【この記事の執筆者】
相続税の研究を愛する相続専門の税理士。23歳で税理士試験に合格し、国内最大手の税理士法人で6年間の修行を積んだのちに独立。円満相続税理士法人の代表を務める。
こんにちは、相続税専門の税理士の橘です。
贈与税には時効があるのをご存知でしょうか?
その時効はずばり贈与が行われた年の翌年3月16日から7年間です。
贈与税の時効は、原則は6年間と決められていますが、意図的に贈与税を申告しなかった、つまり、脱税と認定された場合には時効は7年になります。
「生前贈与なんて黙っていればわからないじゃない」とよく言われますが、次のデータをご覧ください。
平成27年には、年間で3600件以上の贈与税の税務調査が行われています。そして、そのうち3350件も贈与税の申告漏れが摘発されているのです!
確かに7年間逃げきれれば時効になりますが、7年間ずっとびくびくしていなくちゃいけないわけです。税務署はある日突然、家にやってくることだってあるのです!
しかも、7年間逃げきったと思っても、時効が成立しないケースが非常に多いのです。今回は贈与税の時効について解説しました。
贈与税の時効は、贈与税の申告期限を起算日としてカウントが始まります。
贈与税は、贈与を受けたとしの翌年2月1日から3月15日までの間に、税務署へ贈与税の申告書を提出して、贈与税を納税してもらいます。※詳しく知りたい人はこちらの記事をご覧ください→贈与税の基礎知識まとめ
つまり、申告期限は、贈与を受けた年の翌年3月15日です。この次の日の3月16日から7年間の間に税務署が摘発できなければ、贈与税は時効となるのです。
例えば、平成22年中に贈与を受けたのであれば、贈与税の申告期限は平成23年3月15日。その次の日の平成23年3月16日を起算日として7年後の平成30年3月16日に贈与税の時効が成立することになります。
贈与税の時効は、贈与があった年の翌年3月16日を起算日として7年間です。
それでは、例えば次のようなケースでは、贈与税の時効はどのように考えるべきでしょうか。
あるお父さんが、孫たちの通帳に110万ずつ生前贈与ということでお金を振り込みます。
しかし、その孫たちには生前贈与をしたことを伝えていません。しかも、その孫たちの通帳はお父さんが自分の金庫に保管をしていたとします。
この場合、お金を振り込んだ時から7年間で贈与税の時効が成立するかというと・・・・
成立しません!!
何十年前に行われたものであっても追徴課税されます!!
理由はというと、先ほどのようなケースでは、そもそも生前贈与が行われていないと考えます。
詳しくは是非こちらの記事(相続税の税務調査ポイントまとめ)を読んでいただきたいのですが、いくら家族の預金通帳に自分のお金を移したとしても、実質的には名義を変えただけであって真実の所有者は変わっていないと認定された場合には、その生前贈与はなかったものとされます。
この、真実の所有者が変わったかどうかを判定するには、大きなポイントがあります。
それは、生前贈与をしたときに、あげた・もらったの約束ができていたかどうかです。贈与契約とは、あげる人ともらう人の、両者の認識が合致したときに初めて成立するのです。
孫に秘密で通帳に振り込むというのは、お父さんは、あげた認識がありますが、孫はもらった認識がないので、これでは贈与は成立していないのです。
つまり、孫の通帳にお金があったとしても、それは実質的にはお父さんの財産であるため、お父さんが亡くなった時に相続税の対象とされてしまうのです。
このような預金通帳の名義人と、実質的な所有者が異なる預金のことを名義預金といいます。
名義預金と認定された場合には、時効という考え方はありません。なぜなら、そもそも贈与は行われていなかったのですから、その当時の申告義務もなかったわけです。そうすると時効のカウントも始まりません。
贈与税の時効は、あくまでその当時、贈与が成立していたと認められる場合にだけ、カウントが始まるのです。
贈与税の時効は、贈与が成立してから7年間経てば成立します。しかし、税務署としては、そう簡単に、その当時に贈与が成立していたかを認めてくれるわけではないのです。
これは実際にあった裁判例なのですが、その昔、贈与税の時効の考え方を悪用した人がいました。
「贈与が成立していた証拠さえ残しておけばいいんだ!それで7年間経つのを待とう!」
この人はご丁寧に公証役場で不動産の贈与契約書を作成し、贈与が行われていた証拠をつくりました。そして、不動産の名義変更は7年経つまで行わなかったのです。不動産の名義変更をすると、法務局から税務署へその情報が伝わり、贈与税の税務調査が行われるためです。
この人は贈与税の時効が成立する7年間をあけてから、不動産の名義変更を行いました。公証役場で作った贈与契約書があるため、7年以上前に贈与契約をしていたことの証拠はあります。
このことを知った税務署はカンカンに怒りました。
しかし、その人は「え?でも7年前に贈与契約は成立しているのだから時効でしょ?」と反論したわけです。
この事件は、結局、名古屋地裁で争うことになったのです。
ことの顛末はどうなったかというと・・・・
納税者敗訴!脱税する目的だけで作った公正証書の贈与契約書など無効である!
