円満相続税理士法人 税理士
大学在学中に税理士を目指し、25歳で官報合格。大手税理士法人山田&パートナーズに入社し、年間30~40件の相続税申告に携わりました。丸6年間の実務経験を経て退社。地元関西に戻り、円満相続税理士法人に入社しました。現在も相続税申告を中心に業務に励んでいます!
こんにちは、税理士の枡塚です。
上場株式を所有している方(以下、「株主」といいます)が亡くなった場合、上場株式の相続手続きの他に、配当金について相続手続きが必要になる場合があります。
一般的に、上場株式の相続手続きは忘れず行われますが、配当金は少額な場合が多く、ついつい後回しにし、そのまま放置してしまうケースがあります。受領がまだ済んでいない配当金もしっかりと手続きを行い、受領しましょう!
配当金とは、企業が利益の一部を株主に還元するもので、主に現金で支払いがされます。年に1回または2回実施する企業が多数です。企業ごとに定められた一定の時期に配当金額等が確定し、その数か月後に実際に株主に支払われます。
配当金の受取方法
まずは、亡くなった株主が、どのような方法で配当金を受け取っていたか、確認をしましょう。
配当金の受け取り方法は下記の3通りです。
1.証券会社で受け取っていた
証券会社の取引口座で受け取ることができます。この方法を「株式数比例配分方式」といいます。
2.銀行で受け取っていた
保有するすべての上場株式の配当金を指定した一つの銀行口座で受け取ることができます。この方法を「登録配当金受領口座方式」といいます。また、銘柄ごとにそれぞれ別の銀行口座で受け取ることも可能です。この方法を「個別銘柄指定方式」といいます。
3.配当金領収書を使って受け取っていた
株主宛に、配当金領収証が送付されます。期間内(これを「払渡期間」といいます)に指定の金融機関(大多数がゆうちょ銀行です)に持参すると、配当金を受け取ることができます。この方法を「配当金領収証方式」といいます。 ちなみに、払渡期間は、配当金領収証の表面に記載されており、配当金領収証が届いてから約1か月の場合がほとんどです。
未受領配当金とは
では、どのような場合に、配当金について、相続手続きが必要になるのでしょうか?
亡くなった株主が保有していた上場株式について、配当金を受け取る権利があったにも関わらず、受け取らないままになっている「未受領配当金」が存在する場合です。
未受領配当金は、相続人が亡くなった株主に代わって受け取ることができます。ただし、期限が定められており、多くの企業では、3年~5年を期限としています。
ちなみに、民法上は10年で時効(債権の消滅時効)とされています。しかし、多くの企業では、10年もの間、未払の配当金を管理する事務的負担から、独自に期限を定めています。この独自の期限を「除斥期間」といいます。
なお、除斥期間は「定款」に定められていますので、未受領配当金があることがわかった場合には、その企業の「定款」を確認しましょう。定款は、ホームページで確認ができます。
また、未受領配当金は、その上場株式を相続する人が受け取るのが一般的と考えがちですが、遺産分割が決定するまでの間は、相続人全員の共有財産です。そのため、相続人が複数いる場合には、遺産分割協議によって、誰が配当金を受け取るか、決定する必要があります。
未受領配当金の確認方法
それでは、未受領配当金の確認方法についてご紹介します。
1.お手元に配当金領収証がある場合
手元に配当金領収証がある場合には、まだ配当金を受け取っていないということを意味します。 ただし、生前、配当金の受け取り方法を「配当金領収証方式」にしていた場合のみ、この方法で確認ができます。「配当金領収証方式」以外の方法を選択していた場合には、そもそも領収証の送付がされないため、この方法で確認することはできません。
2.お手元に配当金領収証がない場合
株主名簿管理人に「未払配当金残高証明書」の発行を依頼しましょう。
支払いをしていない配当金(株主から見ると未受領になっている配当金)がないか調査し、証明書を発行してくれます。
なお、株主名簿管理人とは、企業から委託を受けて、株主名簿の作成や保管など株主に関する事務を行っている機関です。証券代行機関や株式事務代行機関と言われることもあり、通常は信託銀行が行っています。
~未払配当金残高証明書の発行依頼方法~
①保有している上場株式の株主名簿管理人を確認しましょう
インターネットで「〇〇株式会社 株主名簿管理人」と検索するとその企業の株主名簿管理人を行っている信託銀行が確認できます。
②信託銀行宛に依頼書を提出しましょう
依頼書は信託銀行によって異なりますが、「証明書等発行依頼書」「証明書交付請求書」などと呼ばれます。この依頼書は、信託銀行の証券代行部に電話をして請求をします。信託銀行によってはホームページからの入手も可能です。
依頼書への一般的な記載事項と添付書類は下記の通りです。信託銀行によって異なりますので、事前にホームページもしくは相続ヘルプデスク等で確認をしましょう。
★記載事項
・亡くなった株主が保有していた上場株式の銘柄名
・株主名、住所
・未払配当金残高証明書の送付先の氏名、住所
★添付書類
・株主が亡くなったことがわかる戸籍謄本または法定相続情報一覧図
・依頼相続人の印鑑証明書(発行から6か月以内のもの)
・遺言書がある場合には遺言書
・相続人であることが確認できる戸籍謄本
③依頼書提出から3週間程度で未払配当金残高証明書が指定した送付先に届きます。
未受領配当金の相続手続き
未受領配当金があることがわかったら、受け取るための手続きをしましょう!
