円満相続税理士法人 税理士
相続税専門の税理士です。話しやすいをモットーにお客様が気になっている事を分かりやすく説明するのが得意です。ぜひ一度ご面談して頂ければ納得して頂けると思います。
相続手続きに戸籍は必要ですか?
戸籍は必ず必要な書類となります。相続財産の名義変更をする際には毎回提出が求められます。
例えば亡くなった方の「銀行口座の解約」をする場合や、「証券会社の口座解約」、「不動産の名義変更」をする場合に戸籍の原本提出が必要となります。
相続手続きに必要な戸籍を入手するにはどうすれば良いですか?
戸籍の収集を専門家(司法書士等)に依頼して代理で収集してもらう方法があります。司法書士に不動産の名義変更を依頼する場合は、戸籍の収集もあわせて依頼することをお勧めします。
相続手続きになるべく費用をかけたくありません。自分で戸籍の収集をすることは可能ですか?
戸籍の収集はご自身でやることも可能です。この記事ではご「自身で戸籍収集する方法」や「法定相続情報一覧図を作成する方法」について解説いたします。
前提条件
この記事では、以下の条件を想定して戸籍の収集手続きについてご説明します。
被相続人:夫A(85歳)、横浜市で生まれ育ち、妻Bと婚姻後は千代田区で生活
相続人:妻B(80歳)
相続人:子供C(60歳)婚姻後は中央区で生活
※住所地にて戸籍を編整しているものと仮定します。
※相続人は上記以外にいない(他に子供はいない)ものと仮定します。
※本籍地の市区町村の役所に直接手続きにいける場合を想定しています。
(遠方の場合は郵送手続きになるため、少し煩雑な手続きになります。)
この前提で亡くなった夫Aに関連する戸籍の流れは一番少ないケースで以下図のようになります。この場合、相続手続きでは以下図の戸籍5種類を収集することになります。
戸籍とは何か?
日本における戸籍制度は出生から死亡までの身分関係(親族関係、出生、結婚、死亡など)を証明するためにあります。戸籍は本籍地の市区町村役場などに保管され、「本籍」と「筆頭者」を一括りにして管理されています。そのため、戸籍を取得する際は本籍地の役場に行き(郵送でも可能)、「本籍」と「筆頭者」を伝える必要があります。「筆頭者」とは戸籍の一番初めに書かれている人のことをいい、住民票の世帯主とは異なり、筆頭者が亡くなっても、筆頭者は故人のまま変わりません。夫婦の場合、結婚により氏を改めなかった人が筆頭者になります。
相続手続きにあたり必要な戸籍
まず大事な考え方として、戸籍は亡くなった方(被相続人)の相続人を特定するために必要であるということです。
配偶者は常に相続人となります。子供についても第一順位の相続権をもっているため相続人となります。今回の前提条件では、子供の数を特定するのが戸籍収集の一番のポイントとなります。
したがって相続手続きに必要な戸籍は以下2つの項目に分かれることとなります。
1.亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍一式
※主に亡くなった方の相続人(子供)を確認するために使用します。
2.相続人の戸籍(今回は結婚した子供の戸籍)
※亡くなった方との親子関係を確認し相続発生時点で生存していることを確認します。
収集する戸籍の種類
収集する戸籍は以下の3種類に区分されます。内容は深く理解する必要はありませんが、参考までに概要を記載します。
1.現在戸籍(謄本・抄本)
※名前の通り、現在使われている戸籍です。現在戸籍の中には必ず1人以上は在籍しています。
2.除籍(謄本・抄本)
※婚姻や死亡により戸籍に誰も在籍しなくなったため、閉鎖された戸籍をいいます。
3.改整原戸籍(謄本・抄本)
※戸籍法の法改正により、戸籍のフォーマットが何度か変更されました。変更前の戸籍のことを「改整原戸籍」といいます。読み方は、「はらこせき」または「げんこせき」で、両方とも正しい読み方とされています。ただ、「げんこせき」というと、現在の戸籍と混同する人がいるため、あえて「はらこせき」を使う人が多いです。戸籍のフォーマットは以下の5種類存在しています。
