良い条件でマイホームを売却できそうだけど…
あれ?もしかして収入が増えると国民健康保険料も高くなってしまうの…?

このような疑問をお持ちではありませんか?
結論から申し上げると、マイホーム特例を上手に使って収入(譲渡所得)を申告すれば、保険料は上がらないことが大半です。

この記事ではマイホーム特例と国民健康保険料の関係について解説していきたいと思います。

国民健康保険料の負担を増やすことなく、安心して売却を進めましょう♪

健康保険の種類

健康保険には主に4つの種類があります。

「健康保険」…会社員やその扶養家族が加入

「共済保険」…国家公務員や地方公務員が加入

「国民健康保険」…自営業者や年金生活者、非正規雇用者やその家族が加入

「後期高齢者医療保険」…75歳以上または65歳以上で障害を持つ高齢者が加入

この記事ではなぜ「国民健康保険料」を主に取り上げているかということですが、理由は保険料の算定方法にあります。

「健康保険」や「共済保険」の場合は月給を基準とした「標準報酬月額」により保険料が決まります。

これに対し「国民健康保険」の場合は世帯の所得や加入者の人数、「後期高齢者医療保険」の場合も加入者の所得によって決定されます。

つまり、「国民健康保険」や「後期高齢者医療保険」の場合は譲渡所得の有無が保険料の算定に影響を与えるということですね!

国民健康保険料の計算方法

国民健康保険料は「医療分」「後期高齢者支援金分」「介護分」という3つの区分の保険料を合計したものをいいます。(「介護分」は40歳以上64歳以下の加入者のいる世帯が負担することになっています)

そしてこの保険料はさらに「所得割額」「均等割額」「平等割額」という3つの要素の合計額から成り立っています。(自治体により若干名称や区分が異なる場合があります)

所得割額」…世帯の所得に応じて計算(所得割×保険料率)

「均等割額」…世帯の加入人数に応じて計算(加入者数×均等割額)

「平等割額」…1世帯当たりいくらで計算

したがって、1世帯当たりの保険料は、3つの要素と3つの区分の合計で計算されることになります。

保険料率は以下の図の通りです。(引用元:神戸市HP)

世帯人数:1人、収入金額:4,000,000円、総所得金額:2,760,000円、年齢:40歳

例えばこのような場合、総所得金額2,760,000円から基礎控除額430,000円を差し引いた金額は2,330,000円となります。

この金額に所得割額の保険料率を乗じるので、

①医療分「所得割額」2,330,000円×8.4%+「均等割額」34,240円+「平等割額」22,540円=252,500円

②後期高齢者支援金分「所得割額」2,330,000円×3.20%+「均等割額」12,970円+「平等割額」8,530円=96,060円

③介護分「所得割額」2,330,000円×3.47%+「均等割額」14,490円+「平等割額」7,130円=102,470円

となり、①~③の合計451,030円が年間の保険料となります。

譲渡所得と国民健康保険料との関係

一般に収入(所得)が上がれば、国民健康保険料の負担は増加します。

それは世帯の所得に応じて計算される「所得割額」が保険料の計算要素に含まれているためです。

所得割額」の計算のもとになる所得金額は、所得金額=総所得金額等-住民税の基礎控除額 

で計算されます。所得割額の算出に必要な「総所得金額等」は次の金額の合計額となります。

①利子所得

②配当所得

③不動産所得

④事業所得(営業所得など)

⑤給与所得(所得金額調整控除後)

⑥総合課税分の短期譲渡所得

⑦総合課税分の長期譲渡所得(1/2の金額)

⑧一時所得(1/2の金額)

⑨雑所得(公的年金所得など)

⑩山林所得

分離課税分の土地建物等に係る短期譲渡所得

分離課税分の土地建物等に係る長期譲渡所得

⑬(申告分離課税を選択した)上場株式等に係る配当所得

⑭一般株式等に係る譲渡所得等

⑮上場株式等に係る譲渡所得等

⑯先物取引に係る雑所得等

不動産を売却した場合の譲渡所得は上記の⑪または⑫に該当します。(譲渡の年の1月1日現在において所有期間が5年以内であれば⑪の短期譲渡所得、5年を超えていれば⑫の長期譲渡所得になります)

つまり、不動産を売却すると譲渡所得が上がり、必然的に国民健康保険料も上がる恐れがあると言えます。

なお、上記①~⑯は「均等割額」や「平等割額」の軽減判定にも用いられます。

マイホーム特例を使えば国民健保険料は安くなる!

