円満相続税理士法人 税理士
学生時代に税理士試験の受験を始め、在学中に4科目取得し群馬県の会計事務所に就職。売上規模数十億円の企業の法人税、相続税を担当しつつ25歳の時に税理士試験合格。
医療法人について調べると、色々な種類があって、何がなんだか分かりません…」
確かに、医療法人には色々な種類がありますよね!
今回は、そんな医療法人で3種類の代表的なものを解説します!
皆さんこんにちは。
円満相続税理士法人、税理士の加藤です。
医療法人について調べてみると、
「社会医療法人」
「特定医療法人」
「認定医療法人」
といった言葉が出てくるかと思います。
似ているようなのですが、これらの医療法人はその目的や優遇措置などの点で大きく異なるのです。
そこで今回は、「社会医療法人」「特定医療法人」「認定医療法人」とは何かを説明し、その違いを解説しますので、ぜひ参考にしてください!
社会医療法人とは?
概要
社会医療法人とは、救急医療や、へき地医療など、地域で必要な医療を提供する医療法人で、都道府県知事の認定を受けたものをいいます。
昨今では自治体の病院が赤字となってしまい、地方の医療が継続できなくなる危険性が生じています。
そのような中で、地方の医療を維持していくために作られた制度が、この「社会医療法人」となります。
ちなみに社会医療法人には「持分」という考えがないので、該当する医療法人はおのずと、「持分のない医療法人」(もしくは財団)となります!
メリット
社会医療法人には、次のようなメリットがあります。
①:法人税法の公益法人に該当するので、本来業務の利益は非課税となる
②:本来業務以外に収益事業を行う事ができ、それに対する法人税率が19%(※)となる
※年800万円以下の所得については15%
③:一定の資産について、固定資産税や不動産取得税が非課税となる
④:収益事業の資産を、本来業務のために支出した場合、その支出した金額を寄付金とみなし、損金に算入できる(上限あり)
⑤:その他、所得税や消費税においても一定の優遇がある
要件
社会医療法人に認定される場合には、次の要件を満たす必要があります。
①:各役員と特殊な関係のある役員が、役員総数の1/3を超えていない
②:各社員と特殊な関係のある社員が、社員総数の1/3を超えていない(社団)
③:各評議員と特殊な関係のある評議員が、評議員総数の1/3を超えていない(財団)
④:救急医療やへき地医療など、救急医療等確保事業を実施している
⑤:理事等の定数や報酬など、厚生労働省政令で定める要件を満たしている
⑥:解散時の財産の帰属先を、国や地方公共団体等に指定している
など
特定医療法人とは?
概要
特定医療法人とは、医療の普及や向上など公益を増進する事業を行っている医療法人で、国税庁長官の承認を受けたものをいいます。
特定医療法人は、持分なし社団医療法人と財団医療法人に限られているので、持分ありの社団医療法人は該当しません。
メリット
特定医療法人には、次のようなメリットがあります。
①:法人税率が19%(※)となる
※年800万円以下の所得については15%
②:看護師等の養成施設に対する固定資産税等の免除
要件
特定医療法人と認定される場合の要件は、次の通りです。
①:財団、もしくは持分無しの社団医療法人であること
②:理事、監事、役員などの親族の割合が1/3以下であること
③:設立者、役員、社員などに特別の利益を与えないこと
④:残余財産の帰属先が、国や地方公共団体などに指定されていること
⑤:法令違反などの事実が無いこと
⑥:全収入のうち、社会保険診療収入が8割を超えること
⑦:自費患者に対する請求を、社会保険診療と同一の基準で計算していること
⑧:医療収入を、かかった費用の1.5倍までの範囲に収めること
⑨:役員の報酬を、一人あたり年間3,600万円以下にすること
⑩:医療施設の規模が基準に適合すること(40床以上など)
⑪:一般とは異なる特別な病床の割合が、30%以下であること
など
社会医療法人と特定医療法人の違い
特定医療法人は社会医療法人と似ているようですが、次のような点で異なる部分があります。
①:法人の種類
社会医療法人:公益法人
特定医療法人:普通法人
②:承認等を行う者
社会医療法人:都道府県知事
特定医療法人:国税庁長官
③:目的
社会医療法人:救急医療等を確保することや、地方の医療を維持すること
特定医療法人:医療の普及や向上など公益を増進すること
認定医療法人とは
概要
認定医療法人とは、医療法人の相続税の納税猶予等の特例について、その適用を受けるために厚生労働大臣に認定された、持分あり医療法人のことを言います。
社会医療法人や特定医療法人は、持分「なし」医療法人でしたが、認定医療法人は持分「あり」医療法人なのですね!
持分あり医療法人には、様々なリスクがあります。
(リスクの詳細については、次の記事を参考にしてください!)
このリスクを回避するために、持分「あり」から、持分「なし」に移行することを検討するのですが、このときに大きな税金が発生してしまい、移行が思うように進まないケースがあるのです。
認定医療法人の制度は、このような持分「なし」への移行のときの税金を、猶予・免除してもらうために、活用するのです。
このことから、社会医療法人・特定医療法人と、認定医療法人は、その根本が大きく違うことを認識しておきましょう!
メリット
認定医療法人には、次のようなメリットがあります。
①:出資者の持分を相続したときの、相続税を猶予・免除する
②:出資者の一部が持分を放棄したときの、他の出資者に対する贈与税を猶予・免除する
③:出資者が全員持分を放棄したときの、医療法人に対する贈与税を免除する
④:福祉医療機構(WAM)からの融資について優遇がある
社会医療法人・特定医療法人のメリットは法人税が主でしたが、認定医療法人のメリットは相続税や贈与税なのですね!
要件
認定医療法人となるための要件は、大まかに次のようなものになっています。
①:社員総会の議決があること
②:持分なし医療法人への移行計画が有効であり、適正であること
③:持分なし医療法人への移行計画が5年以内であること(R5年改正論点)
④:法人の関係者に特別の利益を与えないこと
⑤:役員に対する報酬が高額にならないような基準を定めていること
⑥:株式会社等に特別の利益を与えないこと
⑦:遊休財産額が費用の額を超えないこと
⑧:法令違反等の事実が無いこと
⑨:社会保険診療等の収入が、全収入の80%を超えること
⑩:自費患者に対する請求を、社会保険診療と同一の基準で計算していること
⑪:医療収入を、かかった費用の1.5倍までの範囲に収めること
まとめ
今回は、社会医療法人、特定医療法人、認定医療法人について、その違いと要件、優遇措置などを解説しました。
医療法人は、その特殊な事業形態から、様々な優遇措置が設けられています。
この要件を一つ一つ満たすのは大変ですが、場合によって大きなメリットもありますので、どのような形態を目指していくのかは非常に重要な判断になります。
もし医療法人のことでご不明なことがあれば、ぜひ一度税理士に相談をしていただければと思います。
弊社でも医療法人の持分問題などについて対応ができますので、何かあればお気軽にお問い合わせください!