同族会社株式の買い取り

相続した同族会社の株式を買い取ってほしいと弟から言われました。どうしたらいいでしょうか?

こんにちは、円満相続税理士法人の中岡です!

例えば、親から引き継いだ会社の株式を兄弟で50%ずつ持っている場合、社長を継いだ兄が、会社の経営に関与していない弟から、株式を買い取ってと言われたら、どうしたらよいでしょうか?

そもそも買い取るべきかという問題がありますし、買い取るとしても、誰がいくらで買い取るべきかという問題もあります。

課税関係を理解したうえで、売買をしないと思わぬ税金を支払うことになってしまいます。

今回は、同族会社の株式を買い取ってと言われたら、どうするべきか、課税関係も踏まえ、詳しく解説していきます。

最後までお読みいただければ、同族会社の株式の売買について分かるようになりますよ♪

同族会社の株式はそもそも買い取るべきか?

オーナー社長が、他の株主から株式を買い取ってほしいと言われても、買い取る義務はありません

ですので、そもそも買い取るべきかについて考える必要があります。

このとき、主に以下のような観点から検討されるのが良いのではないでしょうか。

家族の関係性

株式の所有割合

今後の事業承継の予定

家族の関係性

買い取ってほしいと言ってきた方との関係性です。

当たり前のことですが、金銭的な事情や断ったときの今後の付き合いなど、家族の置かれている状況を総合的に考えるべきです。

株式の所有割合

株主は株式の所有割合に応じて、様々な権利を持っています。

≫株主の権利について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。

現在の所有割合と買い取った後の所有割合を比較して、買い取るメリットがあるか検討してください。

また、買い取りを断った場合に、買い取ってほしいと言ってきた方が、どのような権利を行使することができるのか、確認しておくことも重要です。

今後の事業承継の予定

同族会社の株式を親族内で複数の方が持っていると、世代交代が進んだときに、さらに株式が分散してしまう可能性があります。

例えば、最初は兄弟姉妹同士で持ち合っていたものが、時間が経つと、おじ・おば・おい・めいの関係になったり、いとこ同士になったりしてしまいます。

今後も会社を継続させ、子供たちに承継させていきたいという考えがあるなら、買い取って株式を集約しておくことも良いでしょう。

同族会社の株式はいくらで買い取るべきか?

同族会社の株式はいくらで買い取ったらいいですか?

納得のいく金額でということですが、課税関係を理解したうえで決めましょう。

もちろん、双方の話し合いで決めた金額で、ということですが、全くの第三者とは異なり、親族間では金額にある程度融通を利かせることができます。

そのため、時価よりも低い金額で売買をした際に、課税関係が生じるような仕組みになっています。

この課税関係については、後ほど詳しく説明しますが、理解したうえで金額を決めないと思わぬ税金の支払いが発生することになります。

時価とは?

国税庁が示している財産評価基本通達において、時価は、「不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額」とされています。

従って、自由な取引環境で、全くの第三者との間で成立した金額なら、まさに時価と認められます。

逆に言えば、親族間での売買で成立した金額は、時価とは認められないのです。

親族間の売買において時価と認められるのは、基本的には、財産評価基本通達に基づいて計算した金額ということになります。

≫非上場株式の時価について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。

同族会社の株式は誰が買い取るべきか?

買い取ってあげたいですが、資金がありません。。。

会社が買い取るという方法もありますよ。

オーナー社長が個人で買い取る方法のほか、会社が買い取る方法もあります。

会社から見ると、自己株式の取得になります。

≫自社株買い(自己株式の取得)について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。

個人が買い取るか会社が買い取るかで課税関係が大きく変わりますので、よく検討したうえで決めてください。

課税関係について、以下で詳しく説明していきます。

私たち、円満相続税理士法人では、非上場株式の売買に関するアドバイスを行っていますので、こちらもご覧ください。

≫単発相談プラン

個人が同族会社の株式を買い取る場合の課税関係

買取側

買い取る側については、時価以上の金額で買い取れば、課税関係は生じませんが、時価より著しく低い金額で買い取れば、時価との差額について贈与されたものとみなされ、贈与税が課税されます。

このときの時価は、相続税評価額を指します。

第三者との売買では、その金額こそが時価ですが、親族間の売買では、その金額は時価と認められず、税務上決められたルールに従って計算した金額(相続税評価額)を時価とします。

≫非上場株式の相続税評価額について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。

売却側

売却する側については、売った金額と取得したときの金額(出資した金額)との差額に、譲渡所得税が課税(20%)されます。

こちらは、第三者に売った時と変わりません。

会社が同族会社の株式を買い取る場合の課税関係

買取側(会社)

買い取る会社から見れば、自己株式の取得になります。

自己株式の取得は、利益を生む取引ではなく、資本取引なので、課税関係は生じません。

なお、少数ではありますが、時価より低い金額で買い取った場合に、受贈益課税されるという見解もあります。

会社の株主

売買に関係のない株主にも課税されるんですか?

贈与税が課税される場合があります。

会社が時価より著しく低い金額で買ったことにより、その他の株主が持っている株式の価値が増加した場合、その増加した部分について、売却した者からその他の株主に対して贈与があったものとみなされて、贈与税が課税されます。

売却側

売却する側については、個人に売るときと同じと思いきや、大きな違いがあります。

それが、みなし配当課税みなし譲渡課税です。

みなし配当課税

みなし配当課税とは、発行会社に株式を売却した場合に、会社の資本金に相当する部分以外は、利益積立金の分配、つまり配当とみなして課税しましょうというものです。

資本金に相当する部分は、通常どおり、譲渡所得課税(20%)です。

これ以外の部分は、配当所得として計算されます。

そして、恐ろしいのが、非上場会社の配当所得は給与所得などと同じく総合課税となり、最高55%の税率になります。

≫みなし配当課税について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。

なお、相続で取得した株式申告期限から3年以内に売却した場合には、みなし配当課税はされないという特例がありますので、該当する方は、忘れずにこの特例を使いましょう。

≫みなし配当の特例について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。

みなし譲渡課税

みなし譲渡課税とは、個人が法人に時価の2分の1未満で売却した場合に、時価で売却したとみなして譲渡所得税が課税されるというものです。

この時の時価は、相続税評価額に修正を加えたもの(所得税法上の時価)を使っていきます。

≫非上場株式の所得税法上の時価について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。

まとめ

今回は、同族会社の株式を買い取ってと言われたらどうするべきかについて、解説しました。

買い取る際の課税関係はかなり複雑で、特に時価と認められない金額で売買した場合には、注意が必要です。

同族会社の株式を買い取ってと言われたら、相続に強い税理士に相談してみることをオススメします!

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最後までお読みいただきありがとうございました!

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