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  • 低額譲渡と値引販売の差とは?法人・贈与・所得課税される時価評価の目安!

時価1億円の土地を、可愛い孫に1000万円で売却していいですか?

その価格で売却することは自由ですが、差額の9000万に贈与税が課税されますよ。時価より低い金額で売買することを『低額譲渡』といい、贈与税の対象になります

でも、世の中では『バーゲンセール80%OFF』とかやってますよね?購入した人全員に贈与税がかかるんですか?

それは『値引販売』なので、贈与税の問題はありません

低額譲渡と値引販売は何が違うんですか?

今回の記事でわかりやすく違いを解説していきますね。この記事を最後まで読めば、税法上、非常に大切な『時価の概念』を理解できるようになりますよ※税理士受験生は絶対最後まで読んだ方がいいです!

低額譲渡とは

税金には時価を下回る金額で取引した場合には、時価との差額に税金を課すという考え方があります。

これを『低額譲渡』といいます。何税がかかるかは取引の相手によって変わります。

贈与税が課税される場合

父と子の間ような個人間の取引の場合には、贈与税が課税されます。

時価1億円の土地を子供に1000万円で売却すれば、差額の9000万円に対して贈与税が課税されます。

低額譲渡(贈与税)

法人税が課税される場合

法人間だった場合には、法人税が課税されます。

A社から得意先であるB社に対して、いつものお礼として時価1億円の土地を1000万で売却した場合には、B社は9000万得したことになるので、9000万円分の利益(これを受贈益といいます)を計上し、その分の法人税を払います。

※この場合においてA社側は9000万円を経費として計上できるのかというと・・・できません!会計処理上は『寄付金』として計上することが可能ですが、法人税法上は何でもかんでも経費と認めると、簡単に法人税の負担を減らせてしまうので、寄付金を損金に算入できる金額には限度があります。基本的にはほとんど損金にできません。

所得税が課税される場合

法人と個人の間における取引の場合には、所得税が課税されます。

例えば会社と社長の間で、会社が所有する時価1億円の土地を社長に対して1000万で売却した場合には、差額の9000万は社長に対する賞与(ボーナス)として、社長に対して所得税が課税されます(給与所得)。

そして会社側は、届出書を提出していない賞与に該当するため損金算入が認められないという、法人個人のダブルパンチを受けることになります。

低額譲渡の趣旨

そもそも何故、このようなルールを税金の世界では採用しているのかというとこのルールがないと、みんな税金を簡単に誤魔化してしまえるからなんです。

先ほどの贈与税が課税されるケースというのが最たる例で、時価1億円の土地を1000万で売却してOKならお父さんが亡くなってしまう直前に、

お父さん!この売買契約書にサインして!

契約して相続財産を9000万円分圧縮できます。結果として相続税を1円も払わなくてよくなるかもしれません。

・・・これでは正直に相続税を払っている人と比べて不公平ですよね?

また法人間の取引においても多額の利益がでた会社が、

あー!法人税払いたくないなぁ・・・なんか良い方法ない?

と考えて1億円で土地を購入し、1000万で友人の会社に売却して9000万の損失を計上すれば、法人税を大幅に減らすことが可能です。

このように売買価格を意図的に操れば、税金の支払いを簡単に減らすことができるので税務署としては時価とかけ離れた取引をして税金を誤魔化していないか、常日頃から納税者を監視しています。

値引き販売が問題にならない理由

私も税理士受験生時代この矛盾にぶつかったことがあります。時価を下回る取引をすると差額に税金がかかるなら、世の中で行われているバーゲンセールはどうなってしまうんだ?

ただ税理士試験に合格し実務で修業を積んだことによって、この矛盾について説明できるようになりました(^^♪受験用のテキストには書いていない考え方ですので期待してください!

そもそも『時価』とは

この矛盾を解く鍵税法上の時価の考え方にあります。まず時価って何?という話ですが、時価の意義は相続税法の財産評価基本通達第1項に規定があります。

(2) 時価の意義
財産の価額は時価によるものとし、時価とは課税時期において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額はこの通達の定めによって評価した価額による。

大事なのは不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額という部分です。

ここを細分化して要約すると

『不特定多数の当事者間』は『赤の他人同士の間』と読み替えます。

『自由な取引が行われる場合』は『売り急ぎとかかがない場合』と読み替えます。

『通常成立すると認められる価額』は『普通このくらいの金額になるでしょ』と読み替えます。

これをつなげると…

『赤の他人同士の間で、売り急ぎとかがない場合には、普通このくらいの金額になるでしょ』

これこそが時価です!

最大のポイントは『赤の他人同士』という点です。本来人間は合理的な生き物なので、売る側は1円でも高く売りたい、買う側は1円でも安く買いたいという気持ちがあります。(皆さんもそうですよね!)

そしてこの2つの気持ちが重なり合う金額で売買が成立します。純粋な2つの気持ちが重なった価格こそを時価と呼ぶわけです。

一方でこれが赤の他人ではなく親子間だったら?

