相続財産(故人の遺産)を受け継ぐ相続人がいない場合、特別縁故者に該当する人は相続財産の全部または一部を受け取る権利があります。

特別縁故者とは、生前に故人と一定の親密な関係にあった人ですが、特別縁故者として認められるためには、家庭裁判所に申立てをしなければなりません。

そこで今回は、特別縁故者が相続財産を受け取るための手続きの流れを解説します。

相続財産管理人を選任するための申立てをする

特別縁故者が相続財産を受け取るための準備として、まずは裁判所に「相続財産管理人選任の申立て」をします。

相続財産管理人選任の申立ては、故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。

相続財産管理人とは、相続財産の管理を任務とする人のことです。

故人が亡くなって遺産(相続財産)がのこされた場合、通常は相続人が遺産を管理します。

しかし、故人に身寄りがなく相続人がいない場合は、遺産を管理する人が存在しません。

そこで裁判所に申立てをして、相続財産管理人を選任してもらう必要があるのです。

相続財産管理人は預金や不動産などの相続財産を管理するほか、どのような相続財産があるかを調査したり、必要に応じて相続財産を換価したりします。

家庭裁判所が相続財産管理人を選んで官報に掲載する

相続財産管理人選任の申立てが受理されると、家庭裁判所が相続財産管理人を選任します。

誰を相続財産管理人にするかは家庭裁判所が決めますが、通常はその地域の弁護士など、法律の専門家が選ばれます。

家庭裁判所が相続財産管理人を選任すると、相続財産管理人が選任されたことが官報に掲載されます。

官報とは国が発行する機関紙です。新しく制定された法律や、裁判所の手続きに関する情報などが記載されています。

特別縁故者が相続財産を受け取るための手続きをする場合も、関連する情報が官報に掲載されます。

相続財産管理人が選任されたことは、官報に2ヶ月間掲載されます。

相続財産管理人の選任が官報に掲載される理由は、故人の相続財産についての裁判の手続きが開始されたことを、広く世の中に通知するためです。

一般の人が官報を閲覧することは実際にはあまりありませんが、官報に掲載することで、相続財産管理人が選任されたことを世間に知らせる手続きが行われたことになります。

家庭裁判所が債権者や受遺者を確認する

相続財産管理人が選任されたことが官報に掲載されてから2ヶ月が経過した後は、家庭裁判所が故人の債権者や受遺者がいるかどうかを確認します。

債権者とは簡単にいえば、生前に故人にお金を貸していた人のことです。

たとえば、故人が生前にA銀行から1000万円を借りていた場合、A銀行は故人の債権者にあたります。

受遺者とは、故人の遺贈(遺言によって他人に財産を譲り渡すこと)によって財産を受け取る人のことです。

たとえば、故人が遺言書に「お世話になった知人Bに100万円を遺贈する」と記載していた場合、知人Aは受遺者にあたります。

債権者や受遺者は故人の遺産から支払いを受ける権利があるので、家庭裁判所が債権者や受遺者の有無を確認するのです。

家庭裁判所は債権者や受遺者がいる場合は申し出るように、官報に記載します(公告といいます)。

公告は官報に2ヶ月間掲載され、もしその間に債権者や受遺者が現れた場合は、相続財産管理人によって財産の清算が行われます。

特別縁故者が財産を受け取れる可能性があるのは、債権者や受遺者に精算をした後の残りの金額についてです(ただし、残りの金額全額を特別縁故者が受け取れるとは限りません)。

たとえば、相続財産の合計が1000万円であり、故人に600万円のお金を貸していた債権者が現れた場合、相続財産管理人によって債権者に600万円が支払われ、相続財産の残りは400万円になります。

特別縁故者が財産を受け取れる可能性があるのは、残り400万円の範囲内です。

もし、債権者や受遺者に精算をすることで相続財産がなくなってしまった場合は、特別縁故者は財産を受け取ることができません。

たとえば、相続財産の合計が1000万円であり、債権者に400万円が支払われて受遺者に600万円が支払われた場合、相続財産が全てなくなってしまうので、特別縁故者は財産を受け取れなくなります。

