空き家特例の注意点を徹底解説

皆さんこんにちは。

円満相続税理士法人、税理士の加藤です。

今回は、被相続人の居住用財産を譲渡した場合の3,000万円控除(通称:空き家特例)について、この記事を読んでいただければ全て理解できるように解説をしていきます。

(かなり細かい論点まで記載しましたので、少々長文となっております。)

空き家特例は、

・老人ホームに入居していた場合

・複数人で譲渡した場合

・取り壊しの時期

・他の特例との併用

など、状況に応じて様々な要件があり、一つでも間違えてしまうと適用が出来なくなってしまいます。

また令和6年1月1日以降からは、制度の改正も行われる予定です。

現行の基本的な要件や、プロでも間違えやすい注意点、そして令和6年以降の改正内容まで、すべて分かりやすく解説しますので、ぜひ参考にしてください!

要件の概要

空き家特例には様々な要件があります。

これらの要件を大きく区分すると、次のようになります。

~空き家特例の要件~

・建物の要件

・敷地の要件

・建物の利用状況の要件

・相続人の要件

・譲渡相手の要件

・譲渡の要件

・他の特例との兼ね合い

・手続きの要件等

このようにしてみると、かなり要件が多いのですが、全て分かりやすく解説しますよ!

建物の要件

まずは建物自体の要件を見ていきましょう!

譲渡をする建物は、次の要件を満たしている必要があります。

~建物の要件~

昭和56年5月31日以前に建築されたこと

区分所有建物でないこと

注意点

区分所有建物は空き家特例の対象から除外されています。

例えば、マンションや二世帯住宅などは、区分所有の登記がされているケースがありますので、空き家特例の対象外となってしまいます。

しかし、区分所有ではなく、共有状態の建物は問題なく空き家特例の適用が可能なので、間違えないようにしましょう。

敷地の要件

次は建物が建っている敷地部分の要件です。

~敷地の要件~

被相続人の居住用家屋の敷地として使われていたこと

ちなみに、被相続人の居住用家屋の敷地であれば、借地権でも適用可能です。

注意点

空き家特例の対象となるのは、あくまでも居住用家屋の敷地です。

例えば、倉庫や車庫、離れなどの敷地は、居住用家屋と一体として使用している場合であっても、空き家特例の対象外となります。

マイホーム特例の場合は、倉庫や車庫なども特例の対象となりますが、空き家特例の場合は対象外となるので、この違いに注意してください!

建物の利用状況の要件

建物がどのように使われていたのか、も要件となります。

~利用状況の要件~

・相続開始の直前において、被相続人以外に居住をしていた者がいないこと

・被相続人が老人ホーム等に入居する直前において、被相続人が以外に居住をしていた者がいないこと

注意点①

対象となる建物は、被相続人「のみ」が居住していたことが要件となります。

したがって、親族が同居している場合や、一部の部屋を賃貸していた場合などは、空き家特例の対象外となります

注意点②:老人ホームへの入居

被相続人が生前老人ホームへ入居している場合でも、空き家特例の適用は可能です。

しかし空き家特例を適用するためには、次の要件を満たす必要があります。

~老人ホームに入居していた場合の要件~

A:被相続人の要件

・被相続人が、要介護認定・要支援認定を受けて老人ホーム等に入居していたこと

・被相続人が、障害支援の認定を受けて、障害者支援施設等に入居していたこと

B:建物の要件

・被相続人が老人ホーム等に入居してから相続が発生するまでの間、被相続人の家財道具などの保管に使用されていたこと

・被相続人が老人ホーム等に入居してから相続が発生するまでの間、事業、貸付、被相続人以外の者の居住の用に使用されていないこと

(利用が一時的であったり、無償の貸付であっても、対象外となってしまいます。)

要介護認定などは、老人ホーム等に入居する直前において認定を受けていたか否かで判断をします。
相続発生日に判断をするわけではないので注意してください。

相続人の要件

相続で不動産を取得する相続人にも、一定の要件があります。

~相続人の要件~

相続により、建物と敷地の両方を取得すること

相続人が複数の場合でも、空き家特例は各々で適用ができます。

ただし令和6年以降は、控除額が減額されます(詳細は後述します。)。

注意点

上記の通り、空き家特例の対象となるのは、「建物」と「敷地」を同時に相続する必要があります。

建物は母から、敷地は父から、といった取得では適用できませんので、注意してください。

譲渡相手の要件

空き家特例は、譲渡をする相手にも要件があります。

~譲渡相手の要件~

譲渡の相手が、特別の関係がある者でないこと

注意点:特別の関係がある者とは?

特別の関係がある者とは、

・親子

・夫婦

・生計を一にする親族

・家屋を売却した後、その家屋で同居をする親族

・内縁関係者

・特殊な関係のある法人

などとなります。

譲渡の要件

空き家特例は、譲渡の方法にも要件があります。

~譲渡の要件~

・相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること

譲渡価額が1億円以下であること

建物を取り壊さないで譲渡する場合には一定の要件を満たすこと(注意点③で解説)

建物を取り壊して敷地を譲渡する場合には一定の要件をみたすこと(注意点④で解説)

