生産緑地制度とは?税金が変わる仕組みと相続の注意 |東京・大阪・名古屋・大宮の相続専門・円満相続税理士法人
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生産緑地制度とは

皆さんこんにちは。

大宮円満相続税理士法人、代表税理士の加藤です。

都市部の農地は、税金が高いって本当?

生産緑地っていう制度で、税金が安くなるって聞くけど…

こうした疑問をお持ちの方は少なくありません。

生産緑地は、相続税・固定資産税に大きな影響を与える制度であり、正しく理解していないと、将来思わぬ税負担やトラブルにつながることがあります。

この記事では、相続税を専門とする税理士の立場から、

・生産緑地制度の基本

・指定される条件

・メリット・デメリット

・特定生産緑地制度(2022年問題との関係)

・失敗例

をできるだけわかりやすく、徹底的に解説します。

そもそも生産緑地とは何か?

生産緑地とは、市街化区域内にある農地のうち、都市環境の保全や農業の継続を目的として指定された土地のことです。

市街化区域とは都市計画法という法律で

人が住んだり、仕事をしたりする地域

と指定された区域です。

これに対して、農地などを保存していく地域として、市街化調整区域という区域があります。

大半の農地は、この市街化調整区域に存在しています。

(日本の農地のうち、市街化区域に存在しているものは1.3%程)

つまり生産緑地とは、

人が住む建物などを建設していこう!

という地域(市街化区域)に存在している農地ということになります。

通常、市街化区域内の土地は住宅や商業施設などに利用されることが前提ですが、生産緑地に指定されることで、

・農地としての利用を継続する

・宅地化(人の住む土地にする)を原則として制限する

という特別な扱いを受けます。

この制度は、1974年に制定され、その後何度か改正され、直近では2017年に大きな改正がありました。

なお、市街化区域にある農地が全て生産緑地というわけではなく、あくまでも「市街化区域にある農地の中で指定されたもの」が生産緑地となります。

生産緑地制度が作られた背景

先述したように、市街化区域とは基本的に、農地を宅地(人の住む土地)にしていくことを前提にしています。

また、土地の価値自体が、農地よりも宅地の方が高いので、都市部を中心として、どんどん農地が減少していきました。

しかしながら、急速に農地などの自然が消失したことにより、生活環境に悪影響が生じ始めたのです。

そのため、

・都市部の無秩序な宅地化を防ぐ

・緑地や農地を残し、良好な都市環境を維持する

・都市農業を守る

といった必要性が出てきました。

一方で、都市部の農地は地価が高く、そのままでは固定資産税や相続税の負担が非常に重いという問題がありました。

税負担や維持管理のコストが高いままでは、都市部で農業の継続をするのは非常に困難となってしまいます。

そこで

一定の制限を受ける代わりに、税制の優遇などを受けられ、都市部でも農業を継続できる仕組み

として生産緑地制度が設けられたのです。

市街化区域内の農地の重要性

市街化区域にある農地は、農地全体の1.3%程度しかありません。

しかしながら、市街化区域にある農地には、他の農地には無い次のような利点があるのです。

・都市部に対して鮮度の良い農産物を提供できる

・身近な農業体験、交流活動の場の提供

・災害時の防災空間の確保

・やすらぎや潤いをもたらす緑地空間の提供

・国土、環境の保全

・都市住民の農業への理解の醸成

~農林水産省「都市農業をめぐる情勢について」より抜粋~

このような利点を維持していくためにも、生産緑地制度は非常に大切なものとなります。

生産緑地の要件

生産緑地に指定されるには、主に次の要件を満たす必要があります。

① 市街化区域内にある農地であること

生産緑地は、市街化調整区域ではなく、市街化区域内の農地が対象です。

また、生産緑地における農地等の範囲は、

・農地

・採草放牧地

・現に林業の用に供されている森林

・現に漁業の用に供されている池沼

を言います。

なお、上記に隣接して一体となって農林漁業の用に供されている道路なども、その範囲に含まれます。

② 農業の用に供されていること

対象となる農地については実際に農業がされており(休耕地も含まれます。)、市町村の農地台帳※に記載されている必要があります。

※農地台帳とは?