相続人の捜索が行われる

債権者・受遺者への公告が行われた後は、家庭裁判所によって相続人の捜索が行われます。

相続人の捜索とは、故人の相続人が本当に存在しないかどうかを確定するための手続きです。

相続人の捜索は公告によって行われ、6ヶ月以上の期間が設定されて官報に掲載されます。

たとえば、相続人の公告が7ヶ月とされた場合、相続人の捜索に関する情報が7ヶ月の間官報に掲載されるということです。

もし捜索の間に相続人が見つかり、その相続人が故人の遺産を相続することになった場合、特別縁故者は故人の財産を受け取れなくなります。

特別縁故者が故人の遺産から財産を受け取ることができるのは、あくまで故人の遺産を相続する人がいない場合に限られるからです。

裁判所に申立てをしてから少なくとも10ヶ月はかかる

特別縁故者が故人の相続財産を取得するには、最初に相続財産管理人選任の申立てをしなければなりませんが、申立てをしてから相続財産を取得できるようになるには、少なくとも10ヶ月はかかります。

まず、相続財産管理人選任の申立てをしてから相続財産管理人が選任されるまでには、一般に2ヶ月程度かかります。

次に、家庭裁判所によって債権者・受遺者への公告が行われますが、これは2ヶ月間官報に掲載され、その間は手続きは進みません。

最後に、家庭裁判所による相続人の捜索が行われますが、これは少なくとも6ヶ月間は官報に掲載され、その間は手続きは進行しません。

よって、特別縁故者が申立てをした後は、少なくとも10ヶ月程度は手続きが進むのを待たなければならないということです。

特別縁故者に対する相続財産分与の申立てをする

家庭裁判所が指定した期間のあいだに相続人が現れなかった場合は、故人の相続財産について相続人がいないことが確定します。

この段階になってはじめて、特別縁故者として財産分与の申立てができるようになります。

特別縁故者の財産分与の申立ては、故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。

申立ての際には、以下のような書類等が必要です。

  • 申立書
  • 財産目録
  • 申立人の住民票または戸籍附票
  • 収入印紙800円分
  • 連絡用の郵便切手

申立書は書式が決まっており、裁判所のホームページからダウンロードすることが可能です。

申立書には申立人の氏名や住所・故人の氏名や最後の住所・申立の理由などを記入します。

また、申立書の別紙として財産目録があります。財産目録には故人の相続財産である土地・建物・預金などの情報を記入します。

申立てに必要な添付書類は、一般に申立人の住民票や戸籍附票ですが、状況によっては別の書類を裁判所から求められる場合があります。

特別縁故者の財産分与の申立ては、相続人の捜索期間が終わってから3ヶ月以内にしなければならないので、捜索期間が終わったら早めに申立てをしましょう。

特別縁故者に該当するかを家庭裁判所が判断する

特別縁故者の財産分与の申立てが受理されると、特別縁故者に該当するかどうかを、家庭裁判所の裁判官が審判として判断します。

審判とは、提出された資料や調査の結果などに基づいて、裁判官が申立てを認めるかどうかを判断する手続きです。

特別縁故者に該当する要件は民法に規定されており、以下のいずれかに該当する必要があります。

  • 故人と生計を同じくしていた人
  • 故人の療養看護に努めていた人
  • その他故人と特別な縁故があった人

特別縁故者に該当するかどうかは、様々な要素が考慮されたうえで、個別具体的に判断されます。

特別縁故者に該当する要件について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

特別縁故者に認定される

審判の結果、特別縁故者に認定された場合は、故人の相続財産の全部または一部を受け取ることができます。

相続財産の中からどのくらいの財産を受け取れるかは、様々な事情を考慮したうえで家庭裁判所が決めます。

特別縁故者として認定されなかった場合、申立人は相続財産を受け取ることはできず、相続財産は最終的に国庫に帰属(国のものになること)します。

まとめ

特別縁故者として認められるためには、家庭裁判所に申立てをして手続きをしなければなりません。

まず、家庭裁判所に対して「相続財産管理人選任の申立て」をして、相続財産管理人を選んでもらいます。

相続財産管理人が選任されたら、債権者・受遺者への公告や、相続人の捜索などの手続きが行われます。

相続人の捜索の結果、相続人が見つからなかった場合は、「特別縁故者に対する相続財産分与の申立て」が可能です。

申立てによる審判の結果、特別縁故者として認められた場合は、相続財産の全部または一部を受け取ることができます。

最初の申立てから特別縁故者として認められるまでには、少なくとも10ヶ月以上の長い手続きが必要です。

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