円満相続税理士法人 代表税理士
『最高の相続税対策は円満な家族関係を構築すること』がモットー。日本一売れた相続本『ぶっちゃけ相続』シリーズ19万部の著者。YouTubeチャンネル登録者10万人。
相続時精算課税制度の特別控除(2500万)を使うためには、申告期限(贈与を受けた年の翌年3月15日)までに贈与税申告書を税務署へ提出することが要件とされています。
適用初年度については、贈与税申告書と相続時精算課税制度選択届出書を合わせて、期限内に提出することが求められます。もしも、期限後に提出すると、相続時精算課税制度を使うことはできませんが、贈与を受けた事実がなくなるわけではありません。そのため、暦年課税制度によって計算された贈与税を納めなければいけない事態になり、税負担が非常に重くなってしまいます(2500万の贈与の場合、贈与税は約810万円)。
相続時精算課税制度は、一度選択すると、翌年以降も強制適用となっていきます。例えば、1年目に1000万の贈与を受け、相続時精算課税制度を適用し、2年目にも1000万の贈与を受けたとします。
この場合、2年目の贈与についても、申告期限までに贈与税申告書を税務署へ提出しなければいけません。では、もしも、2年目以降の贈与について、申告期限までに提出しないと、どのようなことが起きるのでしょうか?
ここで多くの方は、『特別控除2500万のうち、まだ使っていない金額が1500万あるので、期限後申告になっても贈与税は発生しないから、無申告加算税も延滞税もかからない。つまり、実質的に負担が増えるわけではないのでは?』と考えると思います。
しかし、そうではないのです。
2年目以降に期限後申告をした場合、特別控除額は使うことはできずに、贈与額に対して一律20%の贈与税が課税されます。先ほどの例でいえば200万円(1000万×20%=200万円)です。そして、この200万に対して、無申告加算税(自主的期限後申告なら10万円、調査指摘後による期限後申告なら37万5000円)と延滞税が課税されることになります。
なお、この場合において納付する本税(200万部分)については、将来、相続が発生した時に贈与税額控除として相続税と相殺することが可能です。また、相続税よりも先に払った贈与税が大きい場合には、その差額は還付してもらうことも可能です。
しかし、無申告加算税や延滞税は控除対象外なので、その分は、純粋に負担が重くなってしまうことになります。
2024年以降は、相続時精算課税制度に年間110万円の非課税枠が設けられます。そのため、2年目以降に110万以内で贈与をするなら、贈与税の申告義務はありません。ただ、110万円を超える贈与をするなら、贈与税の申告義務が発生しますし、この申告についても期限内申告が要件とされていきます。期限後申告となった場合は、上記と同じ取り扱いになりますので、実務家としては特に注意していきたいポイントですね。
【根拠条文】相続税法第21条の12第1項、第2項
(相続時精算課税に係る贈与税の特別控除)第二十一条の十二
相続時精算課税適用者がその年中において特定贈与者からの贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については、特定贈与者ごとの贈与税の課税価格からそれぞれ次に掲げる金額のうちいずれか低い金額を控除する。
一 二千五百万円(既にこの条の規定の適用を受けて控除した金額がある場合には、その金額の合計額を控除した残額)
二 特定贈与者ごとの贈与税の課税価格
2 前項の規定は、期限内申告書に同項の規定により控除を受ける金額、既に同項の規定の適用を受けて控除した金額がある場合の控除した金額その他財務省令で定める事項の記載がある場合に限り、適用する。
3 税務署長は、第一項の財産について前項の記載がない期限内申告書の提出があつた場合において、その記載がなかつたことについてやむを得ない事情があると認めるときは、その記載をした書類の提出があつた場合に限り、第一項の規定を適用することができる。