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【平成30年改正】小規模宅地の家なき子特例とは?要件や添付書類を解説

【この記事の執筆者】

相続税の研究を愛する相続専門の税理士。23歳で税理士試験に合格し、国内最大手の税理士法人で6年間の修行を積んだのちに独立。円満相続税理士法人の代表を務める。

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こんにちは!相続専門税理士の橘です。

 

平成3041日から、小規模宅地等の特例のうち、いわゆる家なき子特例の要件が大幅に改正されます!

 

この改正の影響は大きいです。

行っていくべき相続対策の方向性を大きく左右する改正と言って間違いないでしょう。

 

今回は、この家なき子特例について、基礎的なところから、この度の税制改正の内容、実際に申告する際の添付書類などについて解説していきます♪

 

 

まずはおさらい!小規模宅地等の特例とは

そもそも小規模宅地等の特例とは、どのような特例なのかと言うのを一言でいうと・・・

 

「亡くなった人が自宅として使っていた土地については、配偶者亡くなった人と同居している親族が相続した場合には、本来の評価額から80%OFFの金額で、相続税を計算していいですよ」

 

という特例です。※詳しく知りたい方はこちらをご覧ください→小規模宅地等の特例とはなんぞや?

 

 

 

 

税金の知識を勉強する際は、その特例が、どのような趣旨でできたかを知ると、スムーズに理解できます。

 

この小規模宅地等の特例の趣旨は・・・

 

「相続した人が、これからも住み続ける土地に、相続税をドーンと課税したら可哀想でしょ!相続税を払うために、自宅を売却なんてことはあっちゃいけません!」

 

と、このような趣旨のもとに作られた特例です。

 

 

この趣旨を踏まえると、配偶者か亡くなった人と同居していた親族が相続した場合には、自宅が80%OFFになるのも納得だと思います。

 

 

 

ただ、ここからが本日のメインテーマ!

 

実は・・・

 

もし亡くなった人に、配偶者も同居している相続人もいない場合には・・・

 

別居している親族が相続しても小規模宅地等の特例を受けることができるのです!!

 

 

これがいわゆる家なき子特例です!続けて詳しく解説していきます。

 

 

 

家なき子特例とはなんぞや

 「家なき子特例」という名前は、税理士業界で使われている業界用語のようなもので、実際の名前ではありません。

 

この特例は一言でいうと・・・

 

 

 

「亡くなった人に、配偶者も同居している相続人もいない場合には、3年以上、自分の持家に住んでいない親族が相続しても、自宅を80%OFFにしてあげますよ」

 

と、いった特例です。

 

3年以上、自分の持家に住んでいない親族」というのは、要は、賃貸暮らしをしていることを指します。賃貸マンションや賃貸アパート、あとは、社宅や寮も該当します。

 

両親と別居をしていたとしても80%の割引を受けることができる、この家なき子特例を受けたい!という人は非常に多いのですが、そう簡単にこの特例が受けられるわけではありません。

 

 

順を追って要件を解説していきます。

【要件1】配偶者も同居していた相続人もいないこと

「亡くなった人に配偶者も同居していた相続人もいないこと」という要件を見ていきます。

 

まず、「亡くなった人に配偶者がいないこと」が要件ということは、言い換えると、配偶者が既に亡くなっていることを指します。(もしくは離婚している場合、一度も結婚していない場合があります)

 

夫婦のどちらかが先に亡くなってしまうことを1次相続と言い、その後、残された人が亡くなってしまうことを2次相続と言います。(男性の方が先に亡くなることの方が多いので、1次相続はご主人、2次相続は奥様となることが多いです)

この家なき子特例は、配偶者がいたら受けられない・・・

 

つまり、2次相続でしか家なき子特例は使えない!ということになります。

 

 

次に、「同居している相続人がいないこと」が要件ということは、言い換えると、亡くなった人が一人で自宅に住んでいることなどを指します。(もしくは相続人ではない人と同居していても、この要件は満たします)

 

 

以上のように、「配偶者も同居している相続人もいないこと」というのは、母が実家で一人で暮らしているような場合が該当します。余談ですが、ここの要件は相続税に詳しくない税理士とか、にわか相続税知識をもっている金融機関の人が見落としやすい論点です。

 

配偶者がご健在なのに家なき子特例が使える前提で遺言書を作ってしまったケースは非常によくあるので、注意しましょう!

