財産評価基本通達6項

こんにちは、円満相続税理士法人の中岡です。

令和4年4月19日の最高裁判決は、皆様も注目されたことと思います。

伝家の宝刀とも呼ばれる、財産評価基本通達6項を適用した税務署側が勝訴し、納税者に2億円以上の追徴課税が課されることとなりました。

6項ってなに?伝家の宝刀って呼ばれているの?

税務署に好き勝手に6項を使われると、安心して相続税申告ができないよ。。。

今回は、この6項とは何なのか、最高裁判決はどのようなものだったのか、どのような場合に適用されるのかについて、わかりやすく解説します。

また、最高裁判決以外の適用事例についても、紹介していきます。

最後までお読みいただけると、通達6項が適用されるリスクが大きくなる場合や、不動産を活用した相続税対策において気を付けるべきことが分かるようになりますよ♪

不動産を活用した相続税対策とは?

いきなり不動産の話?

財産評価基本通達6項の適用により、否定されたのは、不動産を活用した相続税対策なんです

まず、本題に入る前に、不動産を買ったらなぜ相続税対策になるのか、解説していきます。

家屋の相続税評価方法

家屋の相続税評価は、割とわかりやすくて、固定資産税評価額をそのまま使います。

固定資産税評価額は、毎年市区町村から送られてくる、固定資産税課税明細書に記載されていますよ。

では、固定資産税評価額はどのように決められているのかというと、材料や設備、施工方法などによって決まり、建築価格の50%~70%と言われています。

なので、1億円で建てたアパートの相続税評価額が5000万円~7000万円になるということがあり得ます。

これが、「アパートを建てたら、相続税対策になりますよ」と言われる理由です。

タワーマンション(タワマン)節税

タワーマンションでは、先ほど、50%~70%とお話しした、固定資産税評価額が、なんと20%くらいになることがあります。

それは、固定資産税評価額が材料などで決められており、タワーマンションの立地や階数などによる人気度が全く加味されていないからです。

≫家屋の評価やタワマン節税について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。

令和5年度税制改正大綱

令和5年度税制改正大綱では、以下の文章が盛り込まれました。

マンションの評価方法の適正化を検討するとのことです。

タワマン節税が封じられるのか、今後の議論が注目されるところです。

財産評価基本通達6項とは?

さて、ここからが本題です。

まずは、財産評価基本通達6項がなになのか、なぜ伝家の宝刀なのか、説明していきますね。

財産評価基本通達

財産評価基本通達とはなんでしょうか?

相続税評価の方法が定められた法律でしょうか?

いえ、通達というのは、お役所内部のマニュアルのことなんです。

法律である相続税法では、亡くなった日の時価で課税するという内容のことしか書かれていません。

上場株式なら容易に時価が分かりますが、不動産など簡単に時価の分からないものをどのように評価するのか、実務的にもかなり困りますし、納税者がそれぞれに様々な評価方法で行うと、納税者によって不公平が生じます。

そこで、実務を簡便にし、不公平が生じないよう、国税庁が定めたマニュアルが財産評価基本通達です。

法律ではなく、あくまでマニュアルなのですが、税務調査でも財産評価基本通達に則って指摘されますので、実質的には法律と同じような機能を果たし、我々税理士も、国税庁お墨付きのこのマニュアルを基本に、相続税評価を考えます。

6項

それじゃあ、財産評価基本通達に従って、評価を行っていれば何も問題ないのでは?

基本的には問題ないのですが、行き過ぎた節税が行われた場合などに、適用されるのが6項なのです。

財産評価基本通達6項は、どのような内容なのでしょうか? 以下に抜粋します。

財産評価基本通達に従って評価をすることが著しく不適当と認められる場合は、財産評価基本通達に従わなくてよいということです。

(正確には、財産評価基本通達6項も財産評価基本通達の範囲内なので、財産評価基本通達の他の定めに従わず、国税庁の指示を受けて評価するということです。)

なお、第1章総則に書かれていますので、総則6項とも呼ばれます。

(以下、通達6項と呼びます。)

つまり、タワーマンションを買って著しく評価額を下げた場合など、固定資産税評価額で評価することが著しく不適当と認められる場合は、通達6項を適用して、購入価額や不動産鑑定評価額などで評価されることがあり得るということです。

伝家の宝刀

通達6項が適用される場面は、具体的に定められていませんが、これが税務署の独断で好き勝手に適用されると、内部マニュアルである財産評価基本通達に従った相続税評価が頻繁に覆されることになってしまいます。

そのため、むやみやたらには適用されず、いざというときの最終手段として、伝家の宝刀と呼ばれてきました。

令和4年4月19日最高裁判決

次に、この通達6項の適用が裁判所にも認められた、令和4年4月19日最高裁判決を解説していきます。

概要

平成21年に約10億円もの銀行借入を行い、2つの不動産を約14億円で購入しました。

そして、平成24年にお亡くなりになり、相続人は、財産評価基本通達に基づく評価額約3億円で相続税の申告を行いました。

買ったときは、約14億円でしたが、相続税評価額にすると約3億円と、約11億円も評価額が引き下げられています。

これにより、基礎控除以下となり、相続税額ゼロ円で申告を行いました。

なお、これらの取引がなかったとすると、相続税が課税される財産は6億円を超える金額であったとのことです。

その後、平成25年に1つの不動産は、買ったときとほぼ同じ金額で売却しています。

これに対し、税務署は、通達6項を適用し、不動産鑑定士による不動産鑑定評価額で評価することが妥当であるとして、約2億円の相続税及び過少申告加算税の支払いを求めました。

最高裁判所まで争いましたが、結局、税務署側が勝訴して、通達6項の適用が認められたという事案です。

判決のポイント

最高裁判決では、税務署側を支持した理由として、以下のようなことが挙げられています。

相続税の負担が著しく軽減されている

近い将来相続が発生することを予見できた

相続税の負担を免れることを期待し、あえて借入・不動産購入を実行した

このような借入・不動産購入をできない他の納税者との著しい不均衡がある

その他の事例

令和3年4月27日東京高裁判決(令和2年11月12日東京地裁判決)

肺がんに罹患していることが分かってから、すぐに全額借入で不動産を購入した事例です。

平成23年7月1日審判所裁決

亡くなる直前に不動産を購入し、相続人が1年もしないうちに売却してしまった事例です。

リスクを少なくするために

令和4年4月19日最高裁判決やこれまでの事例を踏まえると、以下のことに当てはまると、通達6項を適用されるリスクが大きくなると想定されます。

購入価額と相続税評価額との著しい乖離による、税負担の著しい不均衡

相続開始直前の購入

多額の借入による購入

経済合理性の欠如(相続税の縮減以外に理由がない)

相続開始後の売却

まとめ

通達6項について、ご理解いただけたでしょうか?

必要以上に恐れる必要はありませんが、通達6項が適用されるリスクも十分に考慮しましょう。

また、通達6項は、不動産以外に、非上場株式などにも適用されることがあります。

不動産を活用した相続税対策を検討される際は、相続に強い税理士に相談してみることをオススメします!

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最後までお読みいただきありがとうございました!

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