遺産分割協議が成立した後に、『やはり遺産分割協議のやり直しをしたい』と申し出がある場合があります。
その理由は様々…
・遺産の一部を隠蔽されていた
・何も理解せずハンコを押したが、後々調べてみると、兄弟の良いようにされていた
・生前贈与を不平等に行われていることを知った
など。
結論からいうと、遺産分割協議のやり直しは可能です。しかし、思わぬ税金が発生したり、面倒な手続きが増加します。
また、知らないうちに不平等な生前贈与が行われていた場合で不平等の解消を望むときは、遺産分割協議において、その旨を主張し、公平な遺産分割を実現する必要があります。
ここでは、遺産分割協議をやり直す場合の注意点と公平な遺産分割を行う場合の注意点について、徹底解説します!
一分で要点解説をした動画もありますので、是非↓
円満相続税理士法人 税理士
大学在学中に税理士を目指し、25歳で官報合格。大手税理士法人山田&パートナーズに入社し、年間30~40件の相続税申告に携わりました。丸6年間の実務経験を経て退社。地元関西に戻り、円満相続税理士法人に入社しました。現在も相続税申告を中心に業務に励んでいます!
遺産分割のやり直しは可能か?
相続人全員が参加し、承認をした(署名・押印をした)遺産分割協議は、原則、やり直すことはできません。
ただし、次のような場合には、やり直しが認められています。
相続人全員が遺産分割協議のやり直しに賛成している場合
これは、遺産分割協議の解除といわれ、白紙の状態に戻ります。
法的に遺産分割協議が無効または取り消しになった場合
【無効】
無効となる場合は下記のような事由がある場合です。
・相続人の一部が参加していなかった
・相続人でない人が参加していた
・民法上の法律行為の無効に当たる
無効となった場合、法律行為の効力が初めから生じていなかったことになります。
【取消し】
取消しとなる場合は、次のような事由がある場合です。
・他の相続人や第三者から騙されていた、脅されていた、勘違いをしていた
・財産を隠されていた
・生前贈与が発覚した
取消しは、一旦生じた法律行為の効力を、初めに遡ってなかったことにすることをいいます。
そのため、取消しうる行為は、取り消すまでは有効です。
遺産分割協議のやり直しにより生じる課税
合意による遺産分割協議のやり直し
遺産分割のやり直しは可能ですが、安易にそれを行うと、思わぬ税負担が重く生じることがあります。
当初の遺産分割協議に法的な不備がなく、有効であった場合、相続人全員の合意により遺産分割協議をやり直す場合には、贈与税又は所得税が課税される恐れがあります。
特に、その遺産分割協議を基に、相続税の申告を行っている、各種名義変更を行っている場合には、当初の遺産分割協議が成立していることを意味するため、その後のやり直しは、相続人間での贈与や譲渡と解され、相続税とは別に、新たな課税関係が生じることになります。
法的に無効又は取消しとなった遺産分割協議のやり直し
この場合は、遺産分割協議が初めからなかったものとされますので、贈与税や所得税が生じることはありません。相続を原因とした財産の移転と解されるためです。
遺産分割協議やり直しの対象が不動産だった場合
遺産分割協議のやり直しにより、不動産の所有者が変更になった場合には、登記変更が必要となるため、登録免許税など、追加で費用が生じることになります。
生前贈与は争いの種
遺産分割協議を行うにあったて、問題となりやすいのが、生前贈与です。
特別受益という言葉を聞いた方も多いのではないでしょうか?
特別受益とは、相続人の中に、被相続人からの生前贈与等によって、特別の利益を受けた場合のその利益のことをいいます。
被相続人から生前に受けた贈与の全てがこの『特別受益』にあたるのかというとそうではありません。
特別受益となる生前贈与は、『生計の資本となる贈与』及び『親族間の扶養的金銭援助を超えるもの』とされています。
遺産分割協議に際して、この特別受益を考慮するかしないかという論点が浮上しますが、特に調停や裁判の場面では、主張する側が立証する責任を負います。相手方に『そんな贈与なんて知らない』と言われてしまえば、認められない可能性が高いので、慎重に立証できる材料の収集を行いましょう。
特別受益については、こちらで詳しく解説をしています♪
専門家に相談を
遺産分割のやり直しや、特別受益の持ち戻しは専門性が高く、特に係争しているような場合には相手側との入念な交渉も必要となります。
特に揉めている相続人間で代理人となって話し合いができるのは、弁護士だけというルールもあるので、弁護士さんに相談されることをお勧めします。
各専門家の得意領域と、危険な専門家の特徴はこちらで詳しく解説をしています♪