①平成6年式…横書きの最新のフォーマット(以下4種類は全て縦書きです。)
②昭和23年式…戸籍の単位が夫婦親子に変更されました(以下3種類は家が単位です。)
③大正4年式…「戸主ト為リタル原因及ヒ年月日」の欄が廃止
④明治31年式…「戸主ト為リタル原因及ヒ年月日」の欄が新設
⑤明治19年式…一番古い戸籍のフォーマット
戸籍取得のタイミング
相続税の申告書に添付する戸籍については、相続開始日から10日経過後に取得した戸籍を添付する必要があります。
※本籍地に死亡届を提出した場合、約1週間程度で死亡の記載が戸籍に追加されます。戸籍取得のタイミングが早すぎると、せっかく戸籍を取得したのに、死亡の記載が反映されていないため取り直しになってしまうことがあります。そういったことがないよう、戸籍取得のタイミングは亡くなってから2週間程度待った方が良いかもしれません。
なお、相続開始以前に取得した古い戸籍(改製原戸籍や除籍)がある場合には、相続開始後に再取得する必要はありません。これらの戸籍は、将来にわたり内容が変更される可能性がないからです。たとえ、養子縁組等があったとしても変わるのは現在戸籍のみで、除籍や改製原戸籍が変わることはありません。
相続人の戸籍の取得
こちらは一番簡単な手続きとなります。今回のケースでは以下の通りとなります。
・配偶者は亡くなった方と同一の戸籍に入っているため個別に取得する必要なし
・子供は本籍地(中央区)にて戸籍を取得すれば大丈夫です。
※子供の戸籍は直系尊属である母親(配偶者)でも取得することが可能です。
被相続人の戸籍(出生~死亡まで)の取得
この手続きが戸籍取集において一番手間がかかります。手続き方法としては以下の通り、死亡の記載がある現在戸籍からその前の戸籍を辿っていく形となります。
ポイントは「本籍地」と「筆頭者」となります。戸籍はこの二つの要素をインデックスとしてデータ管理しているため、いま手許にある戸籍に記載されている一つ前の戸籍の情報の「本籍地」と「筆頭者」を確認することで、一つ前の戸籍(従前戸籍)を取得することが可能となります。
なお、本籍地が分からない場合は本籍地の記載入りの住民票を取得することで本籍地を確認することが出来ます。
1.亡くなった方の最後の本籍地(千代田区)で戸籍を取る
※本籍地(千代田区)の区役所(戸籍課)に行って頂き、「相続手続きに必要な戸籍を全て収集したい」旨を担当者にお伝え頂ければ、その本籍地にある戸籍は全て収集可能です。
なお、千代田区では相続用の戸籍請求書もありますので参考までにURLを貼付します。
https://www.city.chiyoda.lg.jp/documents/26766/sekyusho-sozoku.pdf
戸籍の手数料については以下のサイトを参照してください。
https://www.city.chiyoda.lg.jp/koho/kurashi/koseki/koseki/shomesho.html
2.最後の本籍地(千代田区)の1つ前の本籍地(横浜市)の戸籍を取る
※上記1で取得した戸籍を持参し、横浜市の市役所の戸籍課に行き、上記と同様に「相続手続きに必要な戸籍を全て取得したい」旨を伝えて頂ければ、その本籍地にある戸籍は全て収集可能です。
※郵送による戸籍の取得も出来ますが少し煩雑です。郵送取得の場合のポイントは手数料を郵便小為替(郵便局で購入)にて同封することです。
定額小為替については以下のサイトを参照してください。
https://www.jp-bank.japanpost.jp/kojin/sokin/hikoza/kj_sk_hkz_kogawase.html
法定相続情報一覧図の取得
上記の方法により亡くなった方の戸籍一式(出生~死亡)と相続人の現在戸籍を取得した後に、相続手続きに必要な部分だけ抜粋した1枚の用紙(法定相続情報一覧図)を作成することが出来ます。
この法定相続情報一覧図は管轄の法務局で認証されることにより、各種の相続に係る名義変更に使えるとても便利なものとなります。以前は収集した戸籍一式を全て持参して相続の手続きをする必要がありましたが、現在は多くの金融機関等でこの法定相続情報一覧図による名義変更に対応しています。