という結論になりました。※名古屋地裁平成5年3月24日判決
贈与税の時効は7年です。
しかし、7年間逃げればいいのかというと、これは明らかな脱税行為です。脱税行為が発覚した場合には、本来払うべきだった贈与税に加えて、重加算税というペナルティの税金と利息がつきます。(重加算税は、本来の税額に40%も追加されます!)
なかには、生前贈与でお金をもらっていたものの、110万を超えた場合には贈与税の申告をしなければいけなかったことを、本当に知らなかった人もいます。
この場合には、贈与税から意図的に逃げたわけではありません。このようなケースでは時効が認められる場合もあります。(一昔前に某政治家さんがこの理由で時効が認められましたね)
しかし、意図的だったかどうかの判断は非常に難しい所ですね。
ご不安のある方はお早めにご相談くださいませ♪
また、私たちのメールマガジンかLINE@に登録していただいた方には、税務調査のマル秘話や贈与契約書のひな型をプレゼント中です(*^-^*)無料ですので、是非、ご登録をお願いします♪
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
贈与税の申告書は、正直に申し上げると、ご自身でも作ることは可能だと思います。しかし、そこをあえて私たち、相続専門の税理士に依頼する最大のメリットは、将来、相続税の税務調査があったときに、私たちが贈与の実態があったことを証明できることです。せっかくコツコツと生前贈与をしてきても、税務署から贈与の実態がないと認定された場合には、贈与は一切なかったことにされます。
私(橘)の人生初書籍となる「ぶっちゃけ相続」をダイヤモンド社さんより出版しました。ブログやYouTubeで話していない内容も満載です♪本書の解説動画も無料公開中!
YouTubeではお話しできない内容を中心にしたセミナーを定期的に開催しています。セミナー終了後には個別相談会も開催しますので、ご興味ある方はお気軽にお越しください☆
相続税は、担当する税理士の腕と経験によって何倍にも変わる恐ろしい税金です。費用や報酬だけで税理士を選ぶのではなく、実力を見極める5つの判断基準を解説しました。慎重に税理士を選びたい人だけご覧ください。
日本一視られている相続税の解説動画です!
是非、一度ご覧ください
月額2,200円で、より深いレベルの知識を得ることができるオンラインサロンを開設しました♪弊社の税理士に質問できるだけでなく、会員同士で交流することも可能です。
相続のプロフェッショナルを目指すあなたへ!相続法を網羅的に学べる3時間半の講義と、140題を超える問題演習で、相続法をしっかり学べるカリキュラムです。
実践的な相続のことを体系的に、かつ、網羅的に学びたい方向けに、相続塾を開催しています!卒業生には、名刺に書ける資格を付与しています♪是非、一緒に学びましょう(^-^)また、音声&教材のみの販売もしております。
円満相続税理士法人は、プライバシーマーク取得法人として、個人情報保護体制に万全を期しております。
税理士法人として固い守秘義務もありますので、安心してご相談ください。