所得税法施行令第30条第1号《非課税とされる保険金、損害賠償金等》に、下記のように規定されています。
生命保険契約に類する共済に係る契約に基づく共済金で、身体の傷害に基因して支払を受けるもの並びに心身に加えられた損害につき支払を受ける慰謝料その他の損害賠償金(その損害に基因して勤務又は業務に従事することができなかつたことによる給与又は収益の補償として受けるものを含む。)
リビングニーズ特約
余命宣告を受けた場合に、死亡保険金の一部または全部を先行して受け取るこのできるリビングニーズ特約。
この特約で受け取った保険金も、先ほどの『心身に加えられた損害につき支払われる保険金』に該当するため、非課税となります。
しかし、余命宣告を受けている本人がリビングニーズ特約で保険金を受け取った場合、ご自身が亡くなってしまうまでに、そのお金を使い切らなければ、余ったお金は相続税の対象になります。
税金のことだけを考えたら、必ずしも有利になるとは限らないですね。リビングニーズ特約のポイントをまとめた記事がありますので、是非ご覧ください。
生命保険契約に関する権利【相続税】
例えば、次のような生命保険契約があったとします。
契約者:父
被保険者:母
受取人:子
この状態で、契約者である父が亡くなったとします。
この場合、被保険者(母)が亡くなったわけではないので、当然、保険金は支払われません。
ただ、契約者が不在となってしまうため、相続人は新しい契約者を話し合い(遺産分割協議)で決めなければいけません。
話し合いの結果、新しい契約者が決まった場合、その新しい契約者に対して相続税が課税されることになります。
保険金が1円もでないのに、なぜ相続税が課税されるのでしょうか?
新しく契約者になった人が、もしも、その保険を解約したとしたら、保険会社は新しい契約者に対して解約返戻金を払わなければいけません。
お金に着目してもらうと、
① 父が保険会社にお金を積み立てていた
② 新しく契約者になった人が解約したい旨を伝える
③ 新しく契約者になった人は、父が積み立てていたお金を受け取ることができる
ある意味、銀行にお金を預けていたのと同じ状態なんですね。
そのことから、相続が発生した時点における解約返戻金を評価額として相続税を計算することになります。
これを、『生命保険契約に関する権利』といいます
税務調査で問題になる生命保険
例えば次のような生命保険契約があったとします。
契約者:子
被保険者:父
受取人:子
この場合、何税がかかるかというと、所得税がかかりますよね。
しかし、契約者は子になっているものの、もしも、本当はこっそりお母さんが保険料を負担していたとしたら?
これは贈与税の対象になります。
先述した通り、生命保険にかかる税金は、契約者が誰であったかよりも、実際に保険料を負担した人は誰か、という点を基準に考えます。
そのため、お母さんが保険料を負担していて、それを子が受け取るならば、それは贈与税の対象になるわけです。
そして、所得税の対象として確定申告をしていても、税務署がそのことを感知したら…
これは所得税ではなく、贈与税の対象になります。追加で税金を払ってください!
と指摘を受けることになります。
こういった、保険契約者と、保険料負担者が異なる生命保険を名義保険といい、税務調査の現場で非常によく問題になります。気を付けましょう!
法人契約の生命保険に節税効果なし
会社で生命保険に加入すると、保険料が経費になるので節税になりますか?
と、いう話を聞いたことがある人もいると思いますが…実は、この話は完全なる嘘です。
「節税」とは税金が減ることを意味しますよね?
会社で生命保険に加入すると、法人税が減るのではなく、払うタイミングを先送りにする効果があるだけです。
そのメカニズムについて詳しく解説しましたので、もし興味ある方はご覧ください!
まとめ
保険に係る税制は、誰が保険料を負担して、誰が保険金を受け取ったかだけをチェックしていただくと意外と理解しやすいと思います。
故人が保険料を負担して、相続人などが保険金を受け取るのであれば相続税。
健在の方が保険料を負担して、別の人が保険金を受け取るのであれば贈与税。
自分で保険料を負担して、自分で保険金を受け取るのであれば所得税。(儲けがでた時だけ)
相続税は500万×法定相続人の数まで非課税ですが、相続税対策として加入されるのであれば、受取人は配偶者より子供達に変更してあげましょう。
また、生命保険は亡くなった後にすぐにキャッシュにできる安心感があります。相続が起きた場合、預金口座は凍結されてしまい、相続人全員の印鑑がないと預金を引き出すことができなくなります。生命保険であれば、その辺りはしっかりフォローできます。
保険を活用した相続税対策も、弊社は得意としていますので、ご相談や質問をしたい方は、是非お気軽にご連絡いただければと思います!北海道から沖縄まで対応しております♪
生命保険Q&A
新しい契約者が亡くなった場合の税金は?
契約者:父、被保険者:母、受取人:子の生命保険契約があり、父(契約者)が亡くなった場合、新しい契約者に相続税が課税されることは分かりました。
しかしその後、母(被保険者)が亡くなった場合、税金はかかりますか?
A.新しい契約者に相続税が課税されると、父(契約者)が負担した保険料も、新しい契約者が自ら保険料を負担したものとするというルールがあります。
保険に係る税制は、誰が保険料を負担して、誰が保険金を受け取ったかだけをチェックします。
(被保険者:母)
新契約者が母の場合 → 保険料負担者:母、保険金受取人:子となり、相続税が課税されます。
新契約者が子の場合 → 保険料負担者:子、保険金受取人:子となり、所得税が課税されるということになります。