代償分割とは、遺産分割方法の1つで、ある相続人が相続財産を取得する代わりに、他の相続人に代償財産を与える方法です。

代償分割については、民法に規定がなく、家事事件手続法において、現物分割に代わる方法として定めがあります。

<家事事件手続法>

(債務を負担させる方法による遺産の分割)
第百九十五条 家庭裁判所は、遺産の分割の審判をする場合において、特別の事情があると認めるときは、遺産の分割の方法として、共同相続人の一人又は数人に他の共同相続人に対する債務を負担させて、現物の分割に代えることができる。

厳密には、他の相続人に対する債務を負担させる分割の方法なんですね!

今回の本題に関わる論点ですが、ここで、注意しなければならないのは、この負担(代償債務)は、当該相続人が取得する相続財産を上回ってはいけないということです。

この点について、争われた裁判(平成11年2月25日東京地方裁判所判決)では、代償債務者である相続人が取得した積極財産の価額を超える部分は、現物分割に代える代償債務に該当せず、代償債務者から他の相続人に新たに経済的利益を無償で移転する趣旨でされたものというべきであり、代償債務者からの贈与により取得したというべきである旨を示しました。

つまり、代償債務者が取得した積極財産の価額を超える部分は、代償債務者からの贈与として贈与税が課税されるということです。

<平成11年2月25日東京地方裁判所判決要旨>

代償分割に係る代償金として、代償債務者である相続人からその者が取得した積極財産の価額を超える代償金を受領した場合には、その積極財産の価額を超える部分は、現物をもってする分割に代える代償債務に該当せず、代償債務者から他方相続人に新たな経済的利益を無償にて移転する趣旨でされたものというべきである。したがって、代償債務のうち他方相続人が取得する積極財産を超える部分については、代償債務者の相続税の課税価格の算定に当たって、消極財産として控除すべきではなく、他方相続人が取得した同部分に相当する代償債権の額は、代償債務者からの贈与により取得したものというべきである。

さらに、2つ目のポイントとして、取得した積極財産とは、遺産分割の対象となる相続財産で、民法上の相続財産をいい、税務上のみなし相続財産は含まれません

代償分割が遺産分割方法の1つであり、現物分割の代わりとして、他の相続人に対して代償財産を渡すことで、相続財産の範囲内で調整をする趣旨であることに鑑みると、当然とも言えます。

ここからは、以下の前提条件で、具体的な事例で確認していきたいと思います。

相続人は、兄と弟の2人

兄が生命保険金5,000万円の受取人となっている

相続財産は、自宅1,000万円だけ

(1)自宅1,000万円を兄が相続し、代償金として500万円を弟に渡した場合

代償債務500万円は、取得した相続財産1,000万円の範囲内なので、この500万円に贈与税が課税されることはありません。

(2)自宅1,000万円を兄が相続し、代償金として3,000万円を弟に渡した場合

兄も弟も3,000万円の財産を取得することができます。

しかし、代償債務3,000万円は、取得した相続財産1,000万円を超えており、超えた部分2,000万円は、兄から弟への贈与として贈与税が課税されます。

(3)自宅1,000万円を弟が相続し、代償金として2,000万円を弟に渡した場合

この場合も、それぞれ3,000万円の財産を取得することができます。

しかし、兄は相続財産を取得していませんので、代償金として渡した2,000万円は、兄から弟への贈与として贈与税が課税されます。

(2)や(3)の場合のように、生命保険金も含めて、均等に分けようとすると、兄が取得した相続財産の価額を超える部分は贈与税が課税されてしまいます。

相続のプロを目指すなら、取得した相続財産(みなし相続財産は含まない)を超える代償金は、贈与税が課税されるということを押さえておきましょう!

円満相続ちゃんねる

税務調査の裏話を、ぶっちゃけ公開中

2024年最新動画配信中♪

税制改正等の最新情報を
タイムリーに配信中!

無料

LINE公式アカウント登録

友達追加する

弊社の個人情報保護体制は、
Pマーク認定を取得しています

円満相続税理士法人は、プライバシーマーク取得法人として、個人情報保護体制に万全を期しております。税理士法人として固い守秘義務もありますので、安心してご相談ください。