円満相続税理士法人 公認会計士・税理士
在学中に公認会計士試験に合格し、監査法人、コンサル、公務員を経て、円満相続税理士法人へ入社。相続・事業承継のプロとしてご家族のサポートができるよう業務に携わっています!
個人と法人が土地の貸し借りをする際に、借地権の認定課税を避けるために、土地の無償返還に関する届出書を提出しますが、地代は自由に設定しても大丈夫でしょうか?
答えは、以下のとおりで、資産税のプロなら、法人が地主の場合は、要注意ということを押さえておきましょう!
個人が土地を貸している場合は、課税上の問題はありません
法人が土地を貸している場合は、注意しなければなりません
このような結論になるのは、無償返還の届出書を提出すれば、借地権の認定課税から、相当の地代の認定課税に切り替わるという点がポイントです。
これは、法人は営利を目的とするので、経済的に合理的な行動を取るということを前提としたもので、「借地権を無償でやり取りするなら、相当の地代をもらうのが合理的ですよね?」という理屈です。
なお、相当の地代は、「原則として、その土地の更地価額のおおむね年6パーセント程度の金額」とされています。
それでは、相当の地代の認定課税に切り替わることによって、何が起こるのか、具体的に見ていきましょう。
前提として、無償返還の届出書を提出していて、相当の地代を600万円、実際にやり取りしている地代を200万円とします。
まず、個人が土地を貸している場合です。
<貸主:個人>
不動産所得は実際に受け取る金額が収入とされますので、200万円が収入に計上されます。
<借主:法人>
法人は、相当の地代600万円が損金に計上され、実際に支払った200万円との差額400万円が受贈益として益金に計上されますが、差し引き200万円の損で、実際に支払った200万円と同額になりますので、税務上不利になることはありません。
このように、個人が土地を貸している場合は、結果的に、課税上の問題は生じませんので、実際の地代をいくらにしても大丈夫と言えます。
次に、法人が土地を貸している場合です。
<貸主:法人>
法人は、相当の地代600万円が益金に計上されますが、実際に受け取ったのは200万円なので、差額の400万円は、借主にあげたというように処理されます。
借主が、役員なら役員報酬、使用人なら給与、その他なら寄附金となり、いずれも損金不算入になる可能性があり、税務上不利になる可能性があります。
<借主:個人>
個人も同様に、差額の400万円が、役員・使用人なら給与所得、その他なら一時所得として課税されます。
このように、法人が土地を貸している場合は、地代の設定に注意を払わなければなりません。
なお、法人間で土地の貸し借りをしている場合も同様です。
無償返還の届出書を提出すれば、借地権の認定課税から、相当の地代の認定課税に切り替わるというところまで押さえておきましょう。
<法人税法施行令>
(土地の使用に伴う対価についての所得の計算)
第百三十七条 借地権(地上権又は土地の賃借権をいう。以下この条において同じ。)若しくは地役権の設定により土地を使用させ、又は借地権の転貸その他他人に借地権に係る土地を使用させる行為をした内国法人については、その使用の対価として通常権利金その他の一時金(以下この条において「権利金」という。)を収受する取引上の慣行がある場合においても、当該権利金の収受に代え、当該土地(借地権者にあつては、借地権。以下この条において同じ。)の価額(通常収受すべき権利金に満たない金額を権利金として収受している場合には、当該土地の価額からその収受した金額を控除した金額)に照らし当該使用の対価として相当の地代を収受しているときは、当該土地の使用に係る取引は正常な取引条件でされたものとして、その内国法人の各事業年度の所得の金額を計算するものとする。
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