また、相続税の申告においても添付書類として使えるため、とても活用範囲の広い便利なものとなります。取得方法について以下を参照してください。
1.収集した戸籍情報を基に、「法定相続情報一覧図」を作成する。
※「法定相続情報一覧図」のひな型は法務局のサイトで取得することが出来ます。
【法定相続情報一覧図のひな形のダウンロードページ】
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000015.html
※注① 相続人の「住所」について記載が任意になっています。不動産の相続登記などで使用する場合には「住所」が必要となります。相続人の住所を記載する場合には住民票を取得しておく必要があります。なお亡くなった方の住所を証明するためには「住民票の除票」という書類を市区町村の役所で取得します。
※注② 法定相続情報一覧図を相続税申告で利用する場合には注意点が2つあります。1つは、「子」という記載をしないこと(実子と養子の区別がつかないため)。2つ目は養子がいる場合には、法定相続情報一覧図とは別にその養子の戸籍謄本等も添付する必要があります。詳細については、国税庁の以下リーフレットを参照してください。
【相続税の申告書の添付書類の範囲が広がりました】
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sozoku/shikata-sozoku2017/pdf/h30kaisei.pdf
2.「申出書」を記載する
※「申出書」の記載は以下法務局のサイトの「STEP3」より申出書をダウンロードし、記載例を参考に必要事項を記入してください。
【法務局トップページ>法定相続情報証明制度の具体的な手続について】
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000014.html
3.作成した「法定相続情報一覧図」と「戸籍一式」「申出書」を法務局に持参する(郵送も可)
※以下の管轄法務局のいずれかを選んで持参(郵送)する必要があります。
(1)故人の本籍地(死亡時の本籍を指します。)
(2)故人の最後の住所地
(3)申出人の住所地
(4)故人名義の不動産の所在地
※お勧めは管轄の法務局に事前に電話して、法定相続情報一覧図の作成相談の予約を取得して、準備した書類を持参することです。
4.法務局に持参(申出)してから概ね1週間程度(混雑状況により変動します)により交付されることになります。
※交付手数料は無料、枚数も複数枚の発行が可能です。
5.交付される法定相続情報一覧図(認証付き)のイメージ図は以下の通りです。
法定相続情報一覧図作成の必要書類
自分で戸籍収集しないほうが良いパターン
ケースによっては大変多くの市区町村に対して戸籍収集をする必要があります。この記事の事例では配偶者と子供がいるパターンを想定しており比較的簡単に戸籍を収集をすることができます。
しかし子供も親もいないケースで、亡くなった方の兄弟姉妹が相続人とな場合は戸籍収集の手続きが大変になる可能性があります。こういった場合においては、専門家に戸籍収集を依頼したほうが安心です。
相続登記のQ&A
相続登記の際、法定相続情報一覧図に住所表記も入れている場合でも、相続登記のために、被相続人の住民票の除票・相続人の住民票は必要?
記簿上の住所と法定相続情報一覧図の住所が一致しない可能性があるため、取得した方が無難です!被相続人の戸籍の附票も同様です。
まとめ
戸籍の収集についてはケースバイケースとなりますが、シンプルなパターンであればご自身で比較的簡単に収集することが可能です。
また市区町村の戸籍課に直接行って頂ければ親切に対応して頂けるため戸籍の事に詳しくなくても大丈夫です。この記事が戸籍の収集及び法定相続情報一覧図の作成に少しでもお役に立てれば幸いです。
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