 

【要件2】3年以上、自分の持家に住んでいないこと

相続する人が3年以上、自分の持家に住んでいないこと」という要件は、相続が発生する3年以上前から、相続する人が賃貸マンションや賃貸アパートに住んでいることを指します。

 

ここでよく質問されるのは、「私は賃貸マンションに住んでいるのですが、投資用の不動産を持っています。この場合は家なき子特例は使えませんか?」というものです。

 

この場合には、家なき子特例は使えます。あくまで自分の持家に住んでいないことが要件ですので、投資用の不動産を持っていてもOKです。

 

 

それよりも、気を付けなければいけないポイントは・・・

 

「私は不動産を持っていないのですが、私の主人が持っている持家に住んでいます。私は自分の持家に住んでいませんので、家なき子になりますか?」

 

という論点です。

この場合、長女は家なき子になるでしょうか?

長女は持家を持っていませんが、長女の婿が持家を持っていて、そこに長女も住んでいる、というシチュエーションです。(よくあるシチュエーションだと思います)

 

 

実は、この場合には、家なき子特例は使えないのです!

 

ここの持家ありの判定は、夫婦で行うこととされています。

 

つまり自分の子供が持家を持っていなくても、子供の婿、または子供の嫁が持家を持っている場合には、家なき子特例は受けられないということになるのです。

【要件3】相続が発生した日から10ヶ月間は所有し続けること

自宅を相続した人が、相続が発生した日から10ヶ月以内に、その自宅を売却してしまう場合には、家なき子特例は受けられません。

 

よくここで質問されるのは、「10ヶ月経ったら、すぐに売却してもいいんですね?」というものです。

 

税理士の立場上、この手の質問への回答は困っちゃうのが本音なのですが、あえて回答すると、法律上10ヶ月経ったらすぐに売却してもOKです。

 

「そしたら、不動産の売買契約までは進めていいですか?」

「所有権の移転登記を後にしておけばOKですか?」

 

 

など、追及していけばきりがないのですが、特例を受けるためだけに売却時期をあえてずらすというのは、過度な節税と言わざるを得ません。(税務署から何て言われても文句言えないので、私はお勧めしないです)

要件まとめ&添付書類

以上の要件をまとめると、次の通りです。

1.亡くなった人に配偶者がいないこと

2.亡くなった人に同居している相続人がいないこと

3.3年以上持家に住んでいない親族が、その自宅を相続すること

4.亡くなった日から10ヶ月間は売却しないこと

 

これらの要件を全て満たすのは、中々厳しいですよね。

私もこれまでたくさんの相続税申告をしてきましたが、家なき子特例を使って申告するケースはかなりのレアケースかなぁと思います。

 

 

 

ちなみに、家なき子特例を受ける際には次の書類が必要になります。

1.相続する人の戸籍の附表

2.相続開始3年以内に住んでいた物件が、家なき子特例の要件を満たしていることを証明できる書類※賃貸アパートや賃貸マンションに住んでいる場合には、賃貸借契約書のコピーなどを提出しましょう。

 

※主な要件は上記の通りですが、他にも紹介しきれない細かい要件もあるので、実際に検討する際は税理士に確認してくださいね。

 

 

 

そんな家なき子特例が変わります!

そもそも小規模宅地等の特例は、相続する人がこれからも住み続ける不動産に、多額の相続税を課税するのはかわいそうだから、80%OFFしてあげましょ!という趣旨で作られました。

 

その趣旨を踏まえると、なぜ、別居している親族が相続する場合なのに、自宅が80%OFFになることが認められていると思いますか?

