【この記事の執筆者】
相続税の研究を愛する相続専門の税理士。23歳で税理士試験に合格し、国内最大手の税理士法人で6年間の修行を積んだのちに独立。円満相続税理士法人の代表を務める。
こんにちは。相続専門税理士の橘です。
税金の支払いや、借金の支払いを肩代わりすると、贈与税が課税されるってご存知ですか?
この論点は、皆さんが思っている以上に身近な論点です。
思わぬトラブルに巻き込まれないようにするためにも、どういった場合に贈与税がかかって、そうされないようにするための対策をご紹介します。
ずばり、税金や借金の肩代わりをしてあげて、その返済を求めない場合です。
言い換えれば、肩代わりしてもらったお金を返済するのであれば、贈与税はかかりません。
例えば、次のようなケースが考えられます。
1.親が子供の相続税を負担する場合
このケースが最もトラブルになりやすいです。
なぜ、こういったことが起こるかというと、
夫婦間の相続(例えば夫が亡くなっときに妻が相続する場合)には、最低でも1億6千万円まで税金を課さないという、配偶者の税額軽減という制度があります。※詳しく知りたい方はこちら→配偶者の税額軽減とは?
この制度があるため、配偶者に対して相続税がかかることはあまり多くありません。
一方で相続人である子供には、そういった制度はありませんので、相続税を支払わなければいけません。
そうすると・・・
母「あんた、このお金で相続税払っちゃいなさい。」
子「母さん・・・。ありがとう!!」
というやりとりのもと、母が子供の相続税を払ってしまうケースが散見されます。
親が子供の税金を払うということは、親が子供にお金をあげたのと同じです。
このことが税務署の人に知られた場合には、贈与税が追徴課税される可能性が高いです。
「そんなこと、税務署に言わなければわからないだろう!」と思われる方もいらっしゃると思います。
しかしながら、税務署の人達は、ここの論点はばっちりマークしています。
実際に、税務調査が行われた際には「相続税は、どの預金口座からお支払いになりましたか?」と、質問されます。
この時に、「私の相続税は母に負担してもらいましたよ」と言おうものなら、生前贈与と認定され、贈与税が追徴課税される恐れがあります。
2. 住宅ローンを夫婦の連帯債務で借りて、途中から妻の借入を夫が返済する場合
この論点は、30代40代のご夫婦に起こりがちです。
夫婦で住宅を購入するときは、夫婦共働きで収入があるので、連帯債務で住宅ローンを組まれる方が多いです。
しかし、その後、奥様が妊娠し、会社を退職したとします。そうすると、奥様の収入がなくなりますので、ご主人が奥様の分までローンを返済しなければいけません。
この場合には、奥様分の借入金を年間110万円以上ご主人が返済すれば、贈与税がかかります。夫婦間であっても、年間110万を超える贈与には税金がかかりますので、注意してください。
また、住宅ローンを連帯債務で組む場合には、住宅ローン控除という非常にお得な制度を上手に使えなくなるリスクがあります。
本当に財産がなくて、借金を返すのに、にっちもさっちも行かなくなっている時に、借金を肩代わりしてもらった場合には、贈与税は課税しないこととされています。本当ににっちもさっちもいかない状態とは、全財産なげうっても借金返済できない、といったかなり追い込まれた状態です。ちょっとやそっとの困り具合だと認められません。
税金や借金の肩代わりが、あくまで一時的な立替払いであり、返済する予定のものであれば贈与税はかかりません。生前贈与は、あくまで「あげた・もらった」の関係ですが、立替払いは、あくまで「貸した・借りた」の関係です。
前者には贈与税がかかりますが、後者には贈与税はかかりません。
一見、後者の方がお得に見えるかもしれませんが、そうともいえません。
例えば、親が子供の借金を5000万円立替ていたとします。そして子供が返済をする前に、その親が亡くなってしまったとします。この場合、子供に対する貸付金5000万という財産がありますので、これに対して相続税がかかります。
結局、贈与税か相続税はかかってしまうことになるわけですね。
親族間の貸し借りをするのであれば、その証拠をしっかり残しておきましょう。
と、言うのも、やってはいけないことですが、世の中には、貸し借りのように見せかけて、本当は贈与をしている人が多いのです。お金を渡した時に、貸し借りという形をとれば、贈与税はかからない。相続の時には、貸付金を申告しなければ相続税もかからない。
このようなやり方で、税金を逃れようとする人が多いのですが、これは脱税です!!
やってはいけないですし、やっても簡単に見抜けますので、絶対マネしないでください。
上記のような誤解をされないようにするためにも、親族間で貸し借りをするのであれば、客観的な証拠をしっかり残しておくことをお勧めします。
具体的には、
1.金銭消費貸借契約書をつくる。(両者の署名があれば、借用書のような簡単なものでもいいと思います)
2.実際に返済する。(あるとき払いや出世払いは税務署から認められません)
3.現金での受け渡しはせずに、通帳へ振り込む。
第一に、契約書はないよりはあった方がいいです。金額、返済期間は最低限必要です。
利息については、書き始めると長くなってしまうので、ここでは詳しく書きませんが、私は、親族間の貸し借りに利息は必要ないと考えています。
次に、借りたお金は実際に返済してください。返済の実態があったかどうかは、税務調査の際に非常に重用しされます。
なお、返済に限らずですが、親族間のお金のやりとりは、全て銀行振込でやることをお勧めします。
現金のやりとりは証拠が残らないので、痛くない腹を探られることがよくあります。できる限り、お金の流れは客観的に明確にしておいた方が、後々トラブルを避けられます。
また、返済に関して重要なポイントは、返済できる能力があるかどうかです。
よくあるケースとして、「専業主婦の娘に対して5000万円貸し付けました」というような場合、税務署の職員さんから、こう質問されます。
「そのお金、どうやって返すつもりですか?」
税務署の職員さんたちは、「そんな大金、返せる見込みないだろ!そんなのは生前贈与だ!」と考えています。
昔、実際に私が立ち会った税務調査でこんなやりとりがありました。
調査官「息子さんの税金をお母さまの通帳から1億円はらっていますねぇ。返せる見込みはあるのですか?」
息子さん「私の普通預金に1億円以上ありますので、今日にでも返そうと思えば返せますよ」
調査官「・・・」
資産家の方は凄いなぁ、と思ったのと同時に、返済能力の有無は重要なポイントなんだと学びました。
税金や借金の立替払いについて、税務署の職員さんたちは目を光らせています。
一時的な立替払いであれば問題はありませんが、貸し借りの実態がないと贈与と認定されるリスクがあります。
契約書をつくる。
返済の実態を残す。
特に重要なのはこの2つです。
多額の資金のやりとりをする際には、自分だけで判断せず、税理士にご相談ください。
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