親子の間であれば、先ほどのように『1円でも高く』『1円でも安く』という発想には通常なりません。

自分の可愛い子供だし、いくらでもいいや!

という気持ちです。

そうすると『赤の他人に対してだったら考えられないような価格』で取引してしまうことが多々あります。このような取引こそが時価とかけ離れた価格での取引(つまり低額譲渡)に該当します。

なので税務上の時価という考え方を理解するポイントは、金額そのものに着目するのではなく以下の2点に着目します。

① 取引当事者の関係性

② 取引金額がどのように決められたかというプロセス

まずは親子間・グループ法人間・会社と役員間(従業員間)など、価格を自分達で自由に決めることができてしまう間柄の取引は要注意です!税務署の人たちもこういった間柄での取引を注意深く監視しています。

しかし上記のような間柄であったとしても、例えば仲の悪い親子や兄弟間の場合には『1円でも高く売りたい』『1円でも安く買いたい』という気持ちがぶつかることも想定されます。

このようなケースにおいては価格決定に際して、間に弁護士を入れて協議をしたり、何度もお互いの意見をぶつけ合って決まった価格ということが説明できれば、それが時価として扱われます。これが②の取引金額がどのように決められたかというプロセスです。

①と②両方大事ですが考え方のコツとしては『赤の他人に対しても、この金額で売るか?』という目線で考えておけばOKです。この質問に自信満々でYESと言えなければそれは時価とは呼べない可能性が高いです。

値引きされた価格こそが時価

これを踏まえて値引き販売について改めて考えてみましょう。

小売業(デパートとか)における売り手と買い手の関係性は、通常完全なる第三者(赤の他人)ですよね。

例えば昨日まで10万円で売っていたバックを、今日から3万円に値引きし、3万円で売れたとします!この場合の時価は10万円ではなく3万円です。何故なら『不特定多数の当事者間で自由な取引をした場合に成立した価格』が3万円だったからです。

しかしこれがもし通常10万円でしか買えないバックを、その会社の役員だけに3万円で売ったとしたら、これは低額譲渡に該当し役員に対して7万円の給与を払ったものとして所得税が課税されます。

※アパレル業界では、社員割引として自社の社員に商品を格安で販売してるケースもありますよね?このような社割に対しては、法人税法の基本通達(36-23)で取り扱いを定めていて、基本的には給与課税しますが30%以上の値引きをしないこと等を要件に、特別に給与課税しない旨を明示しています。

ということで値引き販売においては値引きした価格こそが時価になるので、税務上全く問題ないということになります(*^^*)

このように税法上の時価はふんわりした概念です!この考え方は法人税でも、所得税でも、相続税でも、全て共通です。

財産評価基本通達の位置づけ

これで時価の考え方については理解できたと思いますが、実際問題デパートのバーゲンセール等と異なり、自分が所有している不動産などには、多くの人が『その土地〇〇円で売ってー!』というオファーを日常的にしてくれるわけではありません。これでは時価を把握することができませんよね?

そこで国税庁はルールブックを作りました。それが財産評価基本通達です。

時価を把握することが難しい財産は、こんな感じで計算した金額を時価としてOKよ!

統一化されたルールブックなので基本的にこれに基づいて計算すれば、みんな平等に税金計算ができるわけですね。

ただ知っておいて欲しいのは財産評価基本通達は法律ではない、ということです。国税庁が勝手に作ったルールブックに過ぎないのです。

税法上はあくまで『時価』としか定義されていませんので、財産評価基本通達に基づいて計算した結果、明らかに実際の時価よりも高く評価されてしまうような場合には、不動産鑑定士などの専門家が算出した評価額を時価として扱ってもOKです!(税務署がすんなりと認めてくれるわけではありませんが・・・)

その裏付けとして財産評価基本通達の第6項には『この通達の定めにより難い場合の評価』というものが定められており、

この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。

と規定しています。つまり国税側としても『財産評価基本通達が絶対じゃないよね』というスタンスをとっています。国税がそのスタンスでOKなら当然納税者側もOKです。

まとめ

ということで・・・

『値引き販売』は第三者間において成立した価格なので問題なし!

『低額譲渡』は赤の他人にはその金額で売らへんやろーという価格なので問題あり!

という違いになります。

この考え方は、近年盛んに行われているM&Aでも同じです。

例えば純資産10億円の会社でも将来性やブランド価値を見込んで15億円で買収したとします。純資産価格を大きく超える取引ですが、差額の5億円に贈与税が課税されたり、寄付金の損金不算入扱いになったりはしませんよね。

M&Aにおいても純粋な第三者間の合意で決まった価格こそが時価になるので、その金額に対してまで税務署は文句を言ってきません(*^^*)

※この差額のことを『のれん』や『営業権』といいます。

この論点がわかっていると税法の理解のスピードが段違いにあがりますよ♪

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