円満相続税理士法人 公認会計士・税理士
在学中に公認会計士試験に合格し、監査法人、コンサル、公務員を経て、円満相続税理士法人へ入社。相続・事業承継のプロとしてご家族のサポートができるよう業務に携わっています!
こんにちは、円満相続税理士法人の中岡です!
会社オーナーの方の相続対策は、経営権(株式)の承継とあわせて、その他の財産の相続についても、考えなければなりません。
会社の事業承継がうまくいったとしても、いざ相続が発生すると、家族で揉めてしまうこともあります。
揉めてしまう一つの要因に遺留分がありますが、事業承継を行う際に使える対策として、遺留分に関する民法の特例が設けられています。
今回は、遺留分の民法特例について、詳しく解説していきます。
最後までお読みいただければ、具体的な内容や要件、手順について分かるようになりますよ♪
遺留分とは
遺留分とは、一言で言うと、
相続人に保障された最低限、相続できる権利
です。
詳しくは、こちらをお読みいただければと思いますが、ざっくり言うと、法定相続分の2分の1が権利として保障されています。
具体例
父、母、長男、長女というご家族がいて、父の遺産が1億円でした。
そして、父が亡くなった後、遺言書が見つかり、そこには、「すべての財産を長男に相続させる」と書かれていました。
このとき、母や長女は、一切財産をもらうことができないでしょうか?
ここで登場するのが、遺留分です。
母は、法定相続分1/2の1/2、つまり1/4、
長女は、法定相続分1/4の1/2、つまり1/8の遺留分があります。
具体的な金額に置き換えると、母は1億円×1/4=2,500万円、長女は1億円×1/8=1,250万円の権利があり、遺留分を侵害している長男に請求することができます。
私は、蓄えもあるし、もういいわ
私は兄が全部相続するのは納得できない!
あくまでも権利なので、請求するかどうかは自由です。
そして、長女が遺留分侵害額請求をすると、長男は長女に1,250万円の現金を支払わなければなりません。
これが、遺留分の概要です。
事業承継とどうかかわってくるのか、次で見ていきましょう。
事業承継後に遺留分に関するトラブルになるケースとは?
スムーズに事業継承が済んだにも関わらず、その後の相続で遺留分についてトラブルになるケースがあります。そのようなことにならないように用意されているのが、遺留分の民法特例なのです。
まずは、どのようなトラブルが起きるのか、ある家族を例にとって見ていきましょう。
家族構成:父、長男、長女
父の財産:1億円(創業した会社の株式5,000万円、現金5,000万円)
父は、創業した会社の社長をしており、長男が後継者候補として取締役でバリバリ働いています。
長女は、既に結婚し、専業主婦で、会社には興味がありません。
そろそろ引退して、息子に譲ろう
ということで、社長を長男に譲るとともに、株式もすべて長男に譲りました。
社長を引き継いだ長男は、スムーズに事業承継をすることができ、どんどん会社を成長させていきます。
息子と娘がもめないように遺言書も書いておこう
また、長女の遺留分(財産1億円×1/4=2,500万円)を侵害しないように、長男と長女に現金を2,500万円ずつ相続させるという遺言書も残して、万全の対策を行ったつもりですが・・・
5年後、父が亡くなり相続が発生します。
遺言書どおり遺産を分けよう
ちょっと待って、遺留分をもらうわ!
遺留分は侵害していないと思えますが、
実は、1つ大きな落とし穴があります。
それは、遺留分の計算は、生前贈与した財産でも、亡くなった日の時価で行わなければならないということです。
例えば、社長を引き継いだ長男が会社を成長させ、会社の株式の評価額が1億円まで上がっていると、
(株式1億円+現金5,000万円)×長女の遺留分1/4=3,750万円
となり、1,250万円(3,750万円-2,500万円)、遺留分を侵害していることになってしまうのです!
このとき、長男は、長女から1,250万円の遺留分侵害額請求をされる可能性があります。
頑張って会社を成長させたのに・・・
このようなことにならないための手段として、遺留分の民法特例が用意されています。
遺留分の民法特例とは
遺留分の民法特例とは、事業承継をする際に、先代経営者の推定相続人及び後継者の全員により、遺留分の計算に関して、民法と異なる取扱いをすることを合意することです。
大きく、基本合意と付随合意の2種類がありますので、順に説明していきます。
基本合意
基本合意とは、遺留分の民法特例の合意をする際に、必ず含めなければならない内容です。
除外合意と固定合意の2種類があり、いずれかまたは併用することも認められています。
除外合意
除外合意とは、遺留分の計算に含めないこと(除外)を合意することです。
先ほどの例では、会社の株式は遺留分の計算に含めず、遺留分は現金5,000万円×1/4=1,250万円という計算をするということです。
固定合意
固定合意とは、遺留分の計算に含める株価を合意時の時価に固定することを合意することです。
先ほどの例では、事業承継時に合意をしていたとすると、遺留分は(株式5,000万円+現金5,000万円)×1/4=2,500万円という計算をするということです。
付随合意
付随合意を行うかどうかは任意ですが、基本合意に合わせて合意することができます。
付随合意で認められる内容は、後継者または推定相続人が相続または贈与で取得した財産を遺留分の計算に含めないことです。
簡単に言うと、会社の株式以外の財産についても除外合意ができるということです。
遺留分の民法特例を受けるための要件
遺留分の民法特例を受けるためには、会社・先代経営者・後継者に関して満たすべき要件があります。
会社の要件
中小企業者であること
3年以上継続して事業を行っている非上場会社であること
先代経営者の要件
過去または合意時に会社の代表者であること
後継者の要件
合意時に会社の代表者であること
先代経営者から贈与等により株式を取得したことにより、会社の議決権の過半数を保有していること
遺留分の民法特例を受けるための手順
遺留分の民法特例を受けるための手順は以下のとおりです。
1.先代経営者の推定相続人及び後継者で合意書を作成
2.経済産業大臣の確認
3.家庭裁判所の許可
合意書が完成したら、1か月以内に申請して、経済産業大臣の確認を受け、その後1か月以内に申し立てをして、家庭裁判所の許可を受けます。
これにより、合意書の効力が発生します。
遺留分の民法特例が使えない場合の対処法
推定相続人の合意が得られない場合など、遺留分の民法特例を適用するための条件が整わない場合は、以下の方法でリスクを減らすことも検討しましょう。
遺留分に配慮した遺言書を準備する
後継者を生命保険の受取人にして、遺留分侵害額請求に備える
まとめ
遺留分の民法特例をうまく活用すれば、無用な争いを避けることができます。
後継者でない推定相続人の方は、合意に応じるかどうかは自由ですので、必ずしも活用できる制度ではありませんが、検討する価値はあります!
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最後までお読みいただきありがとうございました!