配偶者居住権 節税 若い

こんにちは。税理士の松永陽子です。

夫婦に年齢の差があったり、年齢差がなくても夫婦の一方が比較的若いうちに亡くなられたりすると、残された配偶者の年齢もまだ若い場合があります。

このような場合、配偶者居住権の計算はどのようになるのでしょうか。


また、不動産を売却する必要が出てくるなど、途中で配偶者居住権を消滅させたいと考えるようになった場合はどのようなことになるのでしょうか。考察してみたいと思います。

配偶者居住権の計算方法(基本)

配偶者居住権及び建物の敷地を利用する権利(敷地利用権)は、一般的には以下のように計算します(所有者は被相続人である夫のみで、妻は75歳の場合)。

【前提】
① 建物の時価(相続税評価額) 2,000万円
② 土地(建物の敷地)の時価(相続税評価額)5,000万円
③ 配偶者(妻)の年齢 75歳(平均余命16年)
④ 建物の耐用年数(木造22年) 22年×1.5=33年
⑤ 経過年数 10年
⑥ 配偶者居住権 終身(存続年数=平均余命16年)
⑦ 複利原価率(3%) 16年→0.623

【計算】

(配偶者居住権の価額)
①2,000万円-①2,000万円×(④33年-⑤10年-⑥16年)/(④33年-⑤10年)×⑦0.623=1,620万円              
(敷地利用権の価額)
②5,000万円-②5,000万円×⑦0.623=1,885万円 

なお、建物のもともとの耐用年数(ここでは非業務用資産であるため1.5倍しています)から経過した年数を差し引いたもの(④-⑤)を残存耐用年数といいます。

配偶者の年齢が若い場合の留意点

配偶者居住権の存続年数が家屋の残存耐用年数を超えることも

ところが配偶者の年齢が若い場合は、計算上、建物の残存耐用年数よりも配偶者居住権の存続年数の方が長くなることも考えられます。


【前提】
① 建物の時価(相続税評価額) 2,000万円
② 土地(建物の敷地)の時価(相続税評価額)5,000万円
③ 配偶者(妻)の年齢 60歳(平均余命29年)
④ 建物の耐用年数(木造22年) 22年×1.5=33年
⑤ 経過年数 10年
⑥ 配偶者居住権 終身(存続年数=平均余命29年)
⑦ 複利原価率(3%) 29年→0.424


【計算】

(配偶者居住権の価額)
2,000万円-2,000万円×(33年-10年-29年)/(33年-10年)×0.424=2,221万円??

かえって高くなってるやん!

と、このようにマーカーを引いた分数部分がマイナスになってしまいますと、配偶者居住権の価額が時価よりも大きくなってしまい、計算がおかしくなってしまいますよね。


このようなときは分数部分をゼロとして計算します。

2,000万円-2,000万円×(0年)×0.424=2,000万円

つまり、配偶者居住権の価額=建物の時価ということになります。

なお、敷地利用権の計算方法は変わりません。

(敷地利用権の価額)
5,000万円-5,000万円×0.424=2,120万円

なお、弊社では相続税申告の際、配偶者居住権の設定についてもご希望に応じてシミュレーションを行っております。お気軽にご相談くださいませ♪

≫相続税申告

配偶者居住権を放棄し、所有者から金銭を取得しない場合は贈与になる

配偶者居住権が設定されている家屋は売却が困難です。そのため、売却を希望する場合は配偶者居住権を配偶者に放棄してもらう等、消滅させることが必要になります。

ただし、配偶者が配偶者居住権を放棄しても、所有者から全く金銭を取得しない場合には、所有者に対する贈与になります(相続税法基本通達9-13の2)

出典:国税庁ホームページ 第9条《その他の利益の享受》関係

この場合、贈与税の対象となる金額はどうなるのでしょうか?
上記の例の60歳で配偶者居住権を設定した方が、15年後に75歳で贈与する場合で考えます。


【前提】
① 建物の贈与時の時価(相続税評価額) 1,500万円
② 土地(建物の敷地)の贈与時の時価(相続税評価額)5,000万円
③ 配偶者(妻)の年齢 75歳(平均余命16年)
④ 建物の耐用年数(木造22年) 22年×1.5=33年
⑤ 経過年数 25年
⑥ 配偶者居住権 終身(存続年数=平均余命16年)
⑦ 複利原価率(3%) 16年→0.623


【計算】

(配偶者居住権の価額)
1,500万円-1,500万円×(33年-25年-16年)/(33年-25年)×0.623=1,500万円
(敷地利用権の価額)
5,000万円-5,000万円×0.623=1,885万円

こちらもやはり残存耐用年数よりも存続年数の方が長くなってしまいますので、配偶者居住権の価額=建物の時価ということになりますね。


つまり1,500万円+1,885万円=3,385万円が贈与税の対象となります。

なお、配偶者居住権を放棄し、建物所有者から金銭を取得する場合は譲渡所得となります。

認知症になると配偶者居住権を消滅させることができない


配偶者が若いうちに配偶者居住権を設定する場合、存続期間が長くなるため、どうしても途中で状況が変化することもあるでしょう。


例えば賃貸をして収入を得る必要が出てきた場合には、所有者の許可があれば可能です。また老人ホームに入ることになった場合は、配偶者居住権は消滅せず、存続することになります。

また、認知症になると配偶者居住権を合意により消滅させることができなくなることにも注意が必要です。

まとめ

残された配偶者の年齢が若い場合、配偶者居住権は建物の時価に近くなるか、場合によっては時価と同額になります。また、敷地利用権の価額も若ければ若いほど大きくなります。

そのためお亡くなりになるまで、または存続期間満了まで持っているのであれば、節税効果は大きいと言えます。

ただし、余命年数が長い分、終身の場合は存続年数が長期間になってしまうため、途中で状況が変わることや認知症になるリスクがあること、また、配偶者居住権を存続期間の途中で消滅させる場合には贈与税や所得税の負担が必要になることも考慮しつつ、設定するかどうかを検討するといいでしょう。

参考資料

出典:国税庁 配偶者居住権等の評価明細書 記載方法等

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