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  • 家族信託にかかる相続税は?財産評価や小規模宅地特例についても解説!
家族信託

こんにちは!円満相続税理士法人の久保です。

「家族信託」を活用することで、相続対策や財産管理の選択肢が広がりますが、その一方で気になるのが相続税の負担です。

本記事では、家族信託における相続税の計算方法や財産評価のポイント、小規模宅地特例の適用条件など、知っておきたい重要なポイントをわかりやすく解説します。

家族信託を検討中の方や相続対策に悩んでいる方は、ぜひ最後までご覧ください!

家族信託の概要

家族信託とは、財産の所有権のうち、管理する権利だけを信頼できる家族に移す(託す)という制度です。

所有権には管理をする権利とお金をもらう権利があります。

この2つの権利のうち、管理をする権利だけを移し、お金をもらう権利はそのままの所有者に残します。

たとえば不動産であれば、管理は信頼できる家族に任せ、家賃や売却代金はそのまま所有者が得ます。

家族信託とは

法人税法2条29号に規定する集団投資信託

法人税法2条29号の2に規定する法人課税信託

法人税法12条4項1号に規定する退職年金等信託

相続税法9条の4第1項又は第2項の信託の受託者がこれらの規定により遺贈により取得したものとみなされる信託

難しい言葉が並びますが、要は個人が相続又は遺贈により取得した信託から除かれるものは特例の対象外です!

なお、受益権が複層化された信託も除外要件に該当しなければ小規模宅地の対象になります。

【ワンポイント】家族信託と遺言の違いと注意点

【例】生前に信託契約で不動産の引継ぎ先を子供2人と決めている場合で、一方の子供しか小規模宅地特例の適用ができないケース。

当然ですが、この場合は一方の子供のみしか特例を使うとことができません。

遺言書の場合、相続人全員の合意があれば遺言の内容と異なる遺産分割協議は可能ですが、信託では遺産分割協議は原則不可です。

したがって遺言書を使っていれば、「特例の適用を受けることができる一方の子供が対象不動産のすべてを相続する」という遺産分割協議へ切り替えて節税効果が得られますが、信託の場合はこのようなことができません。

よって、信託契約書を作る段階で、小規模宅地特例を最大限に使える前提で信託契約書を作成する必要があるのです。 ただし、これは原則的な取り扱いのため、信託契約設定の際に特別条項をあらかじめ定めておくことで対応可能な場合もあります。

家族信託における財産評価の方法

⑴評価額は所有権を持つ財産と同額になる

家族信託に設定した財産は信託財産となり、所有権でなく、利益を受け取る権利(=信託受益権)を所有していることになりますが、その評価額は所有権を持つ財産と同額です(相続税法9の2⑥)。

つまり亡くなった方が土地、建物を信託財産にしていた場合には、課税上は土地、建物の所有権を相続したものとみなして評価を行います。

また、所有権を相続したものと考えるため、貸家建付地及び貸家の評価減(貸家が建っている土地や貸家にしている家屋について、相続税や贈与税の課税評価額を一定割合減額する制度)も可能です。

⑵複層化信託における財産評価

複層化信託とは、信託の受益者の権利をさらに複数に分けるイメージです。

具体的には、収益受益権と元本受益権に分けます。

収益受益権と元本受益権は信託法では定義されていませんが、相続税法基本通達9-13では以下のように定められています。

収益受益権…信託財産の管理及び運用によって生ずる利益を受ける権利

元本受益権…信託に関する権利のうち信託財産自体を受ける権利

家族信託の権利

例えば、父が上場株式を保有しており、将来的に子が株式を承継する前提である場合を考えてみましょう。

収益受益権を父、元本受益権を子に設定することにより、上場株式に係る配当金は父が継続的に受け取ります。

その一方で、株式そのものの権利は子に取得させることが可能になります。

家族信託で上場株式を承継する場合

信託終了時の財産取得者を子とすることにより、将来的には収益受益権を含む財産そのものを子が取得することになります。

これにより、財産の早期承継を実現しつつ、信託期間中の収益については、引き続き父が取得することができるようになります

なお信託開始時には、委託者から元本受益者に対して贈与があったものとされます(相続税法9の2①)。

収益受益権と元本受益権の財産評価の方法は次のとおりです。

⑶ 元本の受益者と収益の受益者とが異なる場合においては、次に掲げる価額によって評価する。

  イ 元本ご受益する場合は、この通達に定めるところにより評価した課税時期における信託財産の価額から、ロにより評価した収益受益者に帰属する信託の利益を受ける権利の価額を控除した価額

  ロ 収益を受益する場合は、課税時期の現況において推算した受益者が将来受けるべき利益の価額ごとに課税時期からそれぞれの受益の時期までの期間に応ずる基準年利率による福利現価率を乗じて計算した金額の合計額(財産評価基本通達 202)

まずは収益受益権の評価額を求めることになりますが、受益者が将来受ける利益の価額の推算方法や受益期間について、明確に定められているわけではありません。

したがって、合理的な方法により算定する必要があります。

例えば、利益の算定には、過去の配当実績に基づき将来受け取る配当金額を推算する方法などが有効と考えられます。

また受益期間は、収益受益者の平均余命年数に基づき算定する方法が有効でしょう。

収益受益権の価額が求められたら、信託財産の価額から収益受益権の価額を控除して元本受益権の価額を求めます。

つまるところ、次の式が成り立ちます。

信託財産の価額=収益受益権の価額+元本受益権の価額

そして、将来にわたって得ることができる権利(=収益受益権)は時が経過するにつれて段々と少なくなるため、収益受益権と元本受益権の関係は以下のようになります。

信託期間

おわりに

いかがでしたでしょうか。家族信託は、財産管理や相続対策として非常に有効な手段ですが、その設計や運用には慎重な検討が必要です。

信託財産は受託者に管理権を移すものの、利益は受益者に帰属し、課税対象も受益者となるため、税金のルールを正しく理解することが重要です。

また、信託財産の評価額は所有権を持つ財産と同額とされ、小規模宅地特例や貸家建付地の評価減などの特例も活用可能です。

しかし、特例の適用には信託契約書を作成する段階で十分な配慮が必要です。    

さらに、複層化信託をうまく活用することで、相続税対策の幅が広がります。

しかし、複層化信託は受益権が多段階化する分、税務や法務の取扱いが複雑になるケースも少なくありません。

適正な評価や特例の適用を受けるためには、税理士や司法書士などの専門家と相談しながら進めることが大切です。

大切な財産をどのように守り、次世代へ承継していくか、ぜひ本記事を参考にご検討いただければ幸いです。

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