円満相続税理士法人 税理士
学生時代に税理士試験の受験を始め、在学中に4科目取得し群馬県の会計事務所に就職。売上規模数十億円の企業の法人税、相続税を担当しつつ25歳の時に税理士試験合格。
一つの土地を複数人で共有しているのですが、今後の管理の問題が心配です…
そのような時は「共有物分割」という手続きを行うと、共有問題が解決できるかもしれません!
みなさんこんにちは。
円満相続税理士法人、税理士の加藤です。
一つの土地を複数の人で共有をしていると、売却や運用をするときに問題になることがあります。
例えば、土地を所有している人の一人が音信不通の場合には、実際に売却の手続きなどで弊害が出てしまいます。
このようなことから、基本的に土地は単独所有(一人で一つの土地を所有すること)の方が管理しやすいのですが、現実問題として共有状態の土地は多く存在しています。
そこで今回は、共有状態の土地を単独所有へ解消する方法の一つである、共有物の分割特例について、徹底的に解説します!
この特例を上手に活用すると、税金の負担が無い形で共有状態を解消できるので、ぜひ参考にしていただければと思います。
共有物の分割とは?
例えば次のように、AさんとBさんが1/2ずつ共有している土地(X)があるとします。
この状態だと、この土地を売却するときや運用するときは、基本的にAさんとBさんが協力をする必要が出てきます。
共有物の分割とは、このような共有状態の土地を分割〈土地(a)、土地(b)〉し、もともとの所有者が分割した土地をそれぞれ単独で所有する方法です。
このようにすることで、AさんとBさんは、それぞれ一つの土地を単独で所有することになるため、売却などをする場合には自分一人の意志で手続きをすることが出来るようになります。
共有物分割で発生する税金
共有物分割の手続きを行うと、原則として所得税が発生します。
(含み益がある土地を分割した場合に限ります。)
その理由は、税金の計算では共有物分割を次のように考えるからです。
①:AさんとBさんは、最初の土地(X)を二人で共有していた。
↓
②土地(X)を土地(a)と土地(b)に分割した場合、土地(a)と土地(b)の両方とも、AさんとBさんが共有状態となる。
↓
③:土地(a)をAさんの単独に、土地(b)をBさんの単独にするために、Bさんは土地(a)の持分をAさんに売却し、Aさんは土地(b)の持分をBさんに売却したことになる。
よって、
・Aさんは土地(b)の持分売却について
・Bさんは土地(a)の持分売却について
それぞれ、譲渡所得税が発生するのです。
しかし、このように税金を発生させてしまうのは問題もあります。
そこで、共有物分割をした時の税金を発生させないという特例があります。
次からは、この特例について解説します!
共有物分割の特例について
共有物分割を行った時に税金を発生させないという特例は、
に規定されています。
この要件をまとめると、次のようになります。
~共有地分割の特例の要件~
・2人以上で共有の土地を、その共有持分に応じて現物分割し、単独所有とする
・現物分割は、面積が異なるときでも、価値が持分割合と概ね一致していれば良い
この特例を適用すると、土地の売却は「無かったもの」とされますので、所得税は発生しないこととなります。
この特例を上手に活用できれば、税金の負担がなく共有状態を解消できます!
交換特例との違い
所得税には、同じような価値のある不動産を交換するときに税金を発生させないという特例(通称:交換特例)があります。
なお交換特例については、次の記事で詳細を解説していますので、こちらも併せてご確認ください。
この交換特例は、共有物分割の特例と似ているようですが、主に下記の点で異なる部分があります。
~交換特例と共有地分割の違い~
・要件
交換特例:不動産の用途や価格差、所有期間などの要件がある
共有物分割:通達に大まかに記載されているのみ
・確定申告
交換特例:確定申告書の提出が必要
共有物分割・確定申告書提出は不要
・土地について
交換特例:異なる土地の交換でも適用可能
共有物分割:もともと一つだった土地を分割したときにしか適用できない
上記の他にも、登録免許税や不動産取得税でも違いが出てきます。
注意点
共有物分割は、上で説明をした通り共有状態を解消できる方法なのですが、次のような注意点があります。
【共有物分割の注意点 】
・分割をすることによって、土地全体の価値が下がる可能性がある
・土地の形状によっては分割が出来ない場合もある
・分割には測量費用や登記費用などが発生する
・面積で均等に分割しても、土地の価値に差が生じる可能性がある
・持分に応じていない分割をすると、所得税や贈与税が発生する可能性がある
実際に共有地分割を行う際は、上記のような注意点を慎重に検討する必要があります。
まとめ
今回は共有物分割の特例について解説をしました。
土地については共有状態によるデメリットが多く、このような特例を上手に活用すると、問題が解決できるかもしれません。
共有状態の土地について問題がある場合には、ぜひ一度税理士にご相談をしていただければと思います。
弊社でも資産税に特化している税理士が、ご相談の対応をいたしますので、お気軽にご連絡ください!