相次相続控除とは、10年以内に2回以上相続が発生した場合、前回の相続(一次相続)により課せられた相続税額のうち、年数に応じた一定割合相当額を、今回の相続(二次相続)に係る相続税額からマイナスする制度です。

相続のプロを目指す方が、この制度で押さえておきたいポイントを解説します。

「10年以内」の起算日は、今回の相続(二次相続)開始日の10年前の応当日

(具体例)今回の相続開始日:令和5年8月7日

この場合、平成25年8月7日から令和5年8月6日までの間に一次相続が開始していれば適用できます。

なお、同時相続の場合は、適用できません。

適用を受けることができる人は、相続人に限定

相続を放棄したら、適用できません(例えば、相続を放棄して生命保険金を取得した人は適用できません)。

また、遺贈により、相続人以外の人が財産を取得した場合も適用できません。

今回の相続(二次相続)の被相続人が、前回の相続(一次相続)で課せられた相続税額がある

実際に被相続人に課せられた相続税額だけでなく、被相続人の死亡後、修正申告等で一次相続に係る相続税につき課せられた相続税額を含みます。

また、数次相続など、被相続人が一次相続税額を実際に納付していなくても、適用できます。

ただし、配偶者の税額軽減で納付税額がゼロの場合は、課せられた相続税額がないため、相次相続控除は適用できません。

そのため、相次相続控除の適用が想定される場面は、被相続人が、配偶者以外から、父母や兄弟、あるいは(子が先に亡くなり)子から財産を相続して、相続税額を支払っているケースとなります。

相次相続控除の適用により、納税額ゼロの場合の申告義務なし

「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」は申告要件があるため、納税額がゼロになっても相続税申告は必要となりますが、「相次相続控除」には申告要件はなく、納税額がゼロとなった場合、相続税申告自体が不要となります。

ただし、「取得費加算の特例」の適用を予定している場合は、相続税申告をしておく必要があります。「取得費加算の特例」は、相次相続控除適用前の相続税を元に計算するため、適用前の相続税額が発生している場合には適用できます(相続税申告をしておかないと適用できません)。

各相続人に対する相次相続控除額の分配は、財産の取得割合で決定(相続人間で自由に決定できません)

未成年者控除や障害者控除は、本人から控除できない金額は、相続人(扶養義務者)間の協議で控除額を決めることができますが、相次相続控除額の分配は、財産の取得割合による按分で決定されます。

また、分割は適用要件ではないため、未分割の場合も適用できます。この場合、法定相続分で財産を取得したとして控除額を計算します。

相続税申告書に添付書類の要件なし(一次相続の第一表があれば控除額の計算可)

相次相続控除には、添付書類の要件はありません(第7表:相次相続控除額の計算書を除く)が、一次相続の下記書類は添付した方が丁寧とされています。

・第1表(相続税の申告書)

・第11表(相続税がかかる財産の明細書)

・第11表の2(相続時精算課税適用財産の明細書)

・第14表(純資産価額に加算される暦年課税分の贈与財産価額の明細)

一次相続に係る相続税申告書が相続人の手元になくて、これらの書類が準備できない場合でも、最低、第1表(相続税の申告書)さえあれば計算できます。

また、相次相続控除の適用を失念しても、当初の申告期限から5年以内であれば、更正の請求により適用できます。

【根拠条文】

相続税法第20条(相次相続控除)

相続(被相続人からの相続人に対する遺贈を含む。以下この条において同じ。)により財産を取得した場合において、当該相続(以下この条において「第二次相続」という。)に係る被相続人が第二次相続の開始前10年以内に開始した相続(以下この条において「第一次相続」という。)により財産(当該第一次相続に係る被相続人からの贈与により取得した第21条の9第3項の規定の適用を受けた財産を含む。)を取得したことがあるときは、当該被相続人から相続により財産を取得した者については、第15条から前条までの規定により算出した金額から、当該被相続人が第一次相続により取得した財産当該第一次相続に係る被相続人からの贈与により取得した第21条の9第3項の規定の適用を受けた財産を含む。)につき課せられた相続税額(延滞税、利子税、過少申告加算税、無申告加算税及び重加算税に相当する相続税額を除く。第1号において同じ。)に相当する金額に次の各号に掲げる割合を順次乗じて算出した金額を控除した金額をもつて、その納付すべき相続税額とする。

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