円満相続税理士法人 パートナー税理士
相続税申告200件以上、相続不動産の売却でお困りの方を含め3,000人以上のお客様を担当してきた相続専門の税理士。大手税理士事務所で勤めてきた経験と資格の大原にて相続税法の非常勤講師を務めた経験から、金融機関やお客様向けセミナーでは分かりやすさに定評がある。
親の不動産を相続したのですが登記しないとまずいですか?
税理士の大田です。亡くなった方が不動産を持っていた場合には「不動産の相続登記(所有権移転登記)」を行う必要があります。私はこれまで、たくさんの方の相続手続きに携わってきましたが、「相続登記」は必ずと言っていいほど登場します。できれば速やかに登記することをお勧めします。
登記は義務ではないので、やらなくても問題ないですよね?
実は相続登記は令和6年4月1日から義務化され、相続を知ってから3年以内にしなければなりません。もしこれを怠ると、10万円以下のペナルティがかかります。
改正で変わったんですね。
他にも登記をしておかないと、親族間で揉める原因になったり、後々税務調査で問題になることもあるのです。もし不動産を売りたくても即座に売却できず、売り時を逃してしまうということにもなりかねません。
では速やかにやりたいと思います。具体的な手続きの流れはどうなるでしょうか。
こちらの記事では、「不動産の相続登記を自分で行う方法」について解説します!
一般的な相続登記の流れや必要書類、費用感などを中心に解説していきます。「相続登記をまずは自分でやってみようかな」という方にとって必見の内容になっていますので、是非最後までご覧ください♪
相続登記の全体像
まずは、相続登記のひと通りの流れをみていきましょう。
全体の流れは、大きく次の3つです。
STEP① 必要書類を集める
まずは、戸籍や住民票などの資料を集めるところからスタートします。
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STEP② 不動産の分け方を決める
不動産を、「誰が」「どのくらいを」引き継ぐかを決めていきます。遺言書の内容に沿って分けるのか、相続人同士話し合って分けるのかの2つの方法があります。
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STEP③ 相続登記の申請書を作成する
申請書を作成し、法務局へ提出します。ここまで終われば登記完了です♪
いかがでしょうか。意外と流れはシンプルですね♪
全体像が分かったところで、ステップごとに確認していきましょう。
【ステップ1】必要書類を集める
手続きを進めるにあたり、一番大変なのが「必要書類の収集」です。二度手間、三度手間にならないように、1つずつ確認していきましょう。
どのような場合でも必要になる書類は、下記の6点です。
● 亡くなった方の戸籍(出生~死亡時)
● 相続人の戸籍(現在)
● 亡くなった方の住民票の除票(本籍地あり)
● 不動産を取得する方の住民票(本籍地あり)
● 固定資産評価証明書
● 不動産の登記事項証明書
亡くなった方の戸籍(出生~死亡)
こちらは、相続人を確定させるために必要です。出生からの戸籍を調べるのは、他に隠し子がいないかを確認するという目的があります。これによって、前妻との子供(除籍している場合)や、認知している婚姻外の子(愛人の子など)を見つけることができます。
戸籍は、亡くなった方の本籍地の市役所(区役所)へ請求します。「転籍」や「婚姻」などで本籍が変わっている場合には、更に前の本籍へ請求する必要があります。遠方の市役所に本籍がある場合などは、定額小為替を使った、郵送でのやり取りが便利です。各市区町村によって申請方法が異なりますので、郵送での申請方法について事前に確認していただくことをお勧めします。
取得料金は1通あたり750円ですので、すべて揃えるためには計2,000円-3,000円程かかることが多いです。
ちなみに遺言書がある場合、亡くなった方の死亡時の戸籍のみで構いません。
また以前、戸籍の収集に関して更に詳しく解説した記事もありますので、併せてご覧ください。
相続人の戸籍(現在)
亡くなった時点で、相続人が存命かどうかを確認するために必要です。
これも、相続人の本籍地の市役所(区役所)へ請求します。相続人である配偶者や子供が、同じ戸籍に入っていることもありますので、その場合は亡くなった方の戸籍があれば、相続人分をとる必要はありません。取得料金は、1通あたり450円かかります。
ちなみに遺言書がある場合、相続人の戸籍は必要ありません。
亡くなった方の住民票の除票
住民票の除票を取得することで、亡くなった方の死亡時の住所を確認できます。
同一人物であるか確認するため、登記上の住所と死亡時の住所が一致しているかを見ていきます。まれに、住所が一致しない場合があるのですが、その場合は、「戸籍の附票」を代わりに取得します。
