円満相続税理士法人 税理士
座右の銘は『意志あるところに道は開ける』。三人の子育てと税理士事務所 勤務、受験勉強を両立させ、官報合格しました。親族の相続の経験から、 相続人の方に寄り添える税理士でありたいと思っております。 詳しいプロフィールはこちら!
遺産分割の対象となる被相続人の財産は、相続開始時ではなく、遺産分割時に存在する財産です。
しかしもし相続人のうちのひとりが、遺産分割前に、被相続人が亡くなったことを金融機関に伝えないまま、被相続人の預金を引き出して使い込みをしてしまったとしたら…?
この場合は、相続開始時には存在していたはずの預金が、遺産分割時には存在しないことになりますね。
もし遺産分割時に存在している財産だけしか遺産分割の対象にできないとすれば、他の相続人にとっては不公平になりますよね。
そこで2018(平成30)年の民法改正により、相続開始後に処分された財産についても、一定の要件を満たせば遺産分割時に遺産として存在しているものとみなし、遺産分割の対象とすることができるようになりました。
処分された財産が遺産分割時に遺産として存在しているものとみなされるためには、以下の要件を満たす必要があります。
❶処分された財産が相続開始時に被相続人の遺産に属していたこと
❷処分された財産を共同相続人の1人または数人が処分をしたこと
❸処分された財産を処分した共同続人以外の共同相続人全員が、処分された財産を遺産分割の対象に含めることに同意していること
なお、遺産分割がすでに終了している場合には、たとえ共同相続人全員の同意があっても、処分された財産について遺産分割を求めることはできないことになっています。
ここでいう同意とは、処分された財産を遺産分割の対象に含めることに対する同意であり、誰が財産を処分したのかを特定することまでは求められていません。
また共同相続人全員による同意が必要ですが、財産を処分した相続人本人の同意は不要です。
ただし、一度された同意は撤回することができないため注意が必要です。
遺産として存在しているものとみなされる財産は、処分された財産そのものであり、財産を処分して得られた代償財産ではありません。
例えば、被相続人が土地という遺産を遺しており、当該土地を相続人が勝手に売却したようなケースにおいては、遺産として存在しているのものとみなされる財産は当該土地であり、売却して得た金銭ではない、ということですね。
ただし、代償財産を共同相続人全員の同意により遺産分割の対象とすることは可能です。この場合、処分された財産は遺産分割の対象とはなりません。
なお、相続人が他の共同相続人全員を相手取り、処分された財産が被相続人の遺産に属することについて確認する訴えを裁判所に提起することもできます。
【根拠条文】
民法
(遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲)
第九百六条の二 遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができる。
2 前項の規定にかかわらず、共同相続人の一人又は数人により同項の財産が処分されたときは、当該共同相続人については、同項の同意を得ることを要しない。