農地台帳とは市町村の農業委員会が、農地、市内農家の世帯状況、就業状況、営農状況などを記録した書類です。

農地の貸し借りを行うとき、農業委員会の許可を取っていない(農地台帳に記載が無い)ものを、闇小作と言ったりします。

③ 良好な生活環境の確保に効用があること等

例として、さいたま市では、塀で囲まれたり、ゴミ捨て場化していたりする農地等は指定が出来ないとされています。

④ 500㎡以上の面積であること

面積要件については、原則500㎡以上となっておりますが、法改正によって多くの自治体では300㎡以上に要件が緩和されています。

また、自分一人で300㎡以上の農地を持っていない場合であっても、近隣の農地所有者と一括で300㎡以上の面積があれば要件を満たすようになっています。

この判定についても要件が緩和され、物理的に隣地となっている必要がなくなったため、市町村からの許可を得られれば、離れている近隣農家の農地も一括して面積判定が出来るようになりました。

ただしこの場合でも、一人最低でも100㎡以上の農地は必要となるので注意しましょう。

~生産緑地地区制度について│さいたま市(令和4年5月改訂)より抜粋~

⑤ 農業の継続が可能であること

原則として30年間、農業を継続する必要があります。

自治体によっては、年齢に制限を設ける、健全な経営状態などを要件にしている場合があります。

また、公道に接している等の接道義務や、境界が明確であることなど、個別的な判断が必要となりますので、具体的には自治体の確認が必要となります。

⑥ 権利所有者全員の同意があること

農地の所有者や、合法的に借りている人、抵当権を持っている人など、その農地に関する権利を持っている人たち全員の同意が必要となります。

⑦ その他

各自治体によって固有の要件が付されている場合があります。

生産緑地のメリット

生産緑地は、上記のような多くの要件を満たして初めて認められます。

また、生産緑地に指定してしまうと、原則として30年間は農業を実際に行う必要があり、宅地に転用することは認められません。

このような面倒な要件や厳しい規制があっても、あえて生産緑地にするメリットは大きく次の2つがあります。

メリット①:固定資産税の減額

生産緑地の最大のメリットは、固定資産税が農地として計算される点です。

固定資産税の性質で、宅地と農地を比較すると、宅地の方が非常に大きな税額となります。

通常、市街化区域内の農地は、たとえ農地として使用していたとしても、宅地と同じ基準で固定資産税が計算されてしまうので、税負担が非常に大きくなってしまいます。

しかし、生産緑地に指定されると、市街化区域にあっても農地として計算がされることになるので、固定資産税・都市計画税が大幅に軽減します。

生産緑地に指定されると固定資産税がどのくらい下がるのかは、個別的な部分があるので明確には言えませんが、感覚では、指定前では数万円~数十万円のところが、指定後は数千円程度になるくらい、大きな減額(実質の税負担が1/100ほどになる)です。

これは長期間保有する場合、非常に大きなメリットで、市街化区域で農業を継続しようとする場合には、生産緑地制度は必須ともいえるのです。

メリット②:相続税、贈与税の納税猶予を使える

農地を次世代に承継する場合には、相続税と贈与税については考えておかなければいけません。

生産緑地については先述した通り、固定資産税は非常に低くなるのですが、ここで注意点があります。

それは、

生産緑地は相続税・贈与税の負担は大きくなりがち

ということです。

生産緑地は固定資産税の計算では農地とされます。

しかし、相続税と贈与税の計算では宅地と同水準で評価(※)されてしまうのです。

※生産緑地の相続税評価額

生産緑地の相続税評価額は、市町村長に対し買取の申出を「できる」か「できないか」によって変わります。

ここでは大まかに内容を解説します。

・買取の申出が「できる」場合

宅地としての評価額の95%

相続で生産緑地を取得する場合は、こちらの評価額になるケースがほとんど。

つまり、ほとんど宅地と同じような評価額になってしまう。

・買取の申出が「できない」場合

宅地としての評価額の65%~90%

贈与の場合はこちらの評価額になる場合が多い。

贈与をした日から、買取の申出ができるようになるまでの期間に応じてパーセンテージが変わる。

これではせっかく生産緑地に指定したとしても、相続や贈与のタイミングで農業経営が難しくなってしまいます。

そこで、生産緑地については一定の要件を満たすと、相続税や贈与税を

農業を継続している限り、その納税を猶予する

という制度が設けられています。

これが相続税・贈与税の納税猶予です。

しかしこれはあくまでも「猶予」であるため、どこかのタイミングで納税をしなければならないのか?という疑問が生じます。

これについては、後継者が亡くなるまで農業を継続した場合などには、猶予から免除になるという規定があります。

つまり、代々農業を継続していけば、この制度によって相続税や贈与税の負担は、実質的にほとんど無くなるということになります。

(生産緑地に対する税額部分のみ)

