

円満相続税理士法人 代表税理士
『最高の相続税対策は円満な家族関係を構築すること』がモットー。日本一売れた相続本『ぶっちゃけ相続』シリーズ12万部の著者。YouTubeチャンネル登録者8万人。2022年7月に長男が産まれました。
贈与を受けてから3年経つ前に、父が亡くなってしまいました。この場合、相続税の計算はどうなりますか?
円満相続税理士法人の橘です。
生前贈与をしてから3年以内に、贈与した方が亡くなった場合には、その贈与はなかったものとして相続税を計算しなければいけません。これを『生前贈与の3年内加算』といいます。
ただし、これは限られた人にだけ適用されるルールであり、3年内加算の対象とされていない人に贈与をするなら、このルールは適用されません。
極端な話、亡くなる1日前に行った贈与でも、相続税の対象から外すことができるのです。
この記事では、日本一売れた相続本の作者である私が、生前贈与の3年内加算について徹底的に解説します。
最後までお読みいただければ、より多くの財産を次世代に残すことができるようになりますよ♪
生前贈与3年内加算とは?
生前贈与の3年内加算とは、亡くなる前3年以内に行われた生前贈与はなかったものとみなして相続税を計算する、というルールです。
事例を使って解説していきましょう。
例えば、ここに甲さんという方がいたとします。
この甲さんはX1年の時点で財産が1億円あります。
このままだと将来、相続税がかかってしまうなぁ
と思い、子供に対して生前贈与をしようと考えました。
まずは、X1年に子供に対して300万円の生前贈与を行いました。
非課税となるのは110万円ですので、300万円に対して贈与税が課税されます。この場合の贈与税は19万円です。
お金をもらった子供は、しっかりと贈与税の申告をして贈与税も支払いました。
そして、同じことをX2年、X3年と順調に繰り返していきました。
しかし、残念なことに、X4年に、甲さんは亡くなってしまいます。
もともと1億円持っていた甲さん。
生前贈与で300万円ずつ財産が減っていますので、亡くなった時にいくら手元に残っているかというと…
9100万が手元に残っていました。

残された家族は、
元々1億円あった財産が9100万まで少なくできたなら、少しは相続税を減らせたね
と思っていました。
しかし、残念なことに、ここで出てくるのが3年内加算のルールです。
このルールは、亡くなった日を起点として遡ること過去3年間に行われた生前贈与で渡した財産は、亡くなった時の財産に足し戻して相続税を計算しなければいけないのです。
つまり、この甲さんの場合には、結局1億円に対して相続税が課税されてしまうのです!

一生懸命、生前贈与してきた意味がないじゃないー!
二重課税を防ぐための贈与税額控除
勘の鋭い方だとここで疑問がでてくると思います。
それは…
1億円に相続税が課税されるなら、既に払った贈与税はどうなるの?二重課税じゃない!
一度課税された財産に、もう一度税金を課税するのは二重課税といって、あってはならないことです。
そこで、この場合には、一度1億円から相続税を計算した後に、既に支払いが終わっている贈与税を、相続税から差し引いて最終的に納税することになります。
この取扱いがあるため、税金が二重で取られるということはありません。
つまり、贈与をして損するということはないのです。
しかしながら、贈与してから3年以内に亡くなってしまった場合には、節税の効果は生じないことになります。

110万円以下の生前贈与も対象
110万円以内の贈与であれば、3年ルールは関係ないですか?
3年ルールは110万円以内の贈与にも適用されます。
贈与税の申告をしているかどうかは関係ありません。
この制度は、元々、相続税を少なくすることだけを目的として、亡くなる直前に駆け込みで生前贈与をすることを防ぐ目的で導入されました。
生前贈与は早いうちからコツコツはじめるのがオススメです
孫への生前贈与は対象外
実はこの3年内加算のルールは、誰に対しても適用されるわけではありません。
適用される人は限定されています。
このルールを受けるのは、『相続又は遺贈により財産を取得した人』とされています。
わかりやすくいうと、将来、相続人になる人です。
例えば、この方が亡くなった時の相続人は誰かというと

奥さんと、子供の2人です。
この人たちに対して行われる生前贈与は3年経たないと節税の効果が表れません。
では、どうすればいいかというと…
ここで出てくるのがお孫さんの存在です。
お孫さんは、お爺ちゃんからすると相続人にあたりません。
お孫さんに対する生前贈与は、原則として、3年内加算の対象にはならないのです。
本当に極端な話をすると、亡くなる1日前に孫に110万円を贈与した場合には、その110万円には税金はかからないのです。
新聞や雑誌なんかで「孫への贈与は有利!」と見たことがある人も多いのではないでしょうか?
孫への贈与が有利な理由は、この3年内加算のルールに該当しないからなんですね。
また、このことはお孫さんだけではなく、子供の配偶者(お婿さん&お嫁さん)にも同じことが言えます。お婿さんやお嫁さんに対する生前贈与も、原則として3年内加算の対象となりません。
ただ、お婿さんやお嫁さんに生前贈与をして、もしその後に子供が離婚した場合には、そのお金は返ってきません。
そのことから、お婿さんやお嫁さんに贈与をすることは、心理的に違和感をもつ人が多いのも事実です(贈与はするけど離婚したら返せ、ということはできないので)。
【例外】孫でも対象になるケース
相続人ではない孫への贈与は原則として3年内加算の対象にはなりません。
しかし例外的に、孫であっても3年内加算のルールに引っかかることがあります。
遺言書がある場合
まず一つ目は、遺言書がある場合です。
どういった遺言書かというと、
私が死んだ時には、孫にも財産残しますよ
という内容の遺言書です。
こういった遺言書がある場合には、その孫は相続人と同じように3年内加算の対象となります。
生命保険がある場合
二つ目は、生命保険がある場合です。
どういった生命保険かというと、
私が死んだ時には、孫に保険金をだしますよ
という契約の生命保険です。
こういった生命保険がある場合には、その孫は相続人と同じように3年内加算の対象となります。
ちなみにですが、相続人ではない孫が受取人である生命保険は、生命保険の非課税枠(500万×相続人の人数)の適用はありません。
孫が受取人の生命保険は、税金的には非常に損する可能性がありますので、気になる方はこちらの記事もご覧ください。
特例を使った生前贈与は対象外
住宅資金や教育資金贈与の特例を使って贈与した財産については、原則として3年内加算の対象となりません。
『原則として』というのは、教育資金の一括贈与の特例について税制改正が入ったため、一定の条件に該当してしまうと、3年内加算の対象となります。詳しく知りたい方は、こちらの記事をどうぞ。
ちなみに相続時精算課税制度を使っている場合には、3年どころではなく、何十年でも遡って加算の対象となります。※相続時精算課税制度について詳しく知りたい人はこちら
【税制改正】3年の期間が延長へ
相続で財産をもらう人への生前贈与は3年経たないと効果はでてきません。
駆け込みの生前贈与で税金を何とかすることはできませんので、贈与をするのであれば、初めからお元気なうちに始めることが大切です。
この記事を執筆している2022年時点において、政府から『3年内加算の期間をもっと長くしよう。そして孫たちもこのルールの対象にしよう』という恐ろしい話がでてきています。
2022年以降の税制改正を要チェックですね。詳しくはこちらの動画で解説しました。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました(^^)/