みなし配当課税の恐怖

こんにちは、円満相続税理士法人の橘です。

会社経営者の皆様、事業承継はお済でしょうか?

本日、ご紹介をするのは、会社から配当金をもらった場合の取り扱いです。

うちは、配当金だしてないから関係ないか~

と思った経営者の方!

違います。

配当金を出さなくても、配当金として課税されてしまう、みなし配当課税

この取り扱いは、事業承継を考える上で絶対に外せません。

是非、最後までお読みくださいませ(^^)/

配当金にかかる税金

さて、みなさんの会社では、毎年、配当金を出していますでしょうか?

正直な話、私もこれまでたくさんの会社の決算書を見てきましたが、オーナー会社で配当金を出している会社は、非常に稀です。

上場している会社と違って、オーナー会社の場合には、配当金を出さなくても文句がでることはあまりありません。手続きも煩雑なので、配当金を出さない会社が多いのです。

では、もし、会社が配当金を出した場合、受け取った個人側では、どのような税金がかかるかご存知でしょうか?

配当金にかかる税金は一律20%の所得税が天引きされるだけじゃないの?

ところがどっこい!実は、全然違います。

配当金を受け取った個人には…

なんと最大55%の所得税と住民税が課税されてしまうのです!

多くの経営者が誤解しているのですが、会社から支払われる配当金は、原則として総合課税という方法によって所得税が計算されます。

総合課税とは、一言でいうと、『1年間に稼いだ給与や家賃などを全て合計した金額に、15%~55%の税率で所得税(と住民税)を課税する』という方法です。

所得税は、その人の所得水準によって15%~55%の税率で課税されます。

ポイントは、全て合計してという部分。

例えば、500万円分の家賃収入があるアパートがあったとしても、まったく収入のない人が、このアパートを持った場合と、お医者さんのような、もともと高所得の人が、このアパートを持った場合とでは、得られる収入は同じでも、かかる税金は、全く異なるということです。

1年間に稼いだ給与や家賃などを全て合計した金額に、15%~55%の税率で所得税(と住民税)を課税していきますよ。

話を配当金に戻しますと、会社から支払われる配当金は、原則として、総合課税の対象となります。

そのため、オーナーの給与などと合算して、非常に高額な所得税が発生してしまうのです。

配当金の税金は20%ではない?

でも、証券会社から送られてくる配当金の紙には20%天引きとして書いてないですよ?

誤解のもとはここにあるのですが、上場している会社からの配当金については、特別に20.315%だけの税金でよいこととされています。

株式投資をしている人は、世の中に非常にたくさんいるので、その全員に確定申告をしてもらうのは大変なので、特別に20%だけでもいいですよ

という趣旨で設けられた取り扱いです。

※余談ですが、20%にするか、総合課税にするかは選ぶことも可能です。高所得でない人であれば、あえて、総合課税を選択したほうが、20%より負担が少なくなるので、確定申告すると所得税が戻ってくることもあります。

「配当金にかかる税金は一律20%」と誤解されている経営者さんはとても多いですが、これは上場している会社に限定された話です。

もし、みなさんの会社から配当金を出す場合には、配当金は総合課税の対象となり、非常に大きな税負担になる可能性があることを知っておきましょう。

※配当金の額が10万円を下回る場合など、少額の配当の場合には20%でよいこととされています。

みなし配当課税とは

配当にかかる税金が高いのはわかったけど、配当なんて出さなきゃいい話でしょ?

と思った方も多いと思います。

しかし、事業承継を考える際に切っても切り離せないのが、この配当課税の恐ろしいところなのです。

その理由が、みなし配当課税です。

そもそも配当とは、会社が蓄積してきた利益を株主に分配する行為をいいます。

ここで気を付けなければいけないのは、会社が利益を株主に分配する行為には、配当以外の行為もあるということです

どのようなシチュエーションがあるでしょうか?少し考えてみましょう。

自己株式の取得

代表的な例を挙げますと、それは自己株式の買い取りです。

会社の株式を、その会社に買い取ってもらう行為です。

会社は、株式を買い取るために、売却する株主に多額のお金を払います。

この時の税務上の考え方は、株主に払うお金は、一部は資本金の払戻し、一部は会社が蓄積した利益の分配と考えます。

例えば、会社の資本金が1000万円、会社の利益積立金が9000万円、純資産合計が1億円の会社があったとします。

この会社が発行している株式は合計で100株で、全てあなたが持っていたとします。

この度、あなたは会社に対して50株を5000万円で買い取ってもらうことにしました。

この時、あなたが会社からもらう5000万円は、500万円が資本金の払戻し、4500万円が会社が蓄積した利益の分配と考えます。

もともと資本金として出資したものが戻ってくる分には、税金は発生しません。

問題は利益の分配4500万円です。

税金の世界では、これを配当金とみなして総合課税します!

これが、みなし配当課税です。

4500万円も総合課税されてしまっては、所得税率は55%に達します。

つまり、自社株買いを安易にしてしまうと、個人側には非常に大きな税負担が強いられてしまうのです!

これが、みなし配当課税の恐怖です。

会社を解散させた場合

会社が蓄積した利益の分配行為には、配当課税がされてしまいます。

先ほどは、自己株式の買い取りの例を挙げましたが、実は、会社を解散させた場合にも、みなし配当課税の恐怖が襲ってきます。

会社を解散させる場合には、まず、会社が借りているお金などを返すことから始めなければいけません。

すべての返済が終わったら、会社に残った財産を株主のもとに還元します。

この時に、先ほどの会社の例(資本金1000万、利益積立金9000万の会社)で言えば、還元される財産のうち9000万円は、会社が蓄積した利益を株主に分配する行為になります。

つまり9000万円が一気に総合課税されてしまうのです!

所得税の税率は軽々55%を超えてきますので、せっかく貯めた利益が半分以上、税金で消えていくことになります。

まとめ

これから事業承継を考えるうえで、非常に多くの選択肢を検討していかなければなりません。

その中で、自己株式の買い取りや解散など、みなし配当課税が論点になるシチュエーションがでてきます。

この論点を知らないまま、安易に

まぁ将来的には会社を解散させて引退すればいいか

などと考えていると、

会社に貯めてきた利益の半分が、所得税でもっていかれちゃった!

と、泣きを見るかもしれません。

まずは、会社が蓄積した利益を分配すると、もらった側では総合課税されることを、しっかりと抑えておきましょう!

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最後までお読みいただきまして、ありがとうございました(*^^*)

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