実は、譲渡所得を適切に申告していれば、国民健康保険料を抑えることが可能です。

なぜなら分離課税分の土地建物等に係る短期譲渡所得・⑫分離課税分の土地建物等に係る長期譲渡所得については、特別控除(居住用不動産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の特例)適用後の金額を使うこととされているためです。

つまり、特別控除を適用して譲渡所得を申告していれば、国民健康保険料の計算上も実際の利益よりも少ない金額で計算してくれるということです。

居住用不動産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の特例」は、マイホーム特例とも呼ばれ、マイホームを売却して譲渡益が出た場合に3,000万円まで控除してくれるという、大変ポピュラーな特例です!

例えば5年超所有していたマイホームを、

①売却額5,000万円、②取得費・譲渡費用 2,000万円で売却した場合、

譲渡益は、①-②=3,000万円となり、譲渡所得税と住民税は600万円にもなるところ、

マイホーム特例を使うと、①-②-特別控除額3,000万円=0円となり、

譲渡所得税・住民税も0円にすることが可能です。

そして国民健康保険料の計算においても、譲渡所得(譲渡益)を3,000万円ではなく特別控除後の金額である0円で見てくれるということになっているのです。

この場合、マイホームの譲渡益は、譲渡所得税や住民税だけでなく、国民健康保険料の計算上もなかったということになりますね♪

なお、後期高齢者医療保険料も「所得割額」+「均等割額」で算定されるのですが、

この場合の「所得割額」の計算の基礎となる総所得金額も特別控除後の金額を使うため、国民健康保険料の場合と同様、適正に申告をした方が良いと言えますね。

>>マイホーム特例に関するブログはこちら!

>>空き家特例のブログはこちら!

国民健康保険料が上がるケースもある

たいていの場合お得と思われるマイホーム特例ですが、実は国民健康保険料が上がってしまうパターンが存在します。

それは保険料の軽減を受けているパターンです。

保険料の軽減は、前年中の総所得金額等が一定基準以下の場合、「均等割額」や「平等割額」が軽減される制度です。

保険料の軽減を受けている場合、譲渡所得は特別控除前の金額で計算するものとされています。そのため、保険料の軽減を受けている場合は注意が必要ですね。

マイホーム特例を使えば医療費や住民税の負担にも影響しない

国民健康保険や後期高齢者医療保険に加入されている方は、年齢や所得に応じて医療費の自己負担割合が変わります。

現役並み所得者の場合は3割負担、その他の場合は1割または2割負担ですね。

この自己負担割合の決定にもマイホーム特例を適用したか否かが影響します。

不動産を譲渡して譲渡益があれば、自己負担割合を決定する所得金額が増えることになるため、割合も上がる可能性があります。

しかし、マイホーム特例を適用していれば特別控除後の金額で見てくれるため、特別控除後の譲渡益が0円になるのであれば、自己負担割合の決定には影響がないということですね。

また住民税については、不動産の譲渡による所得は分離課税とされているため、給与など他の所得とは区分し、特別な税率で計算することになっています。

したがって上記3.でもお話ししましたが、マイホーム特例を適用して譲渡益が0円になるのであれば、マイホームの譲渡に対する住民税はかからず、譲渡所得以外の所得に対する住民税のみでOKということですね。

まとめ

不要になった不動産を売却できたものの、翌年の健康保険料や譲渡所得税、住民税が心配…という場合でも、特別控除を使って適正に申告すれば安心ですね♪

ただ、譲渡所得税は金額が大きく計算も複雑であり、適用要件や添付書類にも注意が必要なため、プロにご相談されることをお勧めいたします。

私たち円満相続税理士法人では相続税や贈与税、譲渡所得などの申告やご相談を承っております。お気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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