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低額譲渡と値引販売の差とは?法人,贈与,所得課税される時価評価の目安

低額譲渡

【この記事の執筆者】

相続税の研究を愛する相続専門の税理士。23歳で税理士試験に合格し、国内最大手の税理士法人で6年間の修行を積んだのちに独立。円満相続税理士法人の代表を務める。不動産鑑定士を目指して日々奮闘中!

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こんにちは。税理士の橘です。

 

今日は、『値引き販売』と『低額譲渡』の違いについてお話していきます。この論点は、税金の世界を理解していく上で、非常に、非常に、非常に大事な考え方になっていきます!全ての税法の根幹をなす論点なので、是非、最後まで読んでいってください(5分もかからないと思います)

 

 

今日のテーマは税法上の【時価】とは何ぞや?ということを解説していきます!

低額譲渡とは何ぞや?

税金の世界には、『時価を下回る金額で取引した場合には、時価との差額に税金を課す』という考え方があります。これを『低額譲渡』といいます。

 

何税がかかるかは、取引の相手によって変わります。

 

【贈与税が課税される場合】父と子の間ような個人間の取引の場合には、贈与税が課税されます。時価1億円の土地を子供に1000万円で売却すれば、差額の9000万円に対して贈与税が課税されます。

低額譲渡 贈与税

【法人税が課税される場合】法人間だった場合には、法人税が課税されます。A社から得意先であるB社に対して、いつものお礼として時価1億円の土地を、1000万で売却した場合には、B社は9000万得したことになるので、9000万円分の利益(これを受贈益といいます)を計上して、その分の法人税を払います。

 

※ちなみに、この場合においてA社側は9000万円を経費として計上できるのかというと、これができないんですよね。会計処理上は『寄付金』として計上することが可能ですが、法人税法上は何でもかんでも経費と認めると、簡単に法人税の負担を減らせてしまうので、寄付金を損金に算入できる金額には限度があるんです。基本的には、ほとんど損金にできません。

 

【所得税が課税される場合】法人と個人の間における取引の場合には、所得税が課税されます。例えば、会社と社長の間で、会社が所有する時価1億円の土地を社長に対して1000万で売却した場合には、差額の9000万は社長に対する賞与(ボーナス)として、社長に対して所得税が課税されます(給与所得)。そして会社側は、届出書を提出していない賞与に該当するため損金算入が認められないという、法人個人のダブルパンチを受けることになります。

低額譲渡の趣旨

そもそも何故、このようなルールを税金の世界では採用しているのかというと、このルールがないと、みんな税金を簡単に誤魔化してしまえるからなんです。先ほどの贈与税が課税されるケースというのが最たる例で、時価1億円の土地を1000万で売却してOKなら、お父さんが亡くなってしまう直前に、『お父さん!この売買契約書にサインして!!』と契約して、相続財産を9000万円分圧縮できます。結果として相続税を1円も払わなくてよくなるかもしれません。

 

これでは正直に相続税を払っている人と比べて不公平ですよね。また法人間の取引においても、多額の利益がでた会社が、『あぁ。法人税払いたくないなぁ。なんか良い方法ないかなぁ』と考え、1億円で土地を買ってきて、それを1000万で友人の会社に売却して9000万の損失を計上すれば、法人税を大幅に減らすことが可能です。

 

 

このように、売買価格を意図的に操れば、税金の支払いを簡単に減らすことができるので、税務署としては、時価とかけ離れた取引をして税金を誤魔化していないか、常日頃から納税者を監視しているわけです。

なら、値引き販売も問題になるのでは?

私も税理士受験生時代、この矛盾にぶつかったことがあります。時価を下回る取引をすると、差額に税金がかかるなら、世の中で行われているバーゲンセールはどうなってしまうんだ?

 

ただ、税理士試験に合格し、実務で修業を積んだことによって、この矛盾について説明できるようになりました(^^♪受験用のテキストには書いていない考え方になると思うので、期待してくださいね!

 

この矛盾を解く鍵は、税法上の時価の考え方にあります。まず、時価とは何ぞや?という話になるのですが、時価の意義は相続税法の財産評価基本通達第1項に規定があります。

2) 時価の意義
 財産の価額は、時価によるものとし、時価とは、課税時期において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額は、この通達の定めによって評価した価額による。

大事なのは、『不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額』という部分です。

 

ここを細分化して要約すると、『不特定多数の当事者間』は『赤の他人同士の間』と読み替えます。『自由な取引が行われる場合』は、『売り急ぎとかかがない場合』と読み替えます。『通常成立すると認められる価額』は、『普通このくらいの金額になるでしょ』と読み替えます。これをつなげると…

 

『赤の他人同士の間で、売り急ぎとかがない場合には、普通このくらいの金額になるでしょ』

 

これが時価です!

 

最大のポイントは『赤の他人同士』という点です。本来、人間は合理的な生き物なので、売る側は1円でも高く売りたい、買う側は1円でも安く買いたいという気持ちがあります(皆さんもそうですよね)。そして、この2つの気持ちが重なり合う金額で売買が成立します。純粋な2つの気持ちが重なった価格こそを、時価と呼ぶわけです。

 

一方で、これが赤の他人ではなく、親子間だったら?

