事業承継における自社株買いのメリットと手続き

こんにちは、円満相続税理士法人の中岡です!

会社が、自ら発行した株式を買い取ることを自己株式の取得といいますが、ここでは分かりやすく「自社株買い」と呼んでいきます。

以前は、自社株買いは原則禁止されていましたが、現在は、原則自由となっており、会社が持つ自社株(自己株式)は「金庫株」と呼ばれることもあります。

今回は、自社株買いのメリットとその手続きについて、詳しく解説していきます。

最後までお読みいただければ、自社株買いについて分かるようになりますよ♪

自社株買いとは?

自ら発行する株式を株主から買い取ることを自社株買いといいます。

会社法上は、自己株式の取得です。

なお、自己株式には、議決権や配当金を受け取る権利は、ありません

自社株買いの方法

自社株買いの方法ですが、基本的には株主に売ってもらうという方法になります。

これには、買い取る株主を特定せずに自社株買いを行う方法と、買い取る株主を特定して自社株買いを行う方法の2つがあります。

後ほど、詳しく説明していきます。

株主側の課税関係に注意

自社株買いでは、売ってもらう株主側の課税関係に注意する必要があります。

特に、注意すべきは、みなし譲渡課税とみなし配当課税の2つです。

みなし譲渡課税

みなし譲渡課税とは、個人が法人に時価の2分の1未満で売却した場合に、時価で売却したとみなして譲渡所得税が課税されるというものです。

この時の時価は、相続税評価額に修正を加えたもの(所得税法上の時価)を使っていきます。

≫非上場株式の所得税法上の時価について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。

みなし配当課税

みなし配当課税とは、発行会社に株式を売却した場合に、会社の資本金に相当する部分以外は、利益積立金の分配、つまり配当とみなして課税しましょうというものです。

資本金に相当する部分は、通常どおり、譲渡所得課税(20%)です。

これ以外の部分は、配当所得として計算されます。

そして、恐ろしいのが、非上場会社の配当所得は給与所得などと同じく総合課税となり、最高55%の税率になります。

≫みなし配当課税について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。

相続株式のみなし配当課税の特例

相続で取得した株式申告期限から3年以内に発行会社に売却した場合には、みなし配当課税はされないという特例があります。

相続税の納税資金を確保するために売却した場合にまで、最高55%の税率をかけるのは酷だからという趣旨です。

≫みなし配当の特例について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。

自社株買いのメリット・デメリット

メリット

納税資金の確保

少数株主の整理

オーナーの株式を自社株買いすることで、オーナーは現金を手にすることができます。

一方で、少数株主から自社株買いをすることで、分散した株式を集約することができます。

デメリット

会社の資金の流出

売主側の課税関係

デメリットは、会社の資金が流出してしまうということと、みなし配当課税など大きな納税が必要になる可能性があるという点です。

買い取る株主を特定せずに自社株買いを行う方法

まず、買い取る株主を特定せずに行う方法から解説していきます。

次の4ステップです。

株主総会の普通決議

取締役会の決議

株主に対する通知

株主から譲渡しの申込み

株主総会の普通決議

自社株買いをすることを、取得する株式の総数などとともに、株主総会で決議します。(会社法156条)

取締役会の決議

株主総会の決議の範囲内で、自社株買いについて、取得する株式の数や価格、期日など具体的な事項を決定します。(会社法157条)

株主に対する通知

取締役会で決議した内容を株主に通知します。(会社法158条)

株主から譲渡しの申込み

通知を受けた株主は、会社に譲り渡そうと思う場合は、会社に対し申込みを行います。

申込みをして、期日が来れば、売買成立です。(会社法159条)

買い取る株主を特定して自社株買いを行う方法

次に、買い取る株主を特定して行う方法を解説していきます。

すべての株主に平等に権利が与えられるわけではないので、先ほどより少し厳しくなります。

異なるのは黄色の箇所で、「売主追加請求」が追加される手続きです。

売主追加請求

株主総会の特別決議

取締役会の決議

株主に対する通知

株主から譲渡しの申込み

売主追加請求

買い取る株主を特定して自社株買いをするときは、株主に平等に売却機会を確保するため、自分も売主に追加してほしいと請求することができます。(会社法160条3項)

この請求をすることができる期間を2週間設ける必要があります。

株主総会の特別決議

買い取る株主を特定して自社株買いをするときは、特別決議が必要になります。(会社法160条)

これ以降の手続きは、基本的に同じです。

売主追加請求が不要となる場合

買い取る株主を特定して自社株買いを行う場合に必要な「売主追加請求」が不要となる場合を2つ紹介します。

相続人から自社株買いを行う場合

定款で売主追加請求を排除した場合

相続人から自社株買いを行う場合

相続人から自社株買いを行う場合は、例外的に、売主追加請求を設けなくてよいことになっています。(会社法162条)

定款で売主追加請求を排除した場合

定款であらかじめ定めておくことで、売主追加請求を排除することができます。(会社法164条)

まとめ

今回は、自社株買いについて、解説しました。

自社株買いは、納税資金の確保や少数株主の整理で活用する場面も多くあります。

自社株買いを活用した事業承継を検討される際は、相続や事業承継に強い税理士に相談してみることをオススメします!

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最後までお読みいただきありがとうございました!

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