相続税にも使える ふるさと納税を徹底解説

相続財産を寄付した場合の取り扱いって色々複雑で、いまいち分からないのですが・・・

今回は私が相続財産の寄付について、基本から注意点まで、すべて解説します。
寄付を考えている方は、ぜひ最後までご覧ください!

皆さんこんにちは。

円満相続税理士法人、税理士の加藤です。

相続財産を寄付した場合、一定の要件を満たすと相続税が非課税となる特例があります。

そこで今回は、相続財産を寄付した場合の取り扱いについて、要件や添付書類、注意点など、すべて分かりやすく解説をしていきます。

取り扱いを一つ間違えてしまうだけで、特例を適用できなくなってしまうなど、危険な部分もありますので、ぜひ参考にしていただければと思います。

寄付の方法

第一に考える必要がある論点は、相続財産を寄付する方法についてです。

相続財産を寄付する方法は、大きく次の2種類があります。

①遺言で寄付をする方法

②相続人が寄付をする方法

①の遺言で寄付をする方法とは、生前に遺言書で

○○の財産は、△△法人に寄付をする

という記載をしておく方法です。

②の相続人が寄付をする方法とは、財産を一旦相続人が相続して、相続人の意思で寄付

をする方法です。

①か②の違いによって、相続税の取り扱いが全く変わってしまうので、しっかりと考えておきましょう!

遺言で寄付をした場合(①の方法)

遺言によって相続財産を寄付した場合の取り扱いは、どうなるでしょうか?

これは結論を言ってしまうと、原則的には、

寄付した財産について相続税を考える必要は一切ない

ということになるのです。

遺言によって財産が法人へ寄付された場合、その時点でその財産は相続税の対象から外れることになります。

つまり、相続人にとっては税務の手続きを何もすることなく、さらに相続税の申告書にも記載する必要が無くなる、ということです。

手続きなどの事を考えると、寄付は遺言によって行う方法が最も分かりやすく簡単です。
もしまだ相続が発生しておらず、寄付をしたいという意思がある場合には、ぜひ遺言書の作成を検討してください!

Q遺言で寄付する法人に指定はあるの?

遺言で寄付をする場合、その法人がどのような法人であっても相続税の対象から外れます。例えば、株式会社や一般社団法人に対する寄付であっても、相続税の対象にはなりません

Q寄付する財産の種類によって取り扱いは変わる?

遺言による寄付の場合には、寄付をする財産の種類がどのようなものであっても、相続税の対象とはなりません。

しかし、例えば含み益がある不動産などを寄付した場合、所得税が発生する可能性があるので注意が必要です。

Q遺言による寄付は必ず相続税が非課税となる?

遺言による寄付は原則として相続税が非課税となるのは上で説明した通りです。

しかし、その寄付によって、寄付者(遺贈者)の親族や特別関係者の相続税が不当に減少する場合には、寄付を受けた法人を個人とみなして相続税が課税される可能性があります。

〈国税庁HP:持分の定めのない法人に対する贈与税の取扱い〉

Q個人に対して遺言で寄付をした場合は?

個人に対して遺言で寄付をした場合には、その寄付を受けた個人に対して相続税が発生します。

寄付をすることによって相続税が非課税となるのは、寄付の相手が法人の場合になりますので注意してください。

Q遺言で寄付を受けた法人はどうなる?

寄付を受けた法人については、その寄付について法人税が課税されます。

しかし一定の法人の場合は、非収益事業について法人税が課税されないときもあります。

Q遺言の寄付での所得税の扱いは?

含み益がある財産を遺言によって寄付した場合、被相続人の準確定申告が必要になる場合があります。

また、寄付先が認定NPO法人などの場合は、被相続人の準確定申告で、所得税の寄付金控除が受けられます。

相続人が寄付をする方法(②の方法)

ここからは、相続人の方が相続財産を寄付する方法について説明していきます。

この場合の特例が、

国等に対して相続財産を贈与した場合の相続税の非課税等

いわゆる措置法70条の非課税

と呼ばれるものになります。

遺言による寄付の場合は、相続人は特別な手続きは何もする必要がなく、寄付した財産は相続税の対象から外れることになりました。

しかし遺言が無く、相続人の方が寄付をするときは、寄付の対象者や手続きの方法など、かなり細かく指定されており、非常に大きな手間が発生します。

次からは、この特例について細かく説明していきます!

相続人が寄付をしても原則は課税

まず初めにお伝えしたいことが、

相続人の方が相続財産の一部を寄付した場合でも、原則は相続税が発生する

ということです。

相続人の方は、相続財産を一旦受け取っているということになるので、そこに対して相続税が発生してしまうのです。

相続人の方が相続財産を寄付したとしても、あくまでも相続人の方の財産を寄付した、捉えられてしまい、相続税には関係がないと考えられてしまうのです。

しかし、それでは寄付という行為が普及しなくなってしまうので、特例措置が設けられたわけですね!

措置法70条の要件

それでは、特例の適用を受けられる要件を大まかに説明していきます。

特例を受ける要件は、主に次のようになっています。

~措置法70条の要件~

①相続または遺贈により取得した財産を寄付すること

②相続税の申告期限までに寄付を完了させること

③寄付先は、国、地方公共団体、特定の公益法人等であること

これだけだと、いまいち分からないと思うので、一つ一つ細かい部分を説明します!