配当金領収証が手元にあり、かつ、払渡期間内である場合
ゆうちょ銀行(一部、ゆうちょ銀行ではない企業があります)の窓口に配当金領収証を持参して手続きを行います。
★必要書類
配当金領収証
株主が亡くなったことがわかる戸籍謄本
手続きを行う人の本人確認書類 ・手続きを行う人の印鑑(認印でOKです)
請求に関する書類は、ゆうちょ銀行の窓口に備え付けがあります。ホームページでは入手ができませんので、窓口に出向いて記載をしましょう。
また、配当金の額が少額であれば、他の相続人の署名や捺印などは必要なく、窓口ですぐに受け取ることが可能です。
金額が大きくなると(100万円以上)窓口での手続きは行えません。相続事務センターを通じて、手続きをします。この場合は、払い出しまでに3週間程かかりますので、配当金領収証の払渡期間に余裕をもって手続きをしましょう。また、相続人全員の署名・捺印と印鑑証明書の添付が必要になります。
配当金領収書が手元にあるが、払渡期間を経過している場合、または、配当金領収証が手元にない場合
株主名簿管理人である信託銀行で手続きを行います。一般的には、郵送でのやり取りで、窓口での手続きはできません。
★必要書類
信託銀行所定の依頼書(「共同相続人同意書」「株式配当金等振込依頼書」などの名称です)
(あれば)遺言書もしくは遺産分割協議書
亡くなった株主の戸籍謄本(16歳のお誕生日~死亡が確認できるものが必要です)
相続人全員の印鑑証明書(発行から6か月以内)
遺言書を添付する場合で、その遺言書が自筆証書遺言である場合には、「遺言検認調書」または「検認済証明書」を一緒に提出する必要があります。
信託銀行によって、必要になる書類が異なりますので、事前に確認をしましょう。
ホームページや相続ヘルプデスク等から必要書類の確認が可能です!
また、手続き完了までに3週間から1か月くらいかかります。除斥期間に注意して手続きを行いましょう。
未受領配当金と相続税
未受領配当金は、本来、亡くなった人が受け取るべきものであったことから、相続税の対象になります。
相続税を計算する際の評価額は、受取配当金の総額から源泉徴収税額を差し引いた金額、つまり実際に受け取ることができる配当金の額になります。
まとめ
配当金は少額だから、手続きは後回しにしようとすると、除斥期間が経過して受け取れなくなる可能性があります。早めに手続きを行いましょう。
また、手続きが完了した後も株主宛に配当金領収証等が届くことがあります。配当金は企業の決算日時点で、株主名簿に記載のある株主に支払いがされるため、上場株式の名義変更をしたタイミングによっては、そのようなことが起こります。その場合も、未受領配当金の受取と同様の方法で手続きを行う必要があります。手続きが煩雑になりますので、上場株式の名義変更も早めに行うようにしましょう!
そのほかの相続手続きについてまとめた記事がありますので、是非、こちらもお読みくださいませ。ありがとうございました!