市街化区域内の農地は評価額が高額になるケースが多いので、この制度の有無で相続税額が数千万円単位で変わることも珍しくありません。

生産緑地制度は、この納税猶予制度が使えるようになるだけでも、非常に大きなメリットと言えるでしょう。

生産緑地のデメリット

固定資産税が大幅に減額する、相続税・贈与税の納税猶予が適用できるようになるなど、メリットが大きな生産緑地ですが、もちろんデメリットもあります。

デメリット①:自由に売却・転用できない

生産緑地の指定を受けると、原則として30年間

・宅地への転用

・売却

・賃貸住宅の建築

などが自由にできません。

つまり、

「将来は売却して現金化したい」

「アパートを建てたい」

という希望があっても、簡単には実現できないのです。

生産緑地制度では30年を経過したときに、その指定を外して土地を自由に活用できるようになります(自治体が買取をする場合などは除く)。

ただしここで注意があります。

確かに生産緑地制度の上では農業を廃止して、宅地転用などが出来るようになりますが、納税猶予制度を使っている場合には、話が変わってきます。

納税猶予制度については、原則として一生(一定の場合には20年)農業を継続することが要件となります。

生産緑地制度の30年が過ぎたため農業を廃止すると、納税猶予となっていた相続税や贈与税に加え、利子税も追加で納めることになるので、この点は忘れないようにしましょう。

デメリット②:相続人に農業継続の負担が生じる

相続が発生すると、生産緑地は相続人に引き継がれます。

しかし、相続人が

・農業をやったことがない

・高齢で体力的に難しい

・そもそも農業を続ける意思がない

というケースも多くあります。

農業を継続できない場合、納税猶予の制度が適用できないので、高い評価額に対する相続税の負担が生じてしまいます。

この納税資金を確保するために、生産緑地であった土地を売却しなければならない場合もあり、スケジュールがタイトになるので注意が必要です。

納税資金が確保できない場合には、納税猶予制度を使用すれば問題の大半は解決しますが、相続人が農業を継続しなければならないので、この点がデメリットとなるケースも多いです。

デメリットの解決案

ただ、このような農業継続のデメリットが大きく、せっかくの生産緑地も相続の段階で無くなってしまう事は自治体にとっても損失でした。

そのため法整備がされており、生産緑地を他人に貸し付けて、その借りた人が農業を継続していれば、納税猶予制度を適用できるようになっています。

この貸付は、どのような貸付でも良いわけではなく、

・都市農地の貸借の円滑化に関する法律(認定都市農地貸付)

・特定農地貸付に関する農地法等の特例に関する法律(農園用地貸付)

といった、一定の要件を満たすものに限られます。

特定生産緑地とは?

生産緑地を語るうえで、現在は欠かせない制度が

特定生産緑地制度

となります。

これは、2018年の法改正により創設された制度で、

30年の期限を迎える生産緑地について、税制上の優遇を延長する仕組みです。

生産緑地制度自体は、1974年からありますが、現在の生産緑地は、大きな改正があった1992年の改正生産緑地法を根拠としています。

このため2022年において、最初に指定された生産緑地が30年の期間が経過することにより、宅地転用などで多くの農地が失われてしまう恐れがありました。

(これがいわゆる「生産緑地の2022年問題」です。)

そこで、「引き続き農地として保全したい土地」については、所有者の意思を確認したうえで、優遇措置を延長できる制度として特定生産緑地制度が設けられ、10年ごとの更新制で生産緑地を維持できるようになりました。

特定生産緑地については、更新が30年ではなく10年と期間の違いはありますが、その内容は生産緑地と違いはありません。

つまり、特定生産緑地とは

30年の期間が経過して10年更新になった生産緑地

と考えておけば、基本的に問題ありません。

生産緑地でよくある失敗

実務上、生産緑地に関しては次のような失敗がよく見られます。

・親が生産緑地にしていたことを相続時に初めて知った

・納税猶予が使えると思っていたが要件を満たしていなかった

・相続人全員が農業を継続できず、相続税を一括納付することになった

・将来売却できると思っていたが、解除できず資金計画が狂った

生産緑地は、「税金が安くなるから良い制度」ではなく、人生設計と相続対策まで考慮する必要があります。

まとめ

生産緑地について最も重要なのは、

相続が起きてからでは選択肢が限られる

という点です。

・生産緑地を維持すべきか

・特定生産緑地へ移行すべきか

・解除を視野に入れるべきか

・相続税の納税資金をどう確保するか

これらは、生前から専門家と一緒に検討する必要があります。

当事務所では、相続税を専門とする税理士として、生産緑地を含む相続対策・相続税申告のご相談を承っています。

「この土地は生産緑地になっているのか」

「相続税はいくらかかるのか」

「将来どうするのが良いのか」

といった段階からでも構いません。

お悩みの方は是非お問い合わせくださいませ。

お問合せはこちらからお願いいたします!

最後までご覧いただき、誠にありがとうございました!

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