 

その自宅には住んでいない人が相続するわけですよね?80%もオマケをするのは、奮発しすぎではないでしょうか?

 

 

 

 

 

いかがでしょう?

 

 

 

 

 

 

 

それでは、家なき子特例の趣旨を解説します。

 

例えば、母と子供家族が一緒に暮らしていました。

 

この状態のまま、母が亡くなってしまい、その自宅を子供が相続すれば、同居親族が相続することになるので80%OFFになります。

 

しかし、もし母が亡くなる前に、子供が地方転勤などにより、一時的に社宅暮らしをすることになったとします。

 

その間に、母が亡くなってしまったとします。

 

こうなると、子供は母と同居していないので80%OFFができないというのは・・・

 

 

やっぱりかわいそうですよね!

という趣旨で、家なき子特例が認められているのです。

 

つまり「本当は同居していたいけど、やむを得ない事情により同居できない人を救済しよう!」というのが家なき子特例の趣旨なのです。

 

このような趣旨があるにも関わらず、家なき子特例を無理やり使って節税しようとする人がたくさん現れちゃったのです。

 

 

 

 

例えば・・・

 

長女の婿「うーん。俺はもう家買っちゃったしなぁ・・・。親と同居するのも無理だしなぁ・・・。なんとか小規模宅地等の特例受けたいなぁ。8割引きって大きいよなぁ。」

 

長女「家なき子の判定は夫婦でするのよね?それだったら、この子が家を相続したら、この子は家なき子なんじゃない?」

 

長女の婿「この子ってまさか・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうです。子供の子供、つまり孫です。

 

家なき子になるかどうかの判定は、夫婦どちらかの持家に住んでいるかどうかで判定するとお伝えしました。あくまで夫婦だけで判定しますので、夫婦が持家に住んでいたとしても、その子供である孫は家なき子になるのです。

 

家なき子特例は、持家をもっていない別居親族が自宅を引き継ぐと受けられる特例です。あくまで、「親族」ならOKですので、孫でもOKなのです。

 

孫は養子縁組などをしないと相続人にはなれませんが、遺言書があれば、孫が自宅を引き継ぐことが可能です。

 

家なき子特例を使うために、遺言書を使って、持家のない孫に自宅を引き継がせてあげれば自宅は8割引きになったのです。

 

その他にも・・・

 

長女の婿「あー!もう家買っちゃったよ!家なき子特例が受けられない!困ったなぁ」

 

母「私があなたの家を買い取ってあげるわよ。そしたら私名義の家になって、あなた達は3年経てば家なき子よ!買った後も、そのまま貸してあげるから、今のまま住み続けなさい」

 

子供「ありがとう!これで8割引きだぁ」

他にもあげればきりがありませんが、無理やり建物の名義を変えれば家なき子特例って受けることができたんですね。

 

 

しかし、このようなやり方を国税庁が快く思うわけがありません。

 

「家なき子特例は、困った人を救うための救済制度なのに、無理やり使うなー」

 

 

ということで平成3041日から税制改正が行われることになりました。

 

 

家なき子特例が厳しくなります

ここから先の内容は、かなり難しい内容になるかもしれません。

 

 

という人は、「不動産の名義を工夫して、無理やり家なき子特例を使うやり方は、全て禁止された」と覚えてください。

 

それでは、まずは税制改正の原文をそのままご紹介します。

〔廃止・縮減等〕

〈相続税〉

1)小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例について、次の見直しを行う。

① 持ち家に居住していない者に係る特定居住用宅地等の特例の対象者の範囲から、次に掲げる者を除外する。

イ 相続開始前3年以内に、その者の3親等内の親族又はその者と特別の関係のある法人が所有する国内にある家屋に居住したことがある者

ロ 相続開始時において居住の用に供していた家屋を過去に所有していたことがある者

順に解説します。

 

【イ】「相続開始前3年以内に、その者の3親等内の親族又はその者と特別の関係のある法人が所有する国内にある家屋に居住したことがある者」は家なき子特例が受けられなくなります。

