こんにちは、税理士の枡塚です。
昔の従業員や取引先などに分散してしまった株式を買い取って、集約しておきたい。
という経営者様は多いのではないでしょうか?
昔の誼みで、適当な価額で買い取りをしてしまうと、思わぬ課税を招くことになります。
今回は、当事者が個人と法人の場合で、解説をしていきます!
円満相続税理士法人 税理士
大学在学中に税理士を目指し、25歳で官報合格。大手税理士法人山田&パートナーズに入社し、年間30~40件の相続税申告に携わりました。丸6年間の実務経験を経て退社。地元関西に戻り、円満相続税理士法人に入社しました。現在も相続税申告を中心に業務に励んでいます!
取引価額の決定
取引価額は、当事者間で自由に決めることが可能です。
特に第三者間での取引の場合には、対象となる非上場株式が保有する資産の価値や収益力、将来性などの様々な要因を加味して、価額の決定が行われます。
ただし、当事者間の合意できる価額であることはもちろん、税務上もトラブルにならない価額を検討することが重要です。
設例
前提
甲社の株主は、甲社会長と取引先A社でした。
この度、取引先A社は資金繰りが厳しくなったため、甲社へ株式の買い取りを依頼しました。
甲社は、検討の結果、会長が買い取ることで話を進めることにしました。
取引価額の決定基準となる株価
この場合、売り手である法人A社には法人税法上の時価が、買い手である甲社会長には所得税法上の時価がそれぞれ適用されます。
個人間での取引とは異なり、法人は営利を目的としているため、時価と取引価額に乖離があった場合には、受贈益の認識や寄附金課税が起こりえます。
このため、時価と乖離した場合の課税関係を整理しつつ、取引価額を決定する必要があります。
評価方法
所得税法上の時価及び法人税法上の時価の評価方法には、原則的評価方式と特例的評価方式(いわゆる配当還元方式)があります。どちらの評価方式を採用するかは、売り手である法人・買い手である個人が同族株主等に該当するか否かによって決定します。
なお、同族株主等とは、次の者をいいます。
同族株主
評価会社の株主のうち、課税時期において株主1人及びその同族関係者の有する議決権の合計数が、その会社の議決権総数の30%以上である場合おけるその株主及びその同族関係者をいいます。
同族株主のいない会社の株主で、議決権割合15%以上のグループに属する株主
ここで、同族株主等の判定については、売り手である法人は取引後の議決権の状況により行います。一方で、買い手側である個人においては、取得直前の議決権の状況で行うことになります。
所得税法基本通達と法人税法基本通達における時価の違い
同族株主等の判定のタイミングが違うことに混乱された方も多いのではないでしょうか?
売り手と買い手の議決権の判定のタイミングが違うのはどうしてですか?
法人が非上場株式を譲渡する場合の基準となる株価は、法人税法において特段定められた規定が存在しないため、原則として、非上場株式の評価損の損金算入について定められた通達(法人税法基本通達9-1-13、9-1-14)を基に算出します。
一方、個人が非上場株式の譲渡をする場合の基準となる株価は、取引をする相手によって異なり、相手が法人の場合には、所得税基本通達における時価を基準とします。
これらは、概ね同じ内容ですが、異なる点が2つあります。
売買実例がある場合の評価
法人税法基本通達の場合には、採用すべき時価について「前6月間において売買の行われたもののうち、適正と認められる価額」とされている一方、所得税法基本通達では、「最近において売買の行われたもののうち適正と認められる価額」とされています。
同族株主の判定を行う時点
財産評価基本通達による評価では、その譲渡者が同族株主に該当するか否かによりその評価方法が異なりますが、その同族株主に該当するか否かについて、法人税法基本通達では「株式譲渡後」で判定をするのに対し、所得税法基本通達では「株式譲渡直前」で判定をすることとされています。
法人から個人への売買 4つのパターン
支配法人から支配個人への譲渡
この場合、いずれも原則的評価方式により時価を算定するため、特段問題は生じないケースです。
支配法人から非支配個人への譲渡
この場合、売り手である支配法人は原則的評価方式で、買い手である個人は特例的評価方式で時価を算定することになり、異なる方法を採用するため、取引価額の決定は慎重に対応しましょう。
なお、高額譲渡をした場合、売り手である法人に対して、「取引価額-時価」の受贈益課税が生じます。
また、低額譲渡をした場合には、「時価-取引価額」が、売り手である法人に対して寄附金となり、買い手である個人に対して、一時所得(買主が役員等の場合には、役員賞与等として取り扱われます)となります。
非支配法人から支配個人への譲渡
この場合は、売り手である非支配法人は特例的評価方式で、買い手である個人は原則的評価方式で時価を算定することになり、異なる方法を採用するため、取引価額の決定は慎重に対応しましょう。
なお、高額譲渡をした場合、売り手である法人に対して、「取引価額-時価」の受贈益課税が生じます。
また、低額譲渡をした場合には、「時価-取引価額」が寄附金となり、買い手である個人に対して、一時所得(買主が役員等の場合には、役員賞与等として取り扱われます)となります。
非支配法人から非支配個人への譲渡
この場合、売り手・買い手ともに特例的評価方式により時価を算定するため、特段問題は生じません。
買取資金の捻出
取引価額は、双方同意のもと、税務上も問題のない価額で決定しました。
しかし、買取をするための資金がなく、私個人が会社から借入をして、買取をしようと思っています。
会社は、営利を目的としているため、個人に資金を貸し付けた場合には、利息を取る必要があります。
個人から法人の貸付や個人間の貸付とは違い、無利息はもちろん、適正利率以下での貸付をすると、一定の事情がある場合を除き、給与課税が生じます。また、貸し付けた相手が役員である場合には、法人側では、定期同額支給に該当せず、損金不算入になります。注意しましょう。
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