亡くなった方の本籍地の記載があるものを取得しましょう。取得料金は、1通あたり350円かかります。
不動産を取得する方の住民票
不動産を取得する方の住所を確認するために必要です。
不動産を取得しない他の相続人は、住民票を取得する必要はありません。例えば、2人の相続人が共有で2分の1ずつ取得する場合は、2人分の住民票が必要になります。
こちらも本籍地の記載のあるものを取得しましょう(マイナンバーの記載は不要です)。取得料金は、1通あたり350円かかります。
固定資産評価証明書
登録免許税の計算の基となる「固定資産税評価額」を確認するために必要です。
相続人が不動産を引き継ぐ場合には、「固定資産税評価額×0.4%」の登録免許税を納める必要があります。
各都税事務所(東京23区内にある不動産の場合)、市町村役場(東京23区外にある不動産の場合)で1通あたり400円で取得できます。
固定資産評価証明書は、毎年4月1日に最新のものに更新されますので、手続きを行うタイミングによっては、取得する年度が異なるので注意が必要です。たとえば、令和3年の3月31日までに登記申請をする場合は、「令和2年度の固定資産評価証明書」を使いますが、令和3年4月1日以降に登記申請をする場合には「令和3年度の固定資産評価証明書」を使うことになります。
なお、相続税申告をする場合には、お亡くなりになった年度の固定資産評価証明書を添付する必要がありますので、タイミングによっては2年分必要になる場合もあります!
不動産の登記事項証明書
これによって、不動産がどのように登記してあるか確認できます。
最後に登記申請書を作成する際に記入方法を確認するためにも使用します。
法務局でしか取得できないと思われがちですが、インターネットで取得することもできますので、わざわざ法務局へ足を運ぶ必要はありません。下記「登記情報提供サービス」のリンク先から請求できます。(平日21時以降と土日は使えないので注意です!)
【登記情報提供サービス】
https://www1.touki.or.jp/
● 亡くなった方の戸籍(出生~死亡時)
● 相続人の戸籍(現在)
● 亡くなった方の住民票の除票
● 不動産を取得する方の住民票
● 固定資産評価証明書
● 不動産の登記事項証明書
こちらの6点が揃っていれば、どんなケースであっても概ね対応できます。
次のパートで更に詳しく解説しますが、不動産の分け方によって、次の資料が追加で必要になります。
遺言書
※遺言書の内容に沿って分ける場合のみ必要になります
※自筆証書遺言の場合は、家庭裁判所にて検認済みのものが必要になります。
※公正証書遺言の場合は、正本もしくは謄本のどちらでも構いません。
相続人全員の印鑑証明書&遺産分割協議書
※話し合いで遺産の分け方を決める場合のみ必要になります。
※遺産分割協議書に添付する印鑑証明書には、有効期限はありません。
必要資料が集まったのであれば、もう半分以上終わったようなものです!それでは残り2つも見ていきましょう!
【ステップ2】不動産の分け方を決める
ここでいう、分け方を決めるというのは、不動産を「誰が」「どのくらいを」引き継ぐかを決めるということです。
「不動産の分け方を決めるって言われても、どうしたらいいのかな」という方が多いかと思いますが、分け方には大きく2つの方法があります。
遺言書の内容に沿って分ける方法、もしくは相続人同士話し合って決める方法です。
遺言書の内容に沿って分ける方法
亡くなった方が、有効な遺言書を作成していた場合には、その内容に従って不動産を分けていくことになります。遺言書にある内容どおりに、分け方が決まるので、相続人同士話し合って決める必要はありません。
遺言書の記載方法によって、単独申請できる場合とそうでない場合もあるので注意が必要です。具体的には、以下のような取り扱いになっています。
不動産をAに相続させる → 相続人Aが単独で申請することができる
不動産をAに遺贈する → 相続人全員が共同で申請しなければならない
相続人同士話し合って決める方法
相続人同士が話し合って、誰が不動産を取得するかを決めます。この方法が、最もポピュラーです。ちなみに遺言書があっても、相続人全員の同意があればこの方法を採ることもできます。手順は次の通りです。
①まず相続人同士で、不動産の分け方を話し合います。
②話し合いがまとまったら、「分割協議書」を作成し、分け方の内容を反映します。
③分割協議書に、相続人全員の署名と捺印をします。この際必ず、実印で押印することが必要です。実印との照合のために、相続人全員の印鑑証明書が必要になります。
ここまで準備できたら、あとは相続登記の申請書を作成するのみです!登記完了までは、あともう少しです!