 

わかりやすくいうと、「あなた自身が持家を持っていなくても、あなたの親族が持っている家に住んでいたり、あなたの経営している会社が持っている家に住んでいる場合には、家なき子じゃないでしょ!」ということです。

 

これまでは、持家ありなしの判定は夫婦で行うこととされていましたが、その範囲が3親等内の親族に広げられるということです。(特別の関係のある法人の範囲はまだ公表されていません。おそらく50%以上の株式を親族で所有している法人になると思います)

 

 

この改正により、次のやり方が封じられることになります。

 

「遺言書により、持家のない孫に自宅を引き継がせることによって、家なき子特例を受ける方法」

 

従来、持家ありなしの判定は、夫婦で行うこととされていました。そのため、子供が持家ありだったとしても、孫は持家なしという判定になりました。

 

しかし平成30年からは、孫からみたら子供は3親等内の親族にあたり、かつ、その子供が持っている家屋に孫は居住していることになるので、家なき子特例は受けられなくなるということです。

 

また、「親が不動産を購入し、そこに子供を住まわせることによって、家なき子にする方法」も封じられることになります。

続いて【ロ】です。

 

「相続開始時において居住の用に供していた家屋を過去に所有していたことがある者」は家なき子特例が受けられなくなります。

 

これは、「昔はあなたが持っていたけど、今は違う人の持ち物になっている家に、今あなたがその違う人から借りて住んでいるなら、家なき子特例は使えません!」ということです。

 

「もー自分の家買っちゃったよ!でも!なんとかして家なき子特例受けたーい」という人は、この改正によって、どう頑張っても受けられなくなります。

 

この改正により、次のやり方が封じられることになります。

 

・既に家を購入した子供が、その家を孫に贈与することによって、家なき子にする方法

・既に家を購入した子供が、その家を親に買い取らせて、家なき子にする方法

・既に家を購入した子供が、その家を家族で経営する会社に買い取らせて、家なき子にする方法

 

このように、無理やり家なき子を使おうとするやり方は、実質的に全て封じられることになります。

【平成30年2月追記】この改正には経過措置が講じられるようです

平成30年2月に国会に提出された税制改正法案に、次の内容が掲載されていました。

 

【平成32年3月31日までに、平成30年3月31日において上記の見直し前の特定居住用宅地等の要件を満たしていた宅地等を相続等により取得する場合には、当該宅地等は上記の見直し後の要件を満たしているものとする等の経過措置を講ずる】

 

この一文は、言い換えると、「平成30年3月31日までに家なき子特例の条件を満たしている人の場合には、平成32年3月31日までに発生した相続に限り、家なき子特例を認めます」ということです。

 

まぁ、人が亡くなるタイミングは誰にもわからないので何とも言えませんが、この経過措置のおかげで家なき子特例が受けられる人もたくさんいるかもしれませんねぇ

 

例年、3月の終わりごろに法案が成立しますので、そのころまた追記致します。

まとめ

今回の改正を踏まえると、結局どのようなシチュエーションで家なき子特例は使えるのかというと・・・

 

純粋に、3年以上賃貸暮らしをしてきた別居親族と覚えておくべきでしょう。

 

最近の税制改正のトレンドは、制度の趣旨にそぐわない、法律の抜け穴をつくような節税対策はどんどん封じてきています。

 

こういったトレンドが明確なので、現在、他にも存在する過度な節税対策は、遅かれ早かれ改正されることになると思います。

 

 

 

 

日本経済新聞より小規模宅地の税制改正について取材を受けました

賃貸物件は50%引きになる小規模宅地の特例

亡くなった人がアパートや駐車場として使っていた土地は200㎡まで50%引きになる特例があります(アスファルトや砂利のない青空駐車場は不可)。その名も小規模宅地等の貸付事業用の特例です。この特例と自宅80%引きの特例は部分的にしか併用できません。どちらを優先させるべきかの有利判定や限度面積の計算をイラストを使いながらわかりやすく解説しました。

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