無議決権株式の活用

こんにちは、円満相続税理士法人の中岡です!

株主総会で議決権を行使するというのは、会社の意思決定をする株主の重要な権利ですが、この議決権に制限が加えられた株式を発行することができます。

議決権に制限が加えられた株式のことを議決権制限株式といいます。

そして、100%制限された、つまり全く議決権を行使できない株式を、無議決権株式といいます。

今回は、無議決権株式(と議決権制限株式)について、相続税にどのように関係するのか、詳しく解説していきます。

最後までお読みいただければ、無議決権株式の活用について分かるようになりますよ♪

無議決権株式とは?

改めて、無議決権株式とは、株主総会で一切議決権を行使できない株式のことです。

そんな株式って認められるの?

会社法で認められた種類株式の1種です!

会社法では、一定の事項について、異なる定めを設けた種類の異なる株式を発行することを認めています。

この株式のことを種類株式といいます。

種類株式の1種

種類株式で異なる定めるをすることができる一定の事項には、「株主総会において議決権を行使することができる事項」が含まれている(会社法108条1項3号)ため、議決権制限株式を発行することができます。

そして、一切の事項を制限した議決権制限株式が、無議決権株式です。

無議決権株式の活用事例

無議決権株式なんて役に立つの?

事業承継や相続の場面でも活躍しますよ!

もちろん関係者の理解は必要ですが、無議決権株式を活用できる場面をご紹介します。

事業承継の場面

社長である親が会社の株式をすべて(100株)持っており、社長を子供に譲るが、実質的な支配権は残しておきたい場合、100株のうち、99株を無議決権株式にします。

そして、普通株式1株を手許に残したまま、無議決権株式99株を子供に譲ります。

そうすると、会社の所有権は99%子供に移りますが、会社の最高意思決定機関である株主総会は、議決権のある株式を持つ親が一人で決議することができます。

相続の場面

社長である親が会社の株式をすべて(300株)持っています。子供が3人おり、そのうち、1人は後継者で、2人は会社の経営に一切関与しておらず、今後も関与する予定はないが、バランスよく財産を残してあげたい場合、300株のうち、200株を無議決権株式にします。

そして、普通株式100株は、後継者に相続させ、無議決権株式はそれぞれ100株ずつ、経営に関与しない子供2人に相続させます。

そうすると、株主総会は議決権のある株式を持つ後継者が一人で決議することができますが、ほかの2人の子供にも、配当金を受け取る権利などを相続させることができます。

新たな出資を受ける場面

会社がビジネスを広げるために、出資を受けたいが、新しく株主となる方には会社の意思決定に関与してほしくない場合、無議決権株式を発行できるようにします。

そして、新たに出資をしてくれた方には、無議決権株式を発行します。

そうすると、株主総会は議決権のある株式を持つこれまでの株主たちで決議することができます。

私たち、円満相続税理士法人では、無議決権株式の活用に関するご相談を行っていますので、こちらもご覧ください。

≫単発相談プラン

無議決権株式のメリット・デメリット

メリット

メリットは、活用事例のとおり、議決権を渡したくないが株式は渡したいという場合に活用できるということです。

株主側から見ても、議決権はいらないけど、配当金は多くほしいなどのニーズに応えることができます。

デメリット

デメリットは、発行に手間がかかるということと、そのあとの管理にも手間がかかるということです。

また、種類株式を持つ株主だけの種類株主総会の決議が必要となる場面もありますので、注意が必要です。

無議決権株式の発行の方法

続いて、無議決権株式を発行する方法について、解説していきます。

手続きは次の4つです。

1.定款を変更する

2.無議決権株式発行会社であることを登記する

3.新しく無議決権株式を発行する/普通株式を無議決権株式に転換する

4.発行済株式数などの登記を変更する

定款を変更する

まずは、無議決権株式(種類株式)を発行できるように定款を変更する必要があります。

この種類株式は、一切議決権を有しないことや発行できる株式総数を定款で定めます。

定款を変更するには、株主総会の特別決議が必要となります。

特別決議とは、議決権の行使できる株主の過半数の株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成で決議するもので、定款の変更は会社にとって重要事項ですので、要件が厳しくなっています。

新しく無議決権株式を発行する

新株を発行する場合、非公開会社(株式の全部に譲渡制限が付されている会社)では、株主総会の特別決議が必要となります。

普通株式を無議決権株式に転換する

既に発行済みの普通株式の一部を種類株式に転換する場合は、普通株式を持つ株主全員の同意が必要となります。

ただし、単に普通株式の一部を無議決権化するだけのように、普通株主にとどまる者が一切の不利益を被らない場合は、その者の同意は不要と考えられます。

無議決権株式をやめる方法

無議決権株式をやめたいと思ったときはやめれるの?

