判例解説 現金の贈与はなぜ税務署にバレるのか

多額の贈与をして、贈与税の申告をしないと税務署から指摘されると聞きます。
なぜ贈与をしたことが税務署は分かるのでしょうか?

税務署は銀行などの口座について目を光らせていますので、そこで贈与を認識する場合が多いです!

それでは現金の贈与はどうでしょうか?

実は現金の贈与についても、ちょっとしたことから税務署は贈与を認識します。
そこで今回は、現金を贈与した場合、税務署が何を根拠として贈与税の漏れを指摘してくるのか、判例で解説します!

皆さんこんにちは。

円満相続税理士法人、税理士の加藤です。

今回は、現金の贈与は税務署にバレるの?という疑問について、判例をもとに解説をしていきます。

現金の贈与は、一見すると税務署にバレない、と考える方もいるかもしれませんが、その考え方は非常に危険です!

現金の贈与であっても、税務署は様々な情報から、その実態を把握していくのです。

また、現金の贈与であっても、必要な場合はしっかりと申告と納税をしなければいけません。

もし贈与税の申告を怠ると、今回の判例のように多額のペナルティが発生することも考えられるので、ぜひ参考にしてください!

今回ご紹介する判例は、

大阪地方裁判所平成20年(行ウ)第36号贈与税決定処分取消等請求事件

となります。

事例の概要

今回の事例は、被相続人Aと、その内縁の妻Bとの間で行われた現金の引き渡しが争点となっています。

Aは生前、Bに対して

何かあったときに、金庫に現金を保管してあるから

と、金庫のカギを渡しています。

そして、Aが亡くなった後、Bは実際に金庫を開けたところ、そこには4,000万円以上の現金がありました。

Bはその4,000万円を超える現金を、自分のものとして使用しています。

この現金の引き渡しについて、税務署から

Bさんは、Aさんから4,000万円以上の贈与を受けているので、贈与税を納めてください。

と指摘されてしまいます。

これに対してBが納得をしなかったため、裁判となります。

現金の贈与を税務署が認識した理由

現金の贈与について、なぜ税務署は分かったのでしょうか?

この判例の場合、Aが亡くなった後、B名義の口座に多額の入金がありました。

そこで税務署は、

Aが亡くなった後、内縁の妻Bの口座に多額の入金?
怪しいな。

と思うのです。

そして税務調査となり、実際にBに対して、

この口座に入金されているお金は、どのようなものですか?

と質問をすると、Bは答えられませんでした。

「判決文より抜粋」

G(税務署)は、同年12月2日ころ、~~~原告(内縁の妻B)に対し、原告名義の普通預金口座の多額の入金の原資等につき説明を求めたが、原告は、これについて明確な説明ができなかった。

ここから、税務署はBに対して誰かが贈与を行ったことを認識し、その相手は被相続人Aであると考えたのです。

判例の結論

その後、この判例では実際に贈与があったのか、そもそも贈与なのか否か、などが争われましたが、裁判所は贈与を認定しました。

「判決文より抜粋」

前提となる事実によれば、Aは、平成14年12月27日、原告(内縁の妻B)に対し、本件鍵等を交付するとともに、ゲストルーム内のベッドの下に本件金庫があることを伝えたというのであるから、この時点において、本件金庫内現金につき贈与の履行があったと認めるのが相当である。

税務署が贈与を認識するポイント

あくまで私見となりますが、現金の贈与であっても、税務署は次のような情報から贈与を把握していくものと考えます。

・口座に収入に見合わない多額の入金がある

・不動産をローン無しで購入している

・口座から多額の出金があるが、その行き先が不明

・有価証券や地金などの購入について、その原資が不明

・大きな買い物をしている

つまり、お金が出ていく口座と、入ってくる口座、大きな買い物などの視点から贈与の可能性を検討するのです。

現金の贈与であっても、しっかりと申告と納税を行う必要があります。

現金贈与は税務署にバレないから、贈与税を申告しなくても良いと考えるのは、絶対にやめましょう。

まとめ

今回は、内縁の妻に対する現金の贈与が税務署に指摘された判例をご紹介しました。

日本中で行われている贈与について、税務署がすべて把握するのは難しいかもしれませんが、贈与税の申告は自ら行う手続きです。

税務署にバレるバレない、という基準で申告をするかしないかを考えるのは、場合によっては脱税行為になってしまい非常に危険なので、注意してください。

今回の事例の場合、被相続人Aの財産額にもよりますが、遺言書などで内縁の妻に対して財産を渡すなどの手続きを行っていれば、余計な税金は発生しなかった可能性もあります。

自己流の対策が、思いもよらない負担を発生させてしまうかもしれませんので、もし相続についてご不安なことがある場合には、ぜひ一度、相続の専門家に相談をしてください。

弊社でも相続を専門としている税理士がすべて対応をいたしますので、何かあればお気軽にお問い合わせください!

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