 

親子の間であれば、先ほどのように『1円でも高く』『1円でも安く』という発想には通常なりません。『自分の可愛い子供だし、いくらでもいいや』という気持ちになるのです。そうすると、『赤の他人に対してだったら考えられないような価格』で取引してしまうことが多々あるのです。このような取引こそが、時価とかけ離れた価格での取引(つまり低額譲渡)に該当するのです。

 

なので、税務上の時価という考え方を理解するポイントは、金額そのものに着目するのではなく、①取引当事者の関係性と、②取引金額がどのように決められたかというプロセス、に着目する、ということなんです。

 

まずは、親子間、グループ法人間、会社と役員間(従業員間)など、価格を自分達で自由に決めることができてしまう間柄の取引は要注意です!税務署の人たちも、こういった間柄での取引を注意深く監視しています。

 

しかし、上記のような間柄であったとしても、例えば仲の悪い親子や兄弟間の場合には、『1円でも高く売りたい』『1円でも安く買いたい』という気持ちがぶつかることも想定されます。このようなケースにおいては、価格決定に際して、間に弁護士を入れて協議をしたり、何度もお互いの意見をぶつけ合って決まった価格ということが説明できれば、それが時価として扱われます。これが②の取引金額がどのように決められたかというプロセスです。

 

①と②両方大事ですが、考え方のコツとしては、『赤の他人に対しても、この金額で売るか?』という目線で考えておけばOKです。この質問に自信満々でYESと言えなければ、それは時価とは呼べない可能性が高いのです。

 

これを踏まえて、値引き販売について改めて考えてみましょう。

 

小売業(デパートとか)における売り手と買い手の関係性は、通常、完全なる第三者(赤の他人)ですよね。例えば、昨日まで10万円で売っていたバックを、今日から3万円に値引きし、3万円で売れたとします!この場合の時価は、10万円ではなく3万円なんです。何故なら、『不特定多数の当事者間で自由な取引をした場合に成立した価格』が3万円だったからです。

 

しかしこれがもし、通常10万円でしか買えないバックを、その会社の役員だけに3万円で売ったとしたら、これは低額譲渡に該当し、役員に対して7万円の給与を払ったものとして所得税が課税されます。

 

※ちなみにですが、アパレル業界では、社員割引として自社の社員に商品を格安で販売してるケースもありますよね?このような社割に対しては、法人税法の基本通達(36-23)で取り扱いを定めていて、基本的には給与課税しますが、30%以上の値引きをしないこと等を要件に、特別に給与課税しない旨を明示しています。

 

ということで、値引き販売においては、値引きした価格こそが時価になるので、税務上全く問題ないということになります(*^^*)

 

このように、税法上の時価は、ふんわりした概念なんですね。この考え方は、法人税でも、所得税でも、相続税でも、全て共通です。

 

時価を把握することが難しい時に使うのが、財産評価基本通達

これで、時価の考え方については理解できたと思いますが、実際問題、デパートのバーゲンセール等と異なり、自分が所有している不動産などには、多くの人が『その土地〇〇円で売ってー!』というオファーを日常的にしてくれるわけではありません。これでは時価を把握することができません。

 

そこで、国税庁は『時価を把握することが難しい財産については、こんな感じで計算した金額を時価としてOKでっせ~』というルールブックを作りました。それが財産評価基本通達です。統一化されたルールブックなので、基本的にこれに基づいて計算すれば、みんな平等に税金計算ができるわけですね。

 

ただ、知っておいて欲しいのは、財産評価基本通達は法律ではない、ということです。国税庁が勝手に作ったルールブックに過ぎないのです。

 

税法上はあくまで『時価』としか定義されていませんので、財産評価基本通達に基づいて計算した結果、明らかに実際の時価よりも高く評価されてしまうような場合には、不動産鑑定士などの専門家が算出した評価額を時価として扱ってもOKです!(まぁ、税務署がすんなりと認めてくれるわけではありませんが)

 

その裏付けとして、財産評価基本通達の第6項には『この通達の定めにより難い場合の評価』というものが定められており、

この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。

と規定しています。つまり国税側としても、『財産評価基本通達が絶対じゃないよね』というスタンスをとっています。国税がそのスタンスでOKなら、当然、納税者側もOKです。

 

まとめ

ということで、『値引き販売』は第三者間において成立した価格なので問題なし!『低額譲渡』は赤の他人にはその金額で売らへんやろー、という価格なので問題あり!という違いになります。

 

この考え方は、近年盛んに行われているM&Aでも同じです。例えば純資産10億円の会社でも、将来性やブランド価値を見込んで15億円で買収したとします。純資産価格を大きく超える取引ですが、差額の5億円に贈与税が課税されたり、寄付金の損金不算入扱いになったりはしませんよね。M&Aにおいても、純粋な第三者間の合意で決まった価格こそが時価になるので、その金額に対してまで税務署は文句を言ってこないわけです(*^^*)※この差額のことを『のれん』や『営業権』といいます。

 

この論点がわかっていると税法の理解のスピードが段違いにあがりますよね♪

 

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