円満相続税理士法人 代表税理士
『最高の相続税対策は円満な家族関係を構築すること』がモットー。日本一売れた相続本『ぶっちゃけ相続』シリーズ19万部の著者。YouTubeチャンネル登録者10万人。
毎年同じ時期に同じ金額の生前贈与をするのは危険と聞きました。
一体何が危険なのですか?
こんにちは、円満相続税理士法人の橘です。
この話、一体何が危険なのかというと、毎年同じ金額の生前贈与をすると、税務署から、
10年間に渡り、毎年110万贈与することが最初から決まっているなら、最初の年に1100万の贈与契約があり、それを分割払いしただけです
1100万に対して贈与税を課税します!
という指摘のことを言っています。
※1100万の贈与税は、207万円です。(1100万-110万)×30%-90万=207万
この指摘のことを、税理士業界の中では『連年贈与』や『定期贈与』と呼んでいます。
ただ、結論からお伝えすると、連年贈与として課税されることは実務上ほとんどありません。
そのため過度に心配しなくてもOKです。
今回の記事では、これまで500件以上の相続税申告をしてきた私が、連年贈与について徹底的に解説していきます。
最後までお読みいただければ、連年贈与の仕組みがわかり、安心して贈与をすることができるようになりますよ♪
※1分動画で解説しています↓
連年贈与(定期贈与)とは
まず、国税庁ホームぺージに、下記の文章があります。
Q親から毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与を受ける場合には、各年の受贈額が110万円の基礎控除額以下ですので、贈与税がかからないことになりますか。
A定期金給付契約に基づくものではなく、毎年贈与契約を結び、それに基づき毎年贈与が行われ、各年の受贈額が110万円以下の基礎控除額以下である場合には、贈与税がかかりませんので申告は必要ありません。
ただし、毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与を受けることが、贈与者との間で契約(約束)されている場合には、契約(約束)をした年に、定期金給付契約に基づく定期金に関する権利(10年間にわたり100万円ずつの給付を受ける契約に係る権利)の贈与を受けたものとして贈与税がかかります。
『毎年100万円ずつを10年間にわたって贈与を受けることが、贈与者との間で契約(約束)されている』と、税務署から認定された場合には、1000万を贈与したのと変わらないとして、多額の贈与税が課税されてしまうことになります。
※『定期金給付契約に基づく定期金に関する権利』とは、保険会社が販売する年金型の保険のことなどをいいます。これも、年金支払開始とともに、毎年決まった金額を受け取ることができますよね。例えば、夫が保険料を負担し、年金は妻が受け取るという契約だった場合、年金支払開始のタイミングで、妻は『定期金に関する権利』の贈与を受けたものとして贈与税の申告が必要になります。
実際に連年贈与で課税される?
基本的に連年贈与で課税されることはありません。
ポイントは、将来に渡って贈与を受けることが確定していたかどうかです。
贈与というのは、その都度『あげます、もらいます』という両者の認識の合致が必要になります。
1年目は関係性が良好で贈与してくれたかもしれませんが、2年目以降は関係性が悪化し、贈与をしてくれない可能性もあります。
また、関係性は良くても、認知症などにより贈与をすることができなくなるリスクもあります。
究極のことをいうと、2年目以降に相続が発生してしまうと、贈与することは不可能です。
つまり、毎年同じ金額の贈与を受けていたとしても、それは結果論として贈与を受けることができただけで、当初の段階で貰えることが確定していたとは言えないのです。
連年贈与として課税される場合
例えば、一つの契約書に、『私は今後10年間、100万円を渡し続けることを約束します。もし途中で私が他界した場合は、渡せなかった残額を渡します』という文言があれば、これは契約成立時に1000万の贈与があったと言われる可能性があります。
この契約であれば、2年目以降に関係性が悪化した場合でも、100万を渡す義務があります。認知症になった場合でも、後見人の判断で、契約通りに100万を渡すことになるでしょう。そして、相続が発生した場合でも、100万×残年数分を貰うことができます。
ここまでの契約内容であれば、客観的に見ても『当初の段階で1000万貰うことが確定していた』と言えるため、連年贈与として課税されるでしょう。
指摘された場合の反論
私が立ち会った税務調査で、連年贈与を指摘されたことは一度もありません。
もし仮に指摘をされたとしても、毎年同じ時期に同じ金額の贈与があっただけで、それが『確定していた』ものとは、絶対に言わせませんので、私の依頼主に連年贈与で課税するのは不可能です。
しかし、税理士を付けずに自身で相続税申告書を作った人であれば、誘導尋問的に連年贈与として課税されることはあり得ると思います。
毎年同じ金額の贈与を受けていますが、これは当初から、そういった約束だったんですか?
はい、『元気なうちは毎年110万贈与する』って約束してくれました
そうですか、それであれば定期金(年金)の贈与として課税しますね
えー!
ポジショントークで言うわけではありませんが、税理士を付けずに税務調査に挑めば、このような結果になる可能性は十分あると思います。
もしも、税務調査で連年贈与と指摘されたら、次のように反論しましょう。
口では『贈与する』と約束してくれましたけど、途中で亡くなる可能性だってあったわけで、『確定していた』とは言えないですよね?
このように反論すれば、課税できないはずです。
ぐぬぬぬ…
贈与契約書に注意
毎年、贈与契約書を作るのは大変なんで、一枚の贈与契約書に『今後10年分』と書いていいですか?
未来の日付で10年分の贈与契約書を先に作ってもいいですか?
このような質問を受けることがあります。
答えは全てNO!
贈与契約書は、大変でも、毎回贈与する都度作らないと意味がありません。
契約書に『今後10年間に渡り』などの文言があると、連年贈与と認定されるリスクはかなり高いです。
また、未来の日付で贈与契約書を作るのは、文書偽装(仮装隠蔽)行為にあたるので、非常に重い罪に問われる可能性もあります。
ちなみに、過去の日付で贈与契約書を作っても、税務調査のプロである調査官が見たら一発で見破ります。気になる方はこちらの記事もお読みください。
まとめ
毎年同じ時期に同じ金額の贈与をしても、危険なことはありません。
気を付けるべきは、贈与契約書の文言だけです。
贈与契約書のテンプレートは、私達のLINE公式アカウントにご登録いただくと無料でダウンロードできますので、是非ご活用くださいませ。
最後までお読みいただき、ありがとうございました(*^^)v