【ステップ3】相続登記の申請書を作成する
申請書のひな型と記載方法が、法務局のホームページに掲載されていますので、不動産の登記事項証明書を確認しながら作成していきましょう。申請書の種類がいくつかありますので、ご自身の相続に合ったケースを選ぶ必要があります。よくある代表的なケースは、以下の通りです。
・遺言書の内容に沿って分ける場合
18)所有権移転登記申請書(相続・公正証書遺言)
19)所有権移転登記申請書(相続・自筆証書遺言)
・相続人同士話し合いによって不動産の分け方を決める場合
21)所有権移転登記申請書(相続・遺産分割)
【法務局ホームページはこちら】
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/minji79.html
よくあるご質問
最後にこちらでは、不動産登記にまつわるご質問事項で、よくお客様から挙がるものをいくつかピックアップして、回答していきたいと思います。
相続登記の期限は?必ずやらないといけないの?
(A)相続登記に期限はありません!
相続登記に期限はないものの、登記をしていない期間については、第三者に「ここは自分の不動産です!」ということを言えなくなり、勝手に登記されたり、不動産の売却に手間取るなど、様々な弊害が発生します。また、近年改正で不動産登記が義務化される可能性も出てきていますので、ますます登記の必要性が高まります。
登記申請に使った必要書類の原本は、法務局から返してもらえる?
(A)相続関係図を提出すれば戸籍が返ってきます!
亡くなった方との関係性が分かる「相続関係説明図」を提出することによって、戸籍謄本や原戸籍、除籍謄本の原本を返却してもらえます。その他にも、法務局に対して「原本を返してほしい」と意思表示をし、コピーをするなどの一定手続きを踏むと、登記完了後に原本を返してもらうこともできます
相続登記を専門家に任せた場合の費用はどれくらいなの?
(A)1つの不動産につき、10万円前後が相場です!
相続登記をまるごと司法書士などの専門家へ依頼した場合には、不動産1件につき10万円前後の費用が掛かることが多いです。ただし、既に戸籍の収集が終わっている場合や分割協議書の作成ができている場合などには、1-2万円ほど値引きをしてくれる事務所もあります。
遺言書があれば、申請は他の相続人と共同ではなく1人で行えるのでしょうか?
A:遺言書の書き方によって、単独申請できる場合とそうでない場合もあるので注意が必要です。具体的には、以下のような取り扱いになっています。
「不動産をAに相続させる」 →単独で申請できる
「不動産をAに遺贈する」 → 相続人全員が共同で申請しなければならない
相続する人の代理として、登記申請をすることはできるのでしょうか?
A:報酬をもらって代理できるのは弁護士か司法書士に限られますが、無報酬で親族など近しい間柄の人の代理をする場合は、弁護士等の資格は不要です。代理申請の際は、本人からの委任状が必要になります。本人の同意なく、勝手に委任状を作るのは、犯罪行為になりますので絶対にやめましょう。
不動産の権利証を紛失しました。登記申請はできるのでしょうか?
A:可能です。そもそも相続の登記申請に権利証は不要とされています。権利証は平成17年の法改正により廃止され、現在では、代わりに登記識別情報が発行されるようになりました。相続登記の場合は必要ありませんが、不動産を売却する際には、権利証か、登記識別情報の提出が求められます。この際、権利証等を紛失していた場合でも、別の方法で本人確認をすることも可能なので、司法書士等に相談しましょう。
まとめ
ということでいかがでしたでしょうか。
なるべくわかりやすいように、シンプルにまとめたつもりですが、それでも集めなければいけない資料が多く、かつ手続きが複雑に感じられたかと思います。
相続に慣れている方ならともかく、手続きを始めて行う方にとっては、かなりハードルが高いのではないでしょうか。というのも、9割方のお客様は不動産の相続登記を専門家に任せているのが現状です。
「自分でやるのは大変だなぁ」と思われた方は、お問い合わせいただければ、円満相続税理士法人が提携している腕のいい司法書士をご紹介いたしますので、是非お気軽にご連絡ください!
また、相続に関する他の手続きをまとめた記事がありますので、是非、こちらもお読みください。最後までお読みいただきありがとうございました!