こんにちは。税理士の松永陽子です。
子供の将来のことを心配し、親がひそかに子供を契約者・受取人として個人年金に加入し、その保険料を支払ってくれていることがあります。
そしてそのことを後になって子供が知り、私たちのもとに相談に来られます。
贈与になるとは思うけど、贈与税の申告はしていなかった…
税務調査になる?
いつ申告をしたらいいの?
金額が多額であればあるほど不安になりますよね。
ですが実はこの場合、親が払ってくれた時点で贈与税の申告をする必要はありません!
こちらをお読みいただければ、申告をしていなかった…どうしよう…という不安が払しょくされることと思います♪
円満相続税理士法人 税理士
座右の銘は『意志あるところに道は開ける』。三人の子育てと税理士事務所 勤務、受験勉強を両立させ、官報合格しました。親族の相続の経験から、 相続人の方に寄り添える税理士でありたいと思っております。 詳しいプロフィールはこちら!
贈与税が課税されるのは受給開始時
親が子供に代わって保険料を払ってくれていた個人年金は、いわゆる「名義保険」に該当します。
名義保険についてはこちらのブログをご参照ください。
≫生命保険に係る税金を税理士が日本一わかりやすく解説しました
この個人年金は子供が自分で支払っていた保険料を起因として受け取るものではないため、親から子供への贈与が行われたということになります。
では親が存命の場合、いつ贈与が成立することになるのでしょうか?
それは、なんと…
個人年金の受給開始時なのです!
なぜ受給開始時に贈与が成立?
ここまでお読みいただいて、
なぜ保険料を支払ったときではないの?
と疑問に思われる方も多いことかと思います。
以下でご説明いたしましょう。
個人年金の課税関係
個人年金保険契約に基づき支払いを受ける年金の課税関係は、保険料の負担者および年金の受取人が誰であるかにより課税関係が変わります。
保険料の負担者=年金の受取人の場合
公的年金等以外の雑所得として所得税が課税される
保険料の負担者≠年金の受取人の場合
保険料負担者から年金の受取人に対して年金を受け取る権利が贈与されたものとみなされ、贈与税が課税される
保険料の負担者≠年金の受取人の場合
今回取り上げているのは『保険料の負担者≠年金の受取人』の場合の個人年金ですね。
したがって保険料という金銭が贈与されたのではなく、年金を受け取る権利(年金受給権)が贈与されたものとみなされます。
そしてこの年金を受け取る権利は、受給開始年齢に達するなどの給付事由が発生して初めて成立するため、その時に贈与税が課税されることになるのです。
保険料の負担者≠年金の受取人の具体例
過去に親がまとまった額の保険料を支払っていたとしても、その時点ではまだ贈与は成立していないため、贈与税申告の必要はなかったということですね。
具体例で考えてみましょう。
×1年~×10年 1年間に支払う保険料は30万円
×11年 一括で300万円支払
×30年 受給開始
この場合、×1年~×10年は年間110万円以下の支払ですが、×11年の300万円の支払は基礎控除額の110万円を超えています。しかし贈与が成立するのは×30年の受給開始時であるため、基礎控除額を超える保険料を支払っていても、×11年時点では贈与税の申告は不要であったということになります。
年金受給権の評価方法
贈与税の申告をする際の年金受給権の評価方法は、以下のとおりです。
(有期定期金)
次に掲げる金額のうちいずれか多い金額
①解約返戻金の金額
②一時金の給付を受けることができる場合の一時金の金額
③給付を受けるべき金額の1年当たりの平均額×残存期間※1(1年未満切上)に応ずる予定利率による複利年金現価率
(終身定期金)
次に掲げる金額のうちいずれか多い金額
①解約返戻金の金額
②一時金の給付を受けることができる場合の一時金の金額
③給付を受けるべき金額の1年当たりの平均額×目的とされた者の余命年数※2に応ずる予定利率による複利年金現価率
上記の①解約返戻金の金額②一時金の金額③予定利率は、契約者本人が保険会社に問い合わせれば教えてもらえます。お手元に保険証券を用意して問い合わせてみましょう。
※1 残存期間:受給開始から最終支給日までの期間
※2 余命年数:厚生労働省作成の完全生命表記載の平均余命(1年未満切捨)による(満年齢で判定)
まとめ
いかがでしたか?
親が保険料を払ってくれていた個人年金は、保険料支払時ではなく年金受給開始時に贈与が成立するため、その翌年2/1~3/15の間に贈与税の申告が必要になります。
なお支払いを受ける年金については、毎年所得税の確定申告をする必要があります。所得税は年金の支給初年度については全額非課税になりますが、2年目以降は課税部分に応じて必要経費額を算出し、その額を課税部分の金額から差し引いて所得を求め、雑所得として申告することになっています。こちらはかなり複雑な算式になっています。
No.1620 相続等により取得した年金受給権に係る生命保険契約等に基づく年金の課税関係
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1620.htm
私たち円満相続税理士法人では、「こんなとき申告はどうしたらいいの?」というご相談もお受けしております。お気軽にお問い合わせくださいませ。
以上ご参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました♪