要件①について

まずは要件①の、相続または遺贈により取得した財産を寄付すること、について細かく見ていきましょう。

これは、相続または遺贈により取得した財産を、そのままの形で寄付しなければならない、という要件になります。

例えば、株式を相続したけれど、その株式を売却した現金を寄付する、といった場合は要件を満たさなくなってしまいます。

株式を相続したのであれば、株式のままで寄付をする必要があるということですね。

もちろん不動産も同様で、不動産を相続したのであれば、不動産のまま寄付をする必要があります。

要件②について

要件②は期限についてです。

この特例の適用を受けるためには、必ず相続税の申告期限までに寄付をする必要があります。

寄付の申請をするだけではなく、しっかりと寄付を完了させる必要があるので注意が必要です。

例えば不動産や美術品などの場合、寄付を受ける側の手続きで時間を要してしまい、申告期限までに寄付が出来なかった、ということもありえるので、なるべく早い段階から手続きを進めていく必要があります。

要件③について

最後の要件③が、寄付の相手の条件となります。

遺言による寄付の場合には、寄付の相手がどのような法人であっても相続税は非課税となりました。

しかし、相続人が相続財産を寄付する場合には、その相手も厳密に指定されています。

実際に要件を満たす寄付先は、

・国

・地方公共団体

・特定の公益法人等(具体例は下に記載します。)

となります。

国や地方公共団体は分かりやすいのですが、問題となるのは、特定の公益法人等、になります。

この具体例は、次のようになっています。

~特定の公益法人等の具体例~

・独立行政法人

・国立大学法人、大学共同利用機関法人

・地方独立行政法人の一定のもの

・公立大学法人

・自動車安全運転センター、日本司法支援センター

・日本私立学校振興・共済事業団、日本赤十字社

・公益社団法人、公益財団法人

・学校法人で特定のもの

・社会福祉法人

・更生保護法人

・認定NPO法人

寄付先の要件はかなり細かいので注意が必要です。
間違えないためにも、寄付をする前に寄付先にしっかりと適用が可能かを確認しておいた方が良いでしょう。

注意点や細かい論点

上記では、措置法70条の非課税について、大まかな要件を説明しました。

ただ、この特例には細かい論点が多いので、ここで主なものを列挙します。

添付資料等

措置法70条の規定の適用を受けるためには、

①申告書にこの規定の適用を受けようとする旨を記載

②一定の書類を添付

という手続きが必要になります。

①については「申告書第14表」に所定の記載を行うことで完了します。

②については寄付先に次の事項を記載した証明書を発行してもらう必要があります。

~証明書の記載事項~

1.贈与を受けた旨

2.贈与を受けた年月日

3.財産の明細

4.使用目的(寄付先が法人の場合に限る)

もし寄付先が「地方独立法人」または「私立学校」の場合には、
・特定の公益を目的とする事業を行う法人に該当することについての所轄庁の証明書
も添付する必要があります。

生命保険等の取り扱い

措置法70条の対象となる財産には、生命保険金や退職手当金等などの、みなし相続財産も含まれます。

生前贈与加算の対象となる財産

措置法70条の対象となる財産には、生前贈与加算の対象となった財産や、相続時精算課税適用財産は含まれないので注意してください。

法人を設立するための寄付

措置法70条は、法人を設立するための寄付については適用がありません。

NPO法人は対象外

措置法70条の対象となる寄付先は、認定NPO法人となります。

したがって、認定ではないNPO法人は対象とならないので注意が必要です。

後援会への寄付

学校の後援会などへの寄付についても、一定の要件を満たせば措置法70条の適用は可能です。

相続税等が不当に減少する場合

措置法70条の特例についても、寄付者の親族や特別関係者の相続税が不当に減少する場合には、相続税が課税される可能性があります。

「不当に減少する」を判断する場合には、相続税法施行令第33条3項の要件を満たすか否かで判断します。

ふるさと納税と措置法70条

所得税の特例として、最近はふるさと納税が有名になってきました。

実は相続人の方が、相続をした財産をふるさと納税に充てると、ふるさと納税と措置法70条の特例を両方適用できることになります。

ふるさと納税については、地方公共団体への寄付となるため、措置法70条の対象となります。

また相続人の側では、所得税や住民税の計算の際に、ふるさと納税の特例を適用できるのです。

もし相続財産を寄付しようと考えている場合で、ふるさと納税を普段から行っているときは、このように一挙両得の方法があることを忘れないようにしましょう!

ふるさと納税の金額が高額になり、返礼品の額が50万円を超えるような場合には、返礼品に対して一時所得が発生する可能性もあるので注意してください。

まとめ

今回は相続税の寄付金控除として、

・遺言による寄付

・国等に対して相続財産を贈与した場合の相続税の非課税(措置法70条)

について解説をしました。

これらの特例は、寄付が普及することにつながるため、ぜひしっかりと活用が出来ればよいのですが、非常に細かい論点が多く、税理士であっても間違えてしまう可能性があります。

善意で寄付を行ったにもかかわらず、そこに多額の税金が発生してしまうのは大きな問題です。

もし皆様の中で寄付を考えている方がいる場合は、ぜひ一度税理士にご相談ください!

弊社では実際に特例を適用してきた税理士が最初から最後まで対応いたしますので、お気軽にお問い合わせください!

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