円満相続税理士法人 公認会計士・税理士
在学中に公認会計士試験に合格し、監査法人、コンサル、公務員を経て、円満相続税理士法人へ入社。相続・事業承継のプロとしてご家族のサポートができるよう業務に携わっています!
ある程度、株も承継したし、もう安心だ!
こんにちは、円満相続税理士法人の中岡です!
事業承継の失敗事例シリーズの第1弾です。
今回は、準共有のリスクについて、取り上げます。
何も対策をしていないとどうなってしまうのか、詳しく解説していきます。
ケース1
家族構成
父、母、長男、二男の4人家族です。
父は、創業した会社のオーナー社長で、長男も二男も父の会社で取締役として、一生懸命働いていました。
事業承継
創業期から、父を支えてきた、常務取締役が退任することとなり、父に呼び出された二人はこう告げられます。
長男を後継者として副社長にする。二男は常務として支えてやってほしい。
納得のできない二男ですが、諦め、これまでどおり長男と協力して会社を担っていきます。
そして、父は、株式を少しずつ長男に贈与しはじめ、100株あった株式のうち40株を長男に贈与しました。
ある程度、株も承継したし、もう安心だ!
もし、自分が亡くなってしまっても、長男の法定相続分は4分の1だから、60株のうち15株は長男が相続して、40株+15株=55株で過半数を保有できるから、今後の経営にも大きな影響はでないだろうと考えていました。
相続発生
そうこうしているうちに、父に相続が発生してしまいます。
長男が社長に就任するかと思いきや、社長になったのは二男でした。
何が起こったのでしょうか?
不可分債権と準共有
可分債権・不可分債権とは
まず、債権とは、債権者が債務者に対して一定の行為をするよう要求できる権利をいいます。
具体的には、預金、売掛金、貸付金、株式などが、債権です。
そして、可分債権は、相続が発生したら、法定相続分に従って、各相続人に帰属し、各相続人が単独で権利行使できます。
売掛金や貸付金は、可分債権です。
つまり、相続財産に400万円の貸付金があり、法定相続分が4分の1なら、単独で「100万円を自分に返して」と借りている人にいう権利があります。
一方、不可分債権は、相続が発生したら、相続人全員の準共有になります。
預金や株式は、不可分債権です。
つまり、相続財産に400万円の預金があり、法定相続分が4分の1であっても、単独で「100万円を引き出して自分に渡して」と銀行にいう権利がありません。
準共有とは
準共有とは、所有権以外の財産権を共有することをいいます(民法264条)。
株式は不可分債権なので、相続が発生したら、遺産分割をしない限り、相続人全員が法定相続分に応じて共有することになります。
準共有の株式の権利行使
株式を準共有している場合、各相続人がその持分割合に応じて、単独で権利行使できるわけではありません。
準共有者は、権利を行使する者 1人を定めて会社にその者の氏名又は名称を通知しなければ、 株式についての権利を行使できません(会社法106条)。
では、どのようにして権利を行使する者を決めるのでしょうか?
準共有者の持分(法定相続分)に従い、その過半数で定めることになります(最高裁平成9年1月28日)。
相続発生後
先ほどの家族に、相続発生後、何が起こったのか、もうお分かりだと思いますが、解説していきます。
まず、父が持っていた会社の株式60株は、法定相続分に従って各相続人に権利が移転するわけではなく、不可分債権なので、相続人全員の準共有となります。
そして、遺産分割協議が調わないまま、株主総会を迎えます。
準共有の株式の権利を行使する者を決めるにあたっては、母:2分の1、長男:4分の1、二男:4分の1の過半数で決めます。
母が二男に賛同し、権利を行使する者を二男と決めました。
父の相続財産である60株の議決権は二男が行使し、40株は長男が行使することになりましたが、過半数の権利を有する二男の思うとおりに、役員を選任しました。
対策
今回の事例は、本当に単純な話ですが、遺言書を書いておくということです。
遺言書があれば、相続発生と同時に準共有状態にならずに、特定の相続人に株式を相続させることができます。
そして、相続はいつ発生するか分かりません。まだ大丈夫と思われても、最低限でもいいので準備しておくということも大事です。
この家族の場合、「株式11株を長男に相続させる」という一文さえあれば、長男は過半数である51株を所有することができました。
ここまでが数字上の対策ですが、本当に大事なのは、生前に二男の理解を得られるよう、父から話をしたり、兄弟がうまく経営に携われるような仕組みを作っておくことだったかもしれません。(第2弾に続きます。)
最後に
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