手続きを踏む必要がありますが、やめることはできます!

無議決権株式をやめる方法について、①無議決権株式から他の種類株式に変更する方法と②無議決権株式を普通株式に変更する方法を解説していきます。

他の種類株式に変更する方法

無議決権株式から他の種類株式に変更するということは、種類株式の内容を変更するということに該当します。

種類株式の内容を定めているのは、定款ですので、定款の変更が必要になります。

つまり、必要な手続きは以下の2つ+登記事項の変更です。

1.定款を変更する

2.種類株式総会で決議する

定款を変更する

既に述べたとおり、定款を変更するには、株主総会の特別決議が必要となります。

種類株式総会で決議する

種類株式総会とは、その種類株式を持つ株主だけの総会です。

今回の場合ですと、無議決権株式を持つ株主だけで決議します。

議決権はないのでは?と思うかもしれませんが、議決権が制限されているのはあくまでも株主総会であり、種類株主総会の議決権は制限されていません。

そして、株式の内容を変更する種類株主総会の決議は、定款によっても省略することができません。(会社法第322条第1項第1号、第2項、第3項)

さらに、この決議には、特別決議が必要です。(会社法第324条第2項第4号)

なお、無議決権株式の変更により、普通株式を持つ株主にも影響があるので、普通株式を持つ株主だけの種類株主総会の決議も必要となります。

普通株式に変更する方法

無議決権株式から普通株式に変更するということも、種類株式の内容を変更するということに該当しますので、必要な手続きは、先ほどと同じです。

つまり、無議決権株式の内容を普通株式と同一とする定款の変更を行い、種類株主総会で決議すればよいのです。

無議決権株式の相続税評価

非上場株式の相続税評価は、大きく分けると、原則的評価方法と特例的評価方法の2種類を使い分けていくのですが、ここでは、無議決権株式に関する取扱いに絞って解説していきます。

≫非上場株式の評価について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。

原則:そのまま

無議決権株式については、原則として、議決権の有無を考慮せずに評価します。

選択:5%減

議決権がない分だけ、他の株式より価値が下がるのではないですか?

もっともなご意見です。

同族株主が、無議決権株式を相続した場合には、5%減した金額とすることができます。

ただし、この控除した金額を、同族株主が相続した議決権のある株式の評価額に加算しなければなりません。

つまり、評価額全体としては、変わらないということです。

また、この方法を選択するためには、以下の条件をすべて満たしている必要があります。

申告期限までに遺産分割協議が終わっていること

当該株式を相続したすべての同族株主から、所定の届出書が提出されていること

申告にあたり、評価額の算定根拠を記載し、添付していること

無議決権株式と事業承継税制

最後に、贈与税または相続税の納税を猶予できる制度である、事業承継税制との関係について、確認していきます。

≫事業承継税制について、詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。

同族会社判定

同族グループで、50%超の議決権割合を所有しているという要件があります。

このときの議決権割合は、無議決権株式は除外して、判定します。

(一部の議決権が制限されている株式は判定の対象です。)

筆頭株主要件

先代経営者の議決権割合が、同族グループ内で、一番多いという要件もあります。

同族会社の判定と同様に、議決権割合は、無議決権株式は除外して、判定します。

(一部の議決権が制限されている株式は判定の対象です。)

特例対象株式

納税猶予の対象とする株式は、議決権に一切の制限がない株式のみ認められています。

従って、無議決権株式はもちろん、議決権制限株式も、納税猶予の対象とすることはできません

まとめ

今回は、無議決権株式(と議決権制限株式)を取り上げて、解説しました。

無議決権株式を活用するイメージが湧きましたでしょうか?

議決権制限株式は、種類株式の1つの種類で、種類株式は全部で9種類用意されています。

それらを組み合わせることで、事業承継や相続に活用できる幅がさらに広がります。

≫種類株式について、詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。

無議決権株式をはじめ種類株式を活用した事業承継を検討される際は、相続や事業承継に強い税理士に相談してみることをオススメします!

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最後までお読みいただきありがとうございました!

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