円満相続税理士法人 税理士
大学在学中に税理士を目指し、25歳で官報合格。大手税理士法人山田&パートナーズに入社し、年間30~40件の相続税申告に携わりました。丸6年間の実務経験を経て退社。地元関西に戻り、円満相続税理士法人に入社しました。現在も相続税申告を中心に業務に励んでいます!
父は、生前一人暮らしでした。(母は随分前に亡くなっています)
私はずっと賃貸アパートで暮らしていましたが、実家の土地を相続したら、受けられる特例はありますか?
小規模宅地等の特例とは
亡くなった人が自宅として使っていた土地について、一定の人が相続すると、本来の相続税評価額の80%引きをして、相続税を計算しても良いですよという特例です。
上記の一定の人とは、以下の通りです。
配偶者
亡くなった人と同居している親族
家なき子
詳しくはこちらで解説をしています♪
家なき子特例とは
上記の家なき子とは、
亡くなった人に、配偶者も同居している相続人もいない場合には、3年以上、自分の持ち家に住んでいない親族が相続したら、80%引きにして良いですよ
という特例です。
ずっと賃貸暮らしをしていた相続人が、実家の土地を相続して、そこに戻って生活をするということは珍しいことではありません。
自分が生まれ育った土地には、思い入れがあるし、父さんも母さんも亡くなった今、実家に戻って、先祖代々の土地を守っていくかー。
と考えても、その相続した土地に相続税が多額にかかってしまうと、
守っていくなんて無理!売ろう、売却して相続税を払うしかない!
となるわけです。
上記のような人を守り(実家の承継を促す)、持ち家の奨励するという側面と、やむを得ない理由によって別居せざるを得なかった人への救済という側面からから、家なき子も小規模宅地等の特例を受けることができるようになりました。
家なき子特例の要件とは
配偶者及び同居親族がいないこと
亡くなった人が独身だった、もしくは配偶者が既に亡くなっていて、生前は一人暮らしだったことを意味します。
配偶者や同居している親族がいれば、その人達が優先して相続するのが一般的と考えるためです。
相続開始前3年以内に、自己または自己の配偶者の持ち家に住んでいないこと
要するに、自宅を相続しようとしている人は、賃貸アパートや賃貸マンション、社宅や寮で暮らしていた状態をいいます。
つまり、既に持ち家を持っている人は、実家に戻る意思がないと判断されてしまうわけです。
相続した自宅の土地を申告期限まで所有していること
本来は、自宅を相続し、その家を引き継いで生活をしていく人のために作られた特例です。
そのため、少なくとも、申告期限までは所有することが要件となっています。
平成30年度の税制改正で要件がさらに厳しくなった
平成30年度の税制改正で、上記の3つの要件に加えて、さらに要件が追加されました。
相続開始前3年以内に、三親等内の親族または相続する人と特別の関係がある一定の法人が所有する家屋に居住したことがないこと
もともと、『自己または自己の配偶者が所有する持ち家に住んでいないこと』は要件とされていましたが、さらに厳しくなりました。
もともとの要件では、
・亡くなった人が所有している物件に居住している
・同族会社に不動産を購入させて居住している
場合であっても、家なき子特例を受けることが可能でした。
しかし、三親等内の親族または関係のある法人が所有している物件は持ち家と同等であるとの解釈から、この要件が追加されました。
相続開始時に住んでいる家屋を過去に所有したことがないこと
この要件ができる前までは、作為的に持ち家がないという状態にすることが横行していました。
どうやって持ち家がない状態を作り出すの?引越するの?!と思いますよね。
子供の持ち家を同族法人や親に売却することによって、名義を第三者に変えます。
一般的に、同族法人や親に売却をしても、
私の名義になったけど、そのまま住み続けていいからね。
となるわけです。
これで、自己または自己の配偶者の所有する物件には居住していないから、父さんが亡くなったときには、家なき子特例が受けられるぞ。
こういった特例の適用を受けることを目的に名義だけを変え、そのまま居住し続けるという行き過ぎた相続対策が横行したため、怒った国税庁がこれに歯止めをかけさせることを目的にこの要件も追加されたという次第です。
まとめ
小規模宅地等のうち、家なき子特例は、平成30年度の税制改正によって要件が厳しくなり、特例の適用を受けるハードルはうんっと上がりました。
亡くなった人や関係のある人、関係のある法人が所有している不動産に賃料を支払って住んでいてもアウトということです。つまり、本当に関係性のない、純粋な賃貸アパート、賃貸マンションに住んでいたという人しか、この特例の適用を受けることができなくなったのです。
しかし、制度が創設された趣旨を鑑みると、あるべき姿に戻ったということかもしれませんね!
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