注意点①:譲渡期間

空き家特例は、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡をする必要があります。

「相続税の申告期限から3年を経過する日」と間違えないようにしましょう。

注意点②:譲渡価額

相続人が複数いる場合には、全ての相続人の譲渡価額を合計して1億円以下であるかを判定します。

また、分割して譲渡した場合や、相続人ごとに売却時期が異なる場合なども同様に、過去の売却も遡って譲渡価額を合計して、1億円以下の判定を行います。

もし過去に特例を適用していて、譲渡価額の合計が後々1億円を超えた場合には、修正申告をする必要があります。

注意点③:建物を取り壊さない場合

建物を取り壊さないで譲渡する場合次の要件を満たしている必要があります。

~建物を取り壊さない場合の要件~

・相続の時から譲渡の時まで、事業の用、貸付の用、居住の用に供されていないこと

・譲渡の時において、一定の耐震基準を満たしていること

一定の耐震基準とは、
「建築基準法施行令第3章及び第5章の4の規定」
「国土交通大臣が財務大臣と協議して定める地震に対する安全性に係る基準」
となりますが、詳しくは不動産会社などに確認をすることをお勧めします!

注意点④:建物を取り壊す場合

建物を取り壊して譲渡する場合は、次の要件を満たしている必要があります。

~建物を取り壊す場合の要件~

・建物を取り壊した後に譲渡する(令和6年以降改正予定。詳細は後述。)

・相続の時から取り壊しの時まで、事業の用、貸付の用、居住の用に供されていないこと

・相続の時から譲渡の時まで、事業の用、貸付の用、居住の用に供されていないこと

建物を取り壊してから譲渡の時まで、他の建物や構築物のために使用していないこと

他の特例との兼ね合い

空き家特例には、同時に適用できる特例と、できない特例があります。

~空き家特例と重複適用が可能な特例~

・特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例

・住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除

・居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除

・特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除

・認定住宅等の新築等をした場合の所得税額の特別控除

~空き家特例と重複適用が出来ない特例~

・固定資産の交換の場合の譲渡所得の特例

・収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例

・交換処分等に伴い資産を取得した場合の課税の特例

・換地処分等に伴い資産を取得した場合の課税の特例

・収用交換等の場合の譲渡所得等の特別控除

・特定の事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の課税の特例

・特定の事業用資産を好感した場合の譲渡所得の課税の特例

・特定普通財産とその隣接する土地等の交換の場合の譲渡所得の課税の特例

・相続財産に係る譲渡所得の課税の特例

手続きの要件等

空き家特例の適用を受ける場合には、確定申告書にその旨を記載する他、下記の添付資料が必要になります。

~建物を取り壊さない場合~

・建物、敷地の登記事項証明書等

・所在地の市区町村長から交付を受けた「被相続人居住用家屋等確認書」

・耐震基準適合証明書、建築住宅性能評価証明書など

・売買契約書

~建物を取り壊す場合~

・建物、敷地の登記事項証明書

・所在地の市区町村長から交付を受けた「被相続人居住用家屋等確認書」

・売買契約書

なお、市区町村長から交付を受ける「被相続人居住用家屋等確認書」の発行に必要な資料は、主に下記のとおりです。

被相続人居住用家屋等確認書の必要資料~

・被相続人の住民票の除票の写し

・相続人の住民票の写し

・売買契約書

・電気水道ガスの使用中止日が確認できる書類

・売却の際の広告など

・閉鎖事項証明書の写し(建物を取り壊す場合)

・取り壊してから譲渡するまでの使用状況が分かる写真(建物を取り壊す場合)

令和6年以降の改正

空き家特例については、令和6年1月1日以降に取り扱いが一部改正されます。

改正の詳細は、次の財務省HPで確認ができますので、こちらも併せてご確認ください。

〈財務省HP:税制改正の概要〉

適用期限

空き家特例は当初、令和5年12月31日で終了する予定でしたが、その期限を4年間延長することになりました。

したがって、空き家特例は令和9年12月31日まで適用が出来るようになります。

取り壊しの時期

現状では、建物を取り壊してから譲渡をしないと、空き家特例は適用できませんでした。

(建物を取り壊す場合に限ります。)

しかしながら、この要件の使い勝手が悪かったため、令和6年以降は次のように改正されます。

~取り壊しの時期~

建物と敷地を一緒に譲渡しても、その譲渡の翌年2月15日までに建物を取り壊せば適用が可能になる。

つまり、相続人は建物と敷地を一緒に売却し、購入をした不動産業者などが建物を取り壊す場合でも、空き家特例が適用できることになります。

現行では、建物と敷地を一緒に譲渡する場合は、一定の耐震基準を満たさなければならないので、かなり使い勝手が良くなりますね!

3人以上の相続人が譲渡する場合

空き家特例は、複数の相続人が譲渡をした場合であっても、各々適用をすることが出来ます。

現行では、一人当たりの控除額が3,000万円ですが、令和6年以降は次のように改正されます。

~控除額の改正~

3人以上の相続人で譲渡する場合の控除額は、各々2,000万円を上限とする

例えば3人で譲渡をする場合

現行法:3,000万円×3=9,000万円が上限

改正後:2,000万円×3=6,000万円が上限

ということになります。

まとめ

今回は、空き家特例について、要件や今後の改正などを徹底的に解説してきました。

ご覧いただいた通り、空き家特例は非常に多くの要件があり、複雑な面があります。

何かを間違えてしまうと、所得税の額に大きな影響を与えますので、この特例を適用する場合には、一度税理士に相談をしていただければと思います。

弊社では資産税に特化している税理士が、要件や申請手続きを最初から最後まで対応いたします。

もし何かあれば、お気軽にご連絡ください!

最後までお読みいただきありがとうございました!

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