相続の対象となる相続財産ではないものの、相続税の計算においては相続財産とみなされる財産を、みなし相続財産といいます。

みなし相続財産に該当する財産を取得した場合、相続税の課税対象になるので注意が必要です。

そこで今回は、みなし相続財産の種類について解説します。

生命保険金

以下の条件を満たす生命保険金については、みなし相続財産として相続税の対象になります。

故人が保険料を負担しており、かつ被保険者であり、保険金の受取人が故人以外(相続人など)の場合

たとえば、故人が生前に生命保険に加入しており、被保険者として保険料を支払っていたとします。

故人が亡くなって、生命保険の受取人として妻が指定されており、妻が生命保険金を受け取った場合は、生命保険金について相続税の対象になります。

なお、生命保険金が必ず相続税の対象になるとは限りません。契約内容によっては相続税ではなく、贈与税や所得税の対象になることがあります。

死亡退職金

死亡退職金とは、本人が退職した場合に支払われるはずであった退職金について、本人が死亡したために、遺族に支払われるもののことです。

具体的には、故人が亡くなって支払われた退職金のうち、亡くなってから3年以内に支給が確定したものについては、みなし相続財産として相続税の対象になります。

たとえば、故人が亡くなってから1年後に、故人が生前に勤めていた会社から死亡退職金が支給されて妻が受け取った場合、みなし相続財産にあたります。

信託受益権

信託受益権とは、信託によって得た利益を受け取る権利のことです。

信託とは、委託者が財産を信託銀行などの受託者に移転し、受託者が財産を管理・運用して利益を出し、受益者がその利益を受け取ることです。

たとえば、現金を信託銀行に預けて運用したところ利益がでた場合に、この利益を受け取る権利のことを、信託受益権といいます。

相続によって信託受益権を取得した場合、遺贈によってその権利を得たものとみなされるので、相続税の対象になります。

たとえば、遺言によって「長男にA信託銀行の信託受益権を与える」と指定された場合、長男は信託の利益を受け取る受益者となりますが、その理由は相続税の対象になるということです。

定期金

故人が掛け金を支払っており、故人以外の人(相続人など)が受取人である定期金については、みなし相続財産として相続税の対象になります。

定期金とは、定期的に支給される金銭であり、平たく言えば個人年金などの年金のことです。

たとえば、故人が生前に個人年金に加入して掛け金を支払っており、故人が亡くなって妻が受取人となる場合などは、その年金はみなし相続財産に該当します。

著しく低い価格で財産を譲渡された場合

時価に比べて著しく低い価格で財産を譲渡された場合は、時価との差額が相続税の対象になります。

著しく低い価格で財産を処分することによる、不当な節税を防ぐための規定です。

たとえば、「土地Aを200万円で甥に売却する」という遺言があったとします。

土地Aの時価が3000万円の場合、200万円で土地を売却することは、時価に比べて著しく低い価格で財産を譲渡していると言えます。

その場合、財産の時価と売却額の差額を遺贈によって取得したものとみなされ、その差額が相続税の対象になります。

上記の例であれば、土地の時価と売却額の差額である2800万円が、相続税の対象になるのです。

債務の免除や肩代わり

遺言によって、債務の免除や債務の肩代わりを受けた場合は、その金額について相続税の対象になります。

たとえば、故人から1000万円を借りていた長男が、その借金を免除するとの遺言を受けた場合は、1000万円が相続税の対象になります。

あるいは、500万円の借金を抱えていた甥が、遺言によって故人に借金を肩代わりしてもらった場合、500万円が相続税の対象になるのです。

特別縁故者への分与財産

特別縁故者として分与財産を取得した場合、みなし相続財産として相続税の対象になります。

特別縁故者とは、故人の遺産を相続する相続人がいない場合に、故人と一定の特別の縁があった人(特別縁故者)として認められた場合に、遺産の全部または一部を取得できる制度です。

特別縁故者として認められ、故人の遺産から分与財産を取得した場合は、その価格に対して相続税が課されます。

特別縁故者について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

まとめ

みなし相続財産に該当する財産を取得した場合、相続税の課税対象になります。

みなし相続財産の例として、生命保険金・死亡退職金・定期金・特別縁故者への分与財産などがあります。

また、故人から時価に比べて著しく低い価格で財産を取得した場合や、債務を免除された場合なども、みなし相続財産に該当します。

ある財産がみなし相続財産に該当するかどうかは、判断が難しい場合もあるので、詳しくは相続問題に詳しい税理士に相談することをおすすめします。

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