円満相続税理士法人 代表税理士
『最高の相続税対策は円満な家族関係を構築すること』がモットー。日本一売れた相続本『ぶっちゃけ相続』シリーズ19万部の著者。YouTubeチャンネル登録者10万人。
保険契約者:A、被保険者:B、受取人:Aといった生命保険契約について、Bが死亡し、Aが保険金を受け取るシチュエーションがあったとします。
この場合、Aが払った保険料よりも、多くの保険金を受け取ると、その差額は一時所得として所得税と住民税の課税対象になります。
では、次のようなケースにおいて、この一時所得は、一体いつの所得として確定申告をしなければいけないか、考えてみましょう。
保険事故発生日:X1年12月15日
保険金請求日:X2年4月1日
保険金受取日:X2年4月10日
保険金受取がX2年4月なので、X2年の所得として、X3年3月15日までに確定申告をすればいいと思いますよね。ただ、それをしてしまうと、税務上、大事故に繋がる可能性があります。
受取保険金にかかる収益の認識は、請求日や受取日ではなく、保険事故発生日に行うこととされています。つまり、X2年3月15日までに確定申告をしないといけないのです。
(一時所得の総収入金額の収入すべき時期)
所得税法基本通達36-13 一時所得の総収入金額の収入すべき時期は、その支払を受けた日によるものとする。ただし、その支払を受けるべき金額がその日前に支払者から通知されているものについては、当該通知を受けた日により、令第183条第2項《生命保険契約等に基づく一時金に係る一時所得の金額の計算》に規定する生命保険契約等に基づく一時金又は令第184条第4項《損害保険契約等に基づく満期返戻金等》に規定する損害保険契約等に基づく満期返戻金等のようなものについては、その支払を受けるべき事実が生じた日による。
ですので、先ほどの例においては、支払いを受けるべき事実はX1年12月15日において生じていますので、請求の有無に関わらず、X1年の一時所得として、X2年3月15日までに確定申告をしなければいけないことになります。まだ、実際に保険金を受け取っていなくても、税金だけは先に払わないといけないわけですね。
先程の事例において、X3年に確定申告をすると、X2年の確定申告に当該一時所得を含めて計算し直すように指摘を受けることになります。この場合、X2年に確定申告をしていれば、過少申告加算税が、X2年に確定申告をしていなければ無申告加算税が課税されます。また、X2年3月16日からの延滞税も課税されます。そして、X3年の確定申告で納めた分は、更正の請求(計算誤り)で還付を受けることになりますね。
トータルで申告する所得額は変わりませんが、確定申告の時期を間違えると、過少申告加算税等のペナルティがつくのは避けられません。
予定利率が高かった時代(1985年~1990年ごろ)に加入した生命保険は、今では考えられないくらいのレバレッジがついている、いわゆる『お宝保険』なるものがあります。富裕層の中には、親が子に生前贈与をし、契約者:子、被保険者:親、受取人:子という形で、お宝保険に加入しているケースがあります。そして、この親に相続発生した場合には、子に多額の一時所得が課せられますので、確定申告の時期を